第37話:澱んだ血脈、黒幕の正体
お読みいただきありがとうございます!
伯爵の告白によって明かされた、絶望的な真実。
救国の英雄の隣にいたのは、国を滅ぼそうとする「病根」そのものでした。
「相手が誰だろうと、私の鍼が届かない道理はない」
1,700文字超。聖鍼師枢が、国の守護神への「強制往診」を宣言します!
「……は、話す……。すべて話すから、その指をどけてくれ……!」
王宮の片隅、震えるエドガー伯爵の喉元に、枢の指先が触れている。**『人迎』**のツボから伝わる拍動は、もはや濁流のように乱れ、伯爵の精神が完全に崩壊したことを告げていた。
枢は冷徹な眼差しのまま、指先をわずかに離し、だがいつでも絶命させられる距離を保った。
「聞き流しませんよ。……あなたの背後にいるのは、誰です?」
「……『導師』だ。教団の頂点に立ち、死者の魔力を操る怪物……。奴は、バルモン侯爵を抱き込み、王宮の地下に潜んでいる。……いや、地下だけではない。……すでに、陛下の『最も近く』にまで毒を回しているのだ」
枢の翡翠眼が、その言葉に含まれた「真実の熱」を検知した。
「陛下の最も近く……? まさか、王宮守護の要である、あの『大魔導師』のことか?」
「……そうだ。宮廷魔導師長、アルヴィス……。彼こそが、教団の真の協力者であり……この国を巨大な『祭壇』に変えようとしている男だ」
その名が出た瞬間、周囲にいた近衛騎士たちの間に戦慄が走った。アルヴィスといえば、この国最強の盾であり、国王の最古の友と称される男だ。その彼が、パンデミックを仕組んだ黒幕の一人だというのか。
「……なるほど。最強の魔導師が、最強のウイルスを培養していたというわけですか」
枢は吐き捨てるように言い、往診バッグのストラップを強く握りしめた。
「癌細胞が、心臓を直接守る『心膜』に転移していたとは。道理で、治癒魔法が効かないわけです」
「く、枢様……。アルヴィス様が敵だとしたら、わたくしたちは……」
セレスティアラ王女の顔から血の気が引く。国の守護神が敵に回る。それは、この国の死刑宣告に等しい。
だが、枢だけは違った。彼は、まるで「明日のおかず」を決めるような平然とした態度で、王女の肩を叩いた。
「王女様、絶望する必要はありません。……むしろ、原因がはっきりしてスッキリしました。……最強の魔導師だろうと、人間である以上、血は流れ、気は巡る。……ならば、私の鍼が届かない道理はありません」
枢は伯爵を騎士たちに引き渡すと、広間の中心、最も高い場所に立つ。
「……さて、皆さんに『最終診断』を。……この国の病は、すでに末期です。生半可な薬も、祈りも、もはや無意味だ」
静まり返る広間。枢の声は、冷たく、だが確かな希望を伴って響き渡る。
「……だからこそ、私が執刀します。……魔導師長アルヴィス、あるいはその背後の『導師』。……彼らがどれほどの闇を抱えていようと、私の前ではただの『重篤な患者』に過ぎない。……その歪んだ野心ごと、一寸六分の銀鍼で焼き切って差し上げましょう」
枢は懐から、三本の鍼を取り出し、それを扇状に広げた。
「狙うは、王宮の最上階。星読みの塔。……そこが、この国の『百会』……すなわち、すべての毒が噴き出している一点ですね」
枢の翡翠眼には、夜空を突き抜けて「星読みの塔」へと収束する、巨大な呪詛の奔流が見えていた。
「……皆さん、往診の時間です。……一秒でも早く、この国を健やかな眠りに戻してあげましょう」
枢が歩き出した瞬間、騎士たちが一斉に道を開け、最敬礼で彼を見送る。
救国の聖鍼師。その背中は、どんな英雄譚の騎士よりも大きく、頼もしく見えた。
バルコニーから夜風が吹き込み、枢の藍色の礼装をなびかせる。
彼の脳裏には、すでにアルヴィスの魔力結界を突破するための、特殊なツボへの一撃――**『魂門』**への刺鍼シミュレーションが完了していた。
聖鍼師vs大魔導師。
異世界の常識を、現代の医術が塗り替える。
真の「オペ」が、今、始まろうとしていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
枢さん、最強の魔導師を相手に「重篤な患者」呼ばわり……。
本物のプロは、相手の肩書きなんて関係ないんですね。
ついに物語は「王宮頂上決戦」へと突き進みます。
本日は1日6回更新ブースト、お付き合いいただき本当にありがとうございました!
皆様の応援のおかげで、最高の熱量で書くことができました。
「枢さん、格好良すぎて鳥肌が立った!」
「明日の朝の更新が待ちきれない……!」
と思っていただけましたら、ぜひ**【ブックマーク】と【下の☆☆☆☆☆】**で評価をいただけますと、日曜日のブーストの大きな活力になります!
次回、第38話は明日(日曜)の**【08:00】**に更新予定。
星読みの塔、激突。聖鍼vs大魔術。
枢の放つ「魂門」の一撃が、異世界の常識を粉砕します!




