第35話:沈黙を切り裂く「震動鍼」
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暗殺者を捕らえた枢が始めたのは、死よりも恐ろしい「ツボ攻め」。
『完骨』で平衡感覚を狂わせ、『欠盆』で呼吸を奪う。
聖鍼師の鍼は、時に命を救い、時に精神を叩き潰す。
1,600文字超、枢の「容赦ない一面」に痺れてください!
月光に照らされたバルコニー。
暗殺者の喉元に突きつけられた、自らの放った毒鍼。枢の翡翠眼は、暗殺者の体内で激しく脈打つ「恐怖の波形」を冷静に捉えていた。
「……さて。あなたが口を割るか、私の鍼があなたの喉を貫くか。どちらが早いでしょうか」
「……ぐ、ぅ……殺せ……。我ら教団の者は、死を恐れぬ……」
暗殺者は強がってみせたが、その瞳はわずかに泳いでいた。枢は、そんな彼の強がりを鼻で笑い飛ばすと、毒鍼をスッと引き、代わりにバッグから一本の極薄い銀鍼を取り出した。
「死を恐れない、ですか。……ですが、『自分の体が思い通りにならない不快感』には耐えられるでしょうか?」
枢が鍼を打ったのは、暗殺者の耳の裏、完骨というツボのさらに奥にある、脳へと繋がる神経の交差点だった。
「ひっ……!? なんだ、これ、頭の中が……!」
「ここは**『完骨』**。通常は不眠やめまいに効くツボですが、私の気を『高周波の震動』として流し込めば、三半規管を直接狂わせることができます。……いわば、立っていながら激しい船酔いを体験し続けるようなものです」
暗殺者の視界がぐにゃりと歪んだ。内臓がせり上がるような、経験したことのない不快感。逃げようにも、先ほど打たれた**『肩井』**のせいで指一本動かせない。
「……さらに。鎖骨の上の窪みにある**『欠盆』**。ここは全身の気が集中する要所ですが、ここを封じれば……どうなると思います?」
枢が二本目の鍼を打つと、暗殺者の呼吸が急激に浅くなった。酸素は吸えているはずなのに、窒息しているかのような絶望的な息苦しさが彼を襲う。
「……は、ぁっ、が、ふ……っ!!」
「苦しいでしょう。……教団の『真の主』とやらは、あなたのこの苦しみを肩代わりしてくれますか? ……さあ、王女様を狙ったのは、バルモン侯爵の差し金ですか?」
枢の翡翠眼が、暗殺者の眼球の動きをミリ単位で追う。
「……バルモン……様は、ただの、協力者……。主様は……王宮の……さらに……『上』に……」
「『上』? ……まさか、この国の政治を司る宰相閣下か、あるいは……」
枢がさらに核心に迫ろうとした瞬間、暗殺者の身体が不自然に膨れ上がった。
(……これは、呪詛による自爆か!?)
翡翠眼が捉えたのは、暗殺者の心臓にあるツボ、**『極泉』**に仕掛けられていた「情報の漏洩を防ぐための自動発動術式」だった。口を割ろうとすれば、強制的に心臓を破裂させる、まさに使い捨ての駒としての処置。
「……王女様、離れて!!」
枢は瞬時に暗殺者の胸倉を掴み、バルコニーから階下の深い茂みへと放り投げた。
刹那。
――ドォォォォンッ!!
暗闇の中で、黒い爆炎が上がった。
「枢様!!」
駆け寄るセレスティアラ王女。枢は爆風を背に受けながら、無表情に夜の闇を見据えていた。
「……口封じですか。……どうやら、この国の癌細胞は、想像以上に深く、広範囲に転移しているようです」
枢は自分の指先を見つめた。そこには、爆発の直前に暗殺者から奪い取った、一欠片の「黒い宝飾品」が握られていた。
「王女様。……平和な宴は、今夜で終わりになりそうです。……明日から、本格的な『内視鏡手術』を始めます。……敵が王宮の『上』にいるのなら、そこまで登り詰めて引きずり出すまでです」
枢の翡翠眼が、かつてないほど冷酷な光を放っていた。
聖鍼師の「往診」は、ついにこの国の根幹――権力の闇へと切り込んでいく。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
枢さん、完全に敵を実験台にしてますね(笑)。
『完骨』は実際、耳鳴りや頭痛に効く良いツボなんですが、枢さんが使うと凶器に早変わり……。
そして、最後に暗殺者が口にした「上」の存在。
王宮の闇は、まだまだ深そうです。
「枢さんの拷問、専門的すぎて逆にカッコいい……!」
「自爆までさせる黒幕、一体何者なんだ!?」
1日6回更新、次は**【18:00】です!
枢が手に入れた「黒い宝飾品」が、新たな真実を導き出します。
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