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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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322/353

第322話:全宇宙対、聖鍼師・枢。癌細胞と断じられた救世主を「神域の一鍼」で全肯定せよ

王都の空は、人類を「幸福死」から救った翡翠の余韻をかき消すように、見たこともない血のような「赤紫色のノイズ」に染まりました。過剰な幸福を奪い、人々に「痛み」という名の生を与えたくるるの行為は、宇宙の因果律にとって、あらかじめ決められた死のプログラムを破壊する「史上最悪の癌細胞」と見なされたのです。


黄金の両腕を、もはや癒やしのためではなく、宇宙の法則そのものを防衛するために構える枢。彼の横には、もはや震えることなく、師と共に滅びる覚悟を決めたミナの姿がありました。全宇宙の星々が、枢一人を抹殺するためにその運行を狂わせ、無数の流星が「処刑の鍼」となって降り注ぎます。しかし、自分自身が世界にとっての病であると宣告された聖鍼師は、かつてないほど清々しい、真の強者の微笑を浮かべていました。


「(なるほど。救済の果てに私自身が『摘出されるべき腫瘍』になったというのですか。……面白い。宇宙が私を拒絶するというのなら、私が今ここで、宇宙そのものを『私を受け入れられる器』へと改造してあげましょう。……。さあ、因果のシステムさん。私という名の特効薬、飲み干す準備はできていますか)」


枢の声は、次元の壁を震わせ、迫りくる宇宙の軍勢を圧倒する「真理の咆哮」へと昇華されます。

完全なる聖者が挑む、自己切除セルフ・サージェリーの外科往診。今、全宇宙を診察台に載せた、史上最大の執刀が始まります。


18時、夕刻の穿刺、自己切除の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「全宇宙の理」と戦います。どうぞ最後までお読みください。

 王都の夕闇は、物理法則の崩壊を示す「因果の亀裂」によってズタズタに引き裂かれていた。

 天の頂から降り注ぐのは、教皇の呪いでも始祖の怨念でもない。この宇宙が宇宙であるためにくるるというイレギュラーを排除せんとする、純粋な「絶滅の意志」であった。星々は軌道を外れ、重力は逆転し、酸素の一分子さえもが枢の喉を焼き切ろうとする。


 世界を救いすぎた罪。

 それは、決められた滅びのシナリオを書き換えてしまった「修正不能なエラー」として、枢を全宇宙の共通敵へと押し上げた。

 人々を救うために取り戻したはずの黄金の両腕が、今は宇宙からの総攻撃を凌ぎ、次元を繋ぎ止めるための「支柱」となっている。


 枢は、逃げ惑う人々を背に、ミナの細い手を力強く握りしめた。

 もはやミナを依代にする必要はない。だが、彼はあえてミナと共に立つ道を選んだ。

 「……。ミナ、見ていなさい。……。これが、医術の到達点です。……。患者に嫌われ、世界に拒まれ、それでもなお命を繋ぐ。……。嫌われ者の外科医には、嫌われ者なりの『世界の愛し方』があるのですよ」


 枢の声は、宇宙の処刑宣告を嘲笑うかのように、天の彼方まで翡翠の共鳴を広げた。

 彼は黄金の右手を掲げ、迫りくる銀河規模の重力波に対し、指先一つで「点」の圧力を加えた。

 宇宙の急所、すなわちこの空間そのものの均衡を司る**『大椎だいつい』。


 ――キィィィィィィィィンッ!!


 刹那、枢の指先から放たれた翡翠の一閃が、王都を押し潰そうとしていた重力波を「そよ風」へと変換し、そのまま宇宙の深淵へと逆流していった。

 宇宙が枢を排除しようとする力が強ければ強いほど、枢はそのエネルギーをそのまま「治療の力」へと反転させる。

 彼は、自身を癌細胞と呼ぶシステムに対し、その設計図の「狭量さ」を指摘する外科手術を開始した。


 「(システムさん。あなたは完璧主義が過ぎる。……。イレギュラーを排除して守るだけの平和など、死んでいるのと同じだ。……。多様な病を抱えながらも、なお拍動を続ける。……。それこそが、生きた宇宙の姿だと思いませんか。……。さあ、私が今からあなたの『頑固』という名の不治の病、根こそぎ摘出して差し上げましょう)」


 枢は、黄金の左腕を大地へと突き立てた。

 彼が狙うのは、この惑星、いや、この銀河系全体の気の流れを統括する究極のツボ、『命門めいもん』。

 彼は自身の黄金の両腕を、宇宙の因果そのものを外科的に縫い合わせ、再構築するための、神域縫合鍼――『翠玉の万物全肯定ジェイド・アブソリュート・イエス』へと昇華させた。


 ――ズゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


 枢の全身から放たれた光が、王都から宇宙の果てまでを網目状に駆け巡る。

 それは宇宙の攻撃を防ぐ盾ではなく、宇宙という巨大な患者の全身を優しく包み込む「包帯」であり、歪んだ骨格を矯正する「矯正鍼」であった。


 処刑の流星が、翡翠の光に触れた瞬間に「祝祭の花火」へと変わる。

 枢を焼き尽くそうとした太陽のフレアが、凍える大地を温める「慈愛の光」へと変わる。

 宇宙が放つ殺意のすべてが、枢の手によって、生命を育むための「栄養素」へと再定義されていく。


 「バ、……。……。バカナッ!? 消去コードガ、……慈しみという名の『祝辞』に書き換えられていく……!! 宇宙ノ意志ガ、……この男の手に、……堕ちたというのか……!!」


 理の執行者の残骸たちが、宇宙の次元の隙間から悲鳴を上げる。

 だが、枢は止まらない。彼は黄金の両腕を使い、宇宙の深淵に潜む「最後の一点」――世界のバグの根源である『神庭しんてい』**を見据えた。


 「(お疲れ様でした。宇宙の管理者さん。……。あなたはもう、無理に世界を管理する必要はありません。……。これからは、私と、ここに生きる人々が、自分たちの足で『健やかな未来』を歩んでいきますから。……。さあ、私の存在を賭けた、最後で最高の外科手術……完了チェックアウトです)」


 枢が虚空を射抜くと、赤紫色のノイズは一瞬で消え去り、そこにはかつてないほど深く、そして優しい「真実の夜空」が広がった。


 第322話。

 聖鍼師・枢は、自分を癌細胞と呼んだ宇宙そのものを外科手術し、イレギュラーを許容する「新しい因果律」を産み落とした。


 王都の人々は、自分たちが救われたことさえ気づかないほど、自然に「明日」を迎える。

 しかし、宇宙の理を書き換えた枢の黄金の腕からは、その代償として、一滴、また一滴と「翡翠の血」が流れ落ちていた。


 枢の往診は、ついに自らの生命を削り、世界そのものを生かすための、究極の献身ラスト・リゾートへと突入した。

本日、金曜日18:00の更新を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第四章・第83話(通算第322話)。

世界を救いすぎた結果、宇宙のシステムから「癌細胞」として排除の対象に選ばれたくるる先生。そんな彼が、逃げるのでもなく、破壊するのでもなく、宇宙そのものを「自分を受け入れる形」に外科手術するという、まさに神域の往診を描きました。

完全体となった枢先生にとって、宇宙の殺意さえも治療のための「材料」でしかない。その圧倒的なスケール感と、一滴の血が示唆する不穏な予兆。物語が完遂に向けて、さらに深い深淵へと潜っていく様を、持てる限りの質量で表現いたしました。


今回、全宇宙の拒絶反応を沈め、因果律を全肯定の物語へと書き換えるために枢が駆使した術式を解説します。

まず、宇宙規模の重力波や殺意を中和し、自らの力へと反転させるための起点とした**『大椎だいつい』。首の付け根にあるこのツボに対し、枢は黄金の腕から放つ「無」の波動をぶつけることで、宇宙のあらゆる攻撃を「生命の息吹」へと変換しました。


そして、この惑星と銀河の気の流れを根本から再構成し、イレギュラー(枢)を許容する新しい法則を定着させるためのアンカーとした『命門めいもん』。枢は自身の黄金の腕を大地に突き立てることで、物理法則そのものを外科的に縫い合わせ、宇宙という患者の「体質改善」を成功させたのです。

最後に、宇宙の意志そのものと対話し、管理の重責から解放するための最終回路とした『神庭しんてい』。この往診を経て、枢先生は名実ともに、宇宙に「自由」という名の健康を与えた主治医となりました。


次回の第323話(第四章 第84話)は、本日金曜日【21:00】に更新予定です。


宇宙を救い、自らの生命力を代償に払った枢先生。しかし、そんな彼の前に、ついに「本当の、最後の患者」が現れます。

それは、これまで枢を支え続けてきた『弟子のミナ』**。

彼女が抱えていた、師匠にさえ言えなかった「宿命の病」とは。

「(……。おやおや。一番近くに、こんなにも重い患者さんがいたなんて。……。医者の不養生ならぬ、師匠の不養生ですね。……さあ、ミナ。私の全てを使って、あなたを『普通の子』に戻してあげましょう)」


21時、本日最終。最愛の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「愛する者」を救います。どうぞお見逃しなく。

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