第39話:魂の詰まりを貫く、最後の一刺し
お読みいただきありがとうございます!
最強の魔導師アルヴィスとの決戦、ついに決着。
枢が放ったのは、魂の淀みを貫く黄金の鍼。
大椎、内関、印堂……東洋医学の深淵が、神級魔法の暴走を鎮めます。
1,500文字超のクライマックス。聖鍼師の「魂の調律」をご覧ください!
星読みの塔の最上階。
アルヴィスが放った神級魔法は、枢が放った**『影貫鍼』**によって霧散し、静寂が戻っていた。しかし、それは一時的な沈黙に過ぎない。アルヴィスの体内で暴走する膨大な魔力は、逃げ場を失い、彼の経絡を内側から焼き切らんとしていた。
「ぐ、あああぁぁ……! なぜだ、なぜ魔力が制御できん……! 私の体はどうなっている!」
「言ったはずです、アルヴィス様。あなたは魔力を得すぎた。……器(体)の巡りが追いつかず、気が滞り、腐敗している」
枢は往診バッグから、ひときわ長く、美しい金色の鍼を取り出した。
「……あなたの治療には、西洋の術式のような『切り取る』処置は不向きです。……詰まった気の流れを、物理的に、そして霊的に再貫通させる。……これが聖鍼師の流儀です」
アルヴィスが絶叫と共に、最後の魔力を振り絞り、自身の身体を核として自爆しようとする。
だが、枢は迷いなく踏み込んだ。
「まずは、その逆流した魔力の熱を逃がします。……首の付け根、第七頸椎の下にある**『大椎』**!」
枢の金鍼が、アルヴィスの首筋へと吸い込まれるように刺さった。ここは「諸陽の会」と呼ばれ、全身の熱を放出する大門だ。一瞬にして、彼の皮膚を焦がしていた高熱が、陽炎のように空へと抜けていく。
「次に、心の門を開きます。……手首の内側、関節から指二本分上。心包経の要所、『内関』!」
二本目の鍼が、アルヴィスの手首を貫く。これにより、恐怖と独善で閉ざされていた彼の心臓の拍動が、強制的に一定のリズムへと整えられた。
「な……、心が、静かになっていく……。私は、何を……」
「……まだ終わりではありません。教団があなたの魂に植え付けた『毒の根』。……それを、この一刺しで引き抜きます」
枢はアルヴィスの眉間、精神の座である**『印堂』のわずかに上を狙った。
そこにあるのは、魔導師の魔力を司る脳内経絡――『泥丸宮』**へと続く秘孔。
「聖鍼術、奥義――『浄天穿』!」
枢が鍼を深く突き立て、自身の翡翠の気を流し込んだ。
刹那。
アルヴィスの口から、ヘドロのような粘着質を伴った黒い気が吐き出された。それは、教団が彼を操るために仕込んでいた、負の感情を増幅させる「魔の苗床」だった。
「……ぁ……あぁ…………」
アルヴィスの瞳から濁りが消え、元の賢明な老魔導師の眼差しが戻る。彼は糸の切れた人形のように崩れ落ち、枢の足元で激しく喘いだ。
「……すまない、枢殿。……私は、強大な力を追い求めるあまり……自分の内側にある醜い澱に、気づかぬふりをしていたようだ」
「……謝罪は結構です。それより、今のあなたの体は、大手術を終えた直後のようにボロボロだ。……騎士団長! 陛下と魔導師長を別室へ! 足元の**『太谿』**を温め、気を鎮めさせるんだ!」
枢は、駆け寄る騎士たちに的確な指示を飛ばす。
もはや誰も、枢を「ただの針打ち」などとは見ていない。最強の魔導師すら救い上げる、この世で唯一の「魂の調律師」として、敬意を持って接していた。
だが、枢の翡翠眼は、浄化されたアルヴィスの影から、さらに不気味な「糸」が伸びているのを見逃さなかった。
その糸は、塔を降り、王都の地下……かつてないほど巨大な『病の巣窟』へと繋がっている。
「……アルヴィス様。……本当の黒幕、教団の『導師』はどこにいますか?」
「……ヤツは、王都の地下水路の最深部にある、禁忌の霊廟にいる。……そこは、数千年の死者の念が溜まった、地上で最も不潔な場所だ」
枢は往診バッグを担ぎ直し、星空を見上げた。
「……地下水路、ですか。……不衛生な場所は嫌いなのですが。……放置すれば王都全体の経絡が腐る。……夜通しの往診になりそうですね」
聖鍼師の戦いは、まだ終わらない。
次なる標的は、この国そのものを腐らせようとする、最古の病原体。
枢の手に握られた銀鍼が、月光を反射して冷たく、そして鋭く輝いた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
アルヴィス様、なんとか正気に戻ってよかったです。
枢さん、完全に「医者」ではなく、独自の「聖鍼師」としての道を突き進んでいますね。
さて、今回で王宮編の山場を越えましたが……真の黒幕は地下に。
「枢さんの鍼術、名前がついててカッコいい!」
「ツボの解説を聞くと、自分でも大椎を押したくなる(笑)」
本日は日曜日ブースト、次は**【12:00】に更新です!
地下霊廟への突入。枢が向き合う、最古の『毒』とは!?
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