表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

401/487

第401話:嘆きの氷宮の鍼灸往診、傲慢のエルサを「関元点火の情熱鍼」で愛の還流へ

アイス・ラグーンの頂、星々さえも凍りつく天空の玉座「嘆きの氷宮」。

そこには、全身を氷のドレスで包み、心臓の鼓動を完全に停止させた氷の女王エルサが、虚無の瞳で鎮座していました。

彼女は、大切な人を失う「痛み」を恐れるあまり、自身の感情を絶対零度の魔導で封印し、世界を永遠の静止画に閉じ込めることで「永遠の美」を体現しようとした、悲しき支配者。

宮殿内では、彼女の吐息ひとつで空間そのものが結晶化し、侵入者の血液さえも一瞬でダイヤモンドへと変えてしまう、絶対的な拒絶の領域が展開されていました。


「おやおや。シオン。このお方の心は、あまりに透明で、そしてあまりに体温が欠けていますね。ガストン。震えるのを止めなさい。この寒さは、女王様が『愛されたい』という願いを、必死に氷の鎖で縛り付けている証拠なのですから。エルサ陛下。そんなに自分を凍らせていては、誰かの手の温かさを感じることもできませんよ。私が今、その閉ざされた命の火種、一鍼の還流で温かな『涙』へと還してあげましょう」


枢先生は、思考さえも凍りつく冷気の嵐の中で、一本の緋炎鍼を、女王の凍てついた下丹田へと構えました。

21時、夜の往診。嘆きの氷宮、関元点火の鍼灸往診。

聖鍼師・枢。銀鍼一本で、傲慢な女王を完治させます。

 夜の闇が最も深く、冷気が刃のように研ぎ澄まされる時刻。

 エルサは、指先から放つ氷の礫で、枢たちの「未来」さえも凍結させようと迫る。

 彼女が虚空をなぞれば、そこには一切の熱を奪われた「絶対静止の壁」が出現し、枢の進路を物理的に、そして概念的に遮断した。

 それは、他者との関わりを拒絶し、孤独の中にのみ完璧な自分を見出すという「魂の自閉」の極致だった。


 「先生、細胞の活動電位が消失しています! 彼女の心臓……、あの魔石から放たれる冷気が、周囲の分子運動を完全に停止させているんだ! 任脈にんみゃくの気が逆流して、全身の『陽気』が完全に消失しちゃっている! 彼女は、自分を『冷たい概念』に変えることで、死さえも克服しようとしているんだ! このままじゃ、世界中の『温もり』が彼女の孤独に吸い込まれて、永久の冬になっちゃいます!」


 ガストンが、表面が凍りついて砕けた計測器を放り出し、震える声で叫ぶ。

 シオンが黄金のフラスコを百七十個、冷気を生命の「情熱」へと反転させる「極寒昇華の陣」に沿って一斉に砕き、枢の周囲に「負のエネルギーを瞬時に熱運動へと変換し、魂の凍結を融解させる、極高密度の還流触媒」を多重展開した。


 「枢、これが私の錬金術の到達点、そして『孤独への回答』だ! 私の触媒で一瞬だけ彼女の『氷の拒絶』を『熱い受容』へと反転させるが、反動は凄まじい! 女王の魔導は、彼女の『傷つきたくない』という祈りを氷に変えているんだ。君が彼女の『命の根源』を穿ち、凍りついた情熱を再び全身へ巡らせなければ、彼女は永遠に自分を許せないまま凍り続けるぞ。……。行け! 君の鍼で、この美しすぎる孤独を終わらせるんだな?」


 「もちろんです、シオン。おやおや。エルサ陛下。もう、その氷の壁の中に隠れているのはお止めなさい。あなたが本当に恐れているのは、誰かを失うことではなく、誰かを愛した自分の温もりを忘れてしまうことなのでしょう。今、私がその冷え切った丹田の芯、一刺しの点火で溶かしてあげましょう」


 くるるが、一歩ごとに視界が白く塗り潰される極寒の中を、凍りつくことを拒む熱い「意志」を鍼に込め、淀みなく直進する。

 彼の指先に挟まれた一本の緋炎鍼――『関元点火かんげんてんか』が、シオンの還流触媒を自身の「気」の爆縮回路に通し、氷の魔石を一瞬で「脈打つ心臓」へと再起動させる「情熱の旋律」へと変換しているのだ。


 枢は、生命の原動力が集い、全身の陽気を統括する下腹部の要所を見据えた。


 ――ドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!


 一刺し。

 枢は女王の臍下、凍てついた陽気を呼び覚まし、全身の血流を再点火させる最重要穴――『関元かんげん』へ、初恋の記憶のような熱い鼓動を込めた緋炎鍼を刺入した。

 二刺し、三刺し。

 続いて、精血を補い、深い安らぎを与える足の『三陰交さんいんこう』、そして精神を安定させ、閉じ込めた感情を開放する手首の**『神門しんもん』**へと、氷を溶かす陽だまりのような優しくも力強い手技で鍼を打ち込む。


 「おやおや。泣いてもいいのですよ。その温かな涙こそが、あなたの凍りついた時間を溶かし、新しい明日を連れてくるのですから」


 枢の鍼から放たれた波動が、女王の肉体を支配していた「凍結の魔導」を、内側から溢れ出す「熱い情熱」へと転換していく。

 シオンの還流触媒が枢の気と共鳴し、宮殿を覆っていた冷酷な静寂が、あたかも春の訪れを告げる激流のように、一瞬で「温かな生命の咆哮」へと書き換えられた。


 パリンッ、……ドクンッ、……ドクンッ、ドクンッ!!


 女王の心臓に埋め込まれていた氷の魔石が、内側から溢れ出した「愛の還流」によって粉々に砕け散り、そこから現れたのは、誰かの手の温もりを求めて泣きじゃくる、一人の傷ついた少女の姿だった。

 宮殿を覆っていた氷のドレスが消え去り、彼女の頬に温かな赤みが差し、止まっていた瞳に「希望」という名の光が宿ったのだ。


 「あ、……ああ、……。熱い。……。……、痛い。でも、……なんて心地いい痛みなんだ。先生、……私、……。……、独りになりたかったんじゃない。ただ、……誰かに『大丈夫だよ』って、抱きしめてほしかっただけなんだ……」


 エルサが、枢の足元で砕け散った氷の破片の中で、人間としての「血の通った生」を噛み締めながら、安堵の涙を流した。


 「先生、……。バイタルが、力強い生命の鼓動を刻んでいます! 凍結していた任脈の気が、……。……、先生の気を着火剤にして、全身に『愛すること』の熱を運び始めた! 先生の鍼が、……。……、完璧主義という名の『魂の凍結』を完治させちゃったんだ!」


 ガストンが、氷宮が溶け落ち、夜空に満天の星々が輝き出す光景を見て、枢の背中に、冷え切った世界に春を呼び込む救世主の姿を見た。


 「もう大丈夫ですよ。あなたが自分の弱さを愛せたその時、世界はこんなにも優しく、あなたを包み込んでくれるのですから」


 枢の処置は、変化を恐れた魂を救い出し、愛と情熱の流転を取り戻させる、鍼灸師としての「点火」の往診だった。


 「バ、バカナッ。……。万物の時間を止め、感情さえも氷に封じるあの絶対零度魔導を、…….……ただ数本の鍼による関元の点火調整だけで、……存在の根源さえも書き換えて完治させてしまったというのか!! コレガ、完全復活した枢と、シオンによる、世界の宿命さえも完治させる『還流の往診』だというのか!!」


 ガストンは、夜明けを待つ静寂の中で、少女の震える手をしっかりと握り、温かな言葉をかける枢の姿に、言葉を失うほどの慈愛を感じた。


 枢は、緋炎鍼を静かに引き抜き、氷が溶け、豊かな水が流れ始めたアイス・ラグーンの夜明けを見つめた。


 「シオン。永遠の氷原の往診、これですべて完了です。おやおや。……。ですが、西の果て、忘却の砂漠では、まだ自分の『正義』を証明するために世界の『記憶』を砂に埋めようとする『砂の賢者』が、渇いた瞳でこちらを睨んでいますよ」


 西の果て。忘却の砂漠。

 すべての過ちを「無」に帰すために、人々の思い出さえも砂塵へと変えようとする賢者が、女王が救われた報を聞き、自身の心を、さらに深く砂の結界で閉ざしていた。


 「ふん、……。……枢。いよいよ砂抜きの往診だな。……。……何もかもを無かったことにしたくて、砂場に引きこもったお爺さんに、…….……。本物の『積み重ねる尊さ』というものを、教えてやろうじゃないか」


 第401話。

 聖鍼師・枢。

 彼は春を強制したのではない。

 凍りついた心の中に、誰かを想い、誰かと生きるための「温かな血潮」を巡らせ直したのだ。

 氷原に真の夜明けが訪れ、一行は次なる往診地、忘却の砂漠「デザート・メモリー」へと、風と共に旅立つ。


 5月9日(土)、本日の全往診、これにて無事終了。

 聖鍼師一行、次なる「完治」の旅へ。

5月9日(土)21:00、氷の女王の孤独を溶かし、世界に情熱の還流を還した「関元点火の情熱鍼」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


今回、極限の魂の自閉を完治させるために枢先生が意識した術式を解説します。

まず、体内の深部から冷えを払い、生命の火を再点火するための起点とした、下腹部の要穴**『関元かんげん』への点火穿刺。枢先生は、氷の女王エルサを「重度の精神的凍結と、陽気の完全消失に陥った、孤独な少女」として診立て、その核心を突くことで、固まっていた任脈のエネルギーを一気に情熱へと転換させました。


次に、溢れ出した血液を浄化し、女性としての生命力を補うためのアンカーとした、足の『三陰交さんいんこう』。このポイントを気の安定路とすることで、枢先生とシオンは、女王の「心」を完治させることに成功したのです。

最後に、精神の門を開き、閉じ込めていた感情を正常に排出するための最終回路とした、手首の『神門しんもん』。この往診を経て、枢先生は永遠の氷原に、再び「瑞々しい感情の流転」を取り戻しました。


「おやおや。賢者様。そんなに過去を砂に埋めていては、明日を歩くための足跡も残りませんよ。シオン。この砂漠、少しばかりお肌の水分が足りないようです。私の鍼で、皆さんの記憶の奥底から、温かな『想い出の水源』を掘り起こしてあげましょうか」

.

明日の8時、午前の往診。忘却の砂漠、水分穴の潤い往診。

聖鍼師・枢。銀鍼一本で、砂に埋もれた世界を完治させます。どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ