第38話:星読みの塔、聖鍼vs大魔術
お読みいただきありがとうございます!
ついに始まった、王宮の頂上決戦。
神級魔法を操る最強の裏切り者に対し、枢が放ったのは、たった一本の黒い鍼でした。
章門、突突、玉堂……「魔法すらも人体の延長」と言い切る聖鍼師の驚愕の理論。
日曜日の朝から、最高にスカッとする無双劇をお届けします!
王宮の北端にそびえ立つ「星読みの塔」。
そこはかつて、星の動きから国の吉凶を占う聖域であったが、今はドス黒い魔力の渦が天を突き、見る者を気圧す死の塔と化していた。
枢は、王宮騎士団さえも近づけないその塔の入り口に、一人で立っていた。背後には心配そうに見守るセレスティアラ王女。
「枢様、せめて近衛を同行させてください! アルヴィス様は、この国で唯一『神級魔法』を操るお方なのですわ!」
「……王女様。癌の摘出手術に、軍隊は必要ありません。必要なのは、正確な診断と、病根を断つ一刺しだけです」
枢は往診バッグのベルトを締め直し、塔の扉を静かに開けた。
螺旋階段を登り切った最上階。
そこには、天球儀を背に、漆黒の法衣を纏った老人が待っていた。宮廷魔導師長、アルヴィス。その瞳は濁り、全身から溢れ出す魔力は、もはや人間が耐えうる領域を超えている。
「……来たか。身の程知らずの『聖鍼師』。お前が撒いた浄化の気は、我ら教団が数百年かけて育てた『病』を台無しにしてくれた」
アルヴィスが杖を振るうと、枢の周囲に無数の魔法陣が展開される。
「アルヴィス様。……あなたの魔力は、もはや正常に巡っていない。それは強大な力ではなく、全身を蝕む『肥大した癌』そのものです」
枢は翡翠眼を最大出力で解放した。
見えたのは、アルヴィスの心臓付近に居座る、巨大な魔力の塊。それが全身のツボ(経穴)を塞ぎ、無理やり魔力を暴走させている。
「黙れ! 凡夫に、神の領域の魔術が理解できるものか! 『大焦熱地獄』!!」
塔の最上階が、太陽のような熱量に包まれる。騎士なら一瞬で灰になる極大魔法。
だが、枢は動かない。
「……魔法の構築も、人体の経絡と同じ。……始点は右脇腹の**『章門』、そこから気を練り上げ、喉の『突突』**から吐き出す。……ならば、その流れを断ち切ればいい」
枢は熱風の中、一本の黒い鍼――**『影貫鍼』**を投擲した。
魔法の炎が枢に触れる直前、その鍼がアルヴィスの右脇腹、まさに魔力が練り上げられる起点へと正確に突き刺さる。
――ズ、ズゥゥゥン……。
轟音と共に、荒れ狂っていた炎が、まるで水に浸けられた炭のように瞬時に鎮火した。
「な、何だと……!? 私の神級魔法を、一瞬で『不発』にさせたというのか!?」
「不発ではありません。……あなたの気のスイッチを切った(オフにした)だけです」
枢は一気に間を詰め、狼狽えるアルヴィスの懐に飛び込む。
「……アルヴィス様。あなたは長年の魔道研究で、精神を司る経絡――**『魂門』**が完全に目詰まりしている。だからこそ、教団の誘惑に負け、友である陛下を裏切った」
「……う、うるさい! 貴様に何が分かる!!」
アルヴィスが杖で殴りかかろうとするが、枢はその腕を軽くいなし、彼の胸元、ちょうど左右の肺の間にある**『玉堂』**というツボに、中指を叩き込んだ。
「ぐ、はぁっ……!!」
「玉堂は、心の『宮殿』を守る場所。……そこに私の純粋な気を流し込めば、暴走していたあなたの魔力は、自身の肉体を浄化するために使われます。……いわば、自己免疫の強制発動です」
アルヴィスの身体が激しく震え、全身の毛穴から、ドス黒い煙が吹き出した。それは彼が長年溜め込んできた、呪いと独善の澱だった。
「……アルヴィス様。医者が診るのは、肉体だけではありません。……その腐りかけた『魂』も、再建させていただきますよ」
枢はさらに三本の鍼を扇状に広げ、アルヴィスの眉間、**『印堂』**へと狙いを定めた。
最強の魔導師が、たった一本の鍼によって、その存在意義を崩壊させられようとしていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
枢さん、ついに神級魔法を「不発」にさせちゃいました(笑)。
『章門』は実際に五臓の気が集まる非常に重要なツボですが、魔法のスイッチとして使う発想は枢さんならではですね。
「魔法が消えるシーン、鳥肌が立った!」
「枢さんにとって、どんな強敵もただの患者でしかないんですね……」
本日は日曜日ブースト! **【1日6回更新】でお届けします!
次回、第39話は【10:00】に更新予定。
アルヴィスの魂を救う「最後の一刺し」が、塔を揺るがします!
ぜひ【ブックマーク】**と評価で、この戦いの行方を見守ってください!




