第4話:王女の恩返しは、斜め上を爆走する
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第3話での王女様の「劇的ビフォーアフター」は、瞬く間に城内を駆け巡ります。
しかし、その噂は人間たちの間だけにとどまらなかったようで……。
枢の知らないところで、事態は風雲急を告げ始めます。
王女セレスティアラを救ってから数日。
枢は、かつてないほどの危機感を抱いていた。
「……静かに暮らしたいと言ったはずなのですが」
学園の校門前。そこには、王家の紋章が入った豪華な馬車と、真っ赤な顔をして枢を待つ王女ティアの姿があった。
彼女の肌は、枢の施術によって「真珠の如き輝き」を取り戻し、以前にも増して神々しい美しさを放っている。
「クルル様! あの、昨日は……その、ありがとうございました!」
ティアが深々と頭を下げると、登校中の生徒たちが一斉に足を止めた。
「おい、王女様が没落貴族に頭を下げてるぞ!?」「やっぱりあの腰振り魔法(※鍼の勘違い)で王女をたぶらかしたのか!」
「クルル様。私、決めたのです。命を救っていただいたお礼に、今日からあなたの『専属介添人』としてお仕えします!」
「……はい?」
王女が、一介の生徒の世話を焼く。
それがどれほどの国家的問題か、恋に落ちた王女の耳には届かないようだった。
【放課後:図書室にて】
枢が静かに読書を楽しもうとすると、ティアがどこからか最高級の茶葉と茶菓子を持って現れる。
「クルル様、お疲れではありませんか? 私にできることがあれば何なりと!」
「……いえ、特にありません。それより王女様、そのお茶の香りが強すぎて集中できないのですが」
「あぁっ、申し訳ありません! では、せめて肩揉みなどを……!」
ティアが枢の肩に手を置こうとした、その時。
枢の**【翡翠眼】**が、彼女の指先に溜まった「不自然な魔力」を察知した。
「待ってください。……王女様、あなた、その肩揉みで私を殺す気ですか?」
「えっ……?」
「魔力を無意識に指先に込めてしまっています。これでは肩揉みではなく、物理的な破壊衝撃です。……全く、経絡を整えたせいで魔力の出力が上がりすぎているな」
枢は溜息をつき、ティアの手首を優しく掴んだ。
それだけでティアは「ひゃぅっ」と可愛らしい声を漏らして硬直する。
「いいですか。魔力は『出す』のではなく『巡らせる』ものです。……貸してください」
枢はティアの指先の経穴――**『少商』**を軽く刺激し、暴走気味の魔力を鎮めてみせた。
「あ……。指先が、すごく……ぽかぽかします。クルル様の手に触れられると、なんだか安心しちゃって……」
「……それは重畳。では、私は帰りますので」
逃げるように去る枢。その後ろ姿を、ティアはトロンとした目で見送っていた。
「……素敵。あんなに厳しく、でも優しく導いてくださるなんて。やっぱり、クルル様は私にとっての『運命の聖鍼師』様だわ……!」
【その頃、王宮では】
王女を救った少年の噂は、ついに最悪の場所にまで届いていた。
「ほう。光魔法でも解けなかった『魔力の澱み』を、一本の細い棒で消し去ったか……」
魔王軍第四軍団長、『倦怠のイザルク』。
彼は、数百年解けない「全身の激痛と倦怠感」に悩む魔族の英雄だった。
「その少年……もしや、私のこの『呪い』も治せるのではないか? ……おい。今すぐ人間界へ向かうぞ。略奪ではない、**『受診』**だ」
枢の知らないところで、世界最強クラスの魔族が「患者」として王都へ向かい始めていた。
枢の知らないところで、事態は風雲急を告げ始めます。
魔法が効かない「聖鍼」の噂。
魔族たちにとって、それは脅威か、それとも救いか……。
「魔族編も楽しみ!」「早く続きを!」
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次回、本日の一挙投稿ラストとなる第5話は19時に更新予定です。
いよいよ、魔王軍の刺客(?)と枢が対峙します!




