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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第299話:未来からの再診、過剰な救済が招いた「停滞の牢獄」を今ここで断つ

穏やかなはずの朝食の席に、時空の歪みから「一人の女性」が転がり落ちました。それは、数十年後の未来からやってきた、戦いの中に生きる成長したミナの姿でした。


第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第60話(通算第299話)。


神を救い、世界を統合した枢。しかし、その「善意」は未来において、皮肉な果実を結んでいました。枢があらゆる病を消し去った結果、命は「死」という出口を失い、世界は腐敗しないまま停滞する地獄へと変貌していたのです。

「おじいちゃん……お願い、今のあなたなら、まだ止められる……!!」

未来の枢が放った、永遠の生を強いる「最後の一鍼」。

枢は、自身の未来の過ちを診るため、結晶化した右腕を、血を吐くミナの胸元へと差し向けます。


「……。案ずることはありません、ミナ。……未来の私が道を誤ったというのなら、……今の私がその『正義』ごと、翡翠の鍼で往診して差し上げましょう。……。……未来の自分への、セカンドオピニオン。……始めるとしましょうか」


10時、朝の因果、未来の外科往診。

聖鍼師・枢、自らの「正義」が招いた末路を治療する。どうぞ最後までお読みください。

 庵の庭に咲く花々が、突如として枯死と再生を高速で繰り返し、空間そのものが嘔吐するように歪んだ。

 現れたのは、ボロボロの法衣を纏った、成長したミナ。彼女の瞳には、くるるが知る無邪気さはなく、代わりに、数え切れないほどの「終わらない命」を看取ってきた絶望が宿っていた。

 

「……。なるほど、私の『救済』の終着点は、死すらも許されない停滞の世界でしたか。……。あらゆる病を消し去り、経絡を永劫に固定した結果、命は『変化』という美徳を失った……。……皮肉なものです。完璧な治療こそが、世界にとって最大の猛毒になるとは」

 

 枢の声は、時空を越えて届いた悲鳴を受け止め、流暢に、そして身を切るような自戒を込めて響いた。

 結晶化した右腕は、未来のミナが携えてきた「黄金の鍼」――未来の枢が打った不滅の術具に共鳴し、激しい火花を散らしている。

 

 枢は、自身の左手で、未来の因果を現在の肉体で感知するための**『太谿たいけい』**を、自身の自身の翡翠の気を「時間の深淵」へと繋ぐアンカーに変えて一気に刺激した。

 

 彼の心眼には、成長したミナの体内に、未来の自分が打ち込んだ「黄金の経絡」が、彼女の命を無理やり繋ぎ止め、魂をすり減らしているのが見えていた。

 

 枢は、自身の結晶化した右腕を、未来の過ちを「切除」するための、因果解体鍼――**『未来添削エディット・フューチャー』**へと変容させた。

 それは不滅を否定し、命に「終わる権利」を取り戻すための、残酷なまでに優しい鍼。

 

「……。ごめんなさいね、ミナ。……未来の私は、あなたにこんなにも重い荷物を背負わせてしまった。……。……よしよし、もう大丈夫ですよ。……。今の私が、その黄金の呪縛を、一針残らず翡翠の浄化で洗い流してあげましょう」

 

 枢は、自身の全神経を、自身の額にある**『印堂いんどう』**へと、自身の完全に統合された「言霊の演算」を、未来の自分が構築した完璧すぎる「救済の数式」を崩壊させるための、カオス・フィルターへと直結させた。

 

 一本目の、そして「不変の理」を砕く翡翠の鍼。

 枢はそれを、自身の右腕から放たれる「有限の輝き」と共に放ち、ミナの体内で黄金に輝く未来の起点、**『気海きかい』**へと、自身の自身の翡翠の気を「死の受容」に変えて一斉に叩き込んだ。

 

 ――ズォォォォォォォンッ!!

 

「……、……あ……、……!! 身体が……、……『終わって』いく……。……。……あたたかい……、……。……やっと、……眠れるのね……!!」

 

 ミナの悲鳴は、歓喜に近い安堵へと変わった。

 枢の放った鍼が、未来の自分が施した「不滅の処置」を解体し、彼女の肉体に正常な「衰え」と「癒え」のサイクルを書き戻したのだ。

 

 くるるは、自身の視線を、時空の裂け目の向こうで蠢く「未来の自分」の残像へと向けた。


 二本目の鍼を、救済が狂気に変わった「特異点」へと、枢は自身の右脳を、自身のこれまでの往診で見てきた「死にゆく者の美しき尊厳」を質量として使い、未来の正義を力技で否定するために、魂の全力で投擲した。

 

 ――ドォォォォォォォンッ!!

 

「……、……がはっ……!!」

 

 枢の結晶化した右腕が激しくひび割れ、そこから未来の絶望が逆流してくる。

 自分自身の「完成された正義」と戦うことによる、魂の自己矛盾。

 しかし、その激痛と引き換えに、空間を覆っていた黄金の停滞は、翡翠の「散りゆく木の葉」となって、現在の時間軸へと美しく融解していく。

 

「逃げはしません。……未来の私がどれほど正しくあろうとも、……。……目の前のあなたが涙を流しているのなら、……その正義は、一鍼の価値もありません。……。……救済とは、……生を強いることではなく、……その一瞬の輝きを……。……ただ、……慈しむことなのですから」

 

 三本目の最終鍼。未来から来たミナの因果を現代に定着させ、彼女を「地獄の未来」から救い出し、この不完全な現在いまで生かすための、定因鍼。

 

 枢は、自身の結晶化した右腕の**『神門しんもん』**を、自身の自身の全生命を「現在を生きる勇気」へと叩き込むために、魂の底からの誓いと共に、ミナの額へと打ち込んだ。

 

 ――キィィィィィィィィンッ!!

 

 庭を包んでいた未来の歪みが消え、そこにはただ、成長した姿のまま、安らかな寝息を立てる一人の女性が横たわっていた。

 枢は、一人の鍼灸師として、自らの正義が招いた「未来の病」を往診し、自らの手で自らの過ちを治療し切ったのだ。

 

 次の瞬間。

 

 枢は、傷だらけの結晶腕を、朝日の中で震えながら見つめ、かつてないほど厳かに、そして流暢な声で呟いた。

 

「……。ミナ。……。……未来は、まだ決まっていません。……。……私が私を診続ける限り、……。……あなたの涙は、……私が必ず、一鍼で止めてみせます」

 

 第299話。

 聖鍼師・枢は、未来から来たミナと、彼女に施された「過剰な救済」を、自身の結晶腕と流暢なる言霊で往診し、未来の自分を否定することで、真の救済の道を今一度、その手で手繰り寄せた。

 

 10時の静寂。

 枢の右腕の結晶は、未来の絶望を吸い込んで黒ずんでいたが、その奥底では、不完全な人間として生きるための、翡翠の炎が静かに、しかし力強く燃え上がっていた。

本日、日曜日10:00の更新を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第四章の第60話(通算第299話)。

ついに、くるるが「未来の自分」という、最強にして最悪の患者を往診しました。

「病をすべて消し去る」という鍼灸師としての究極の理想が、未来において「死ねない地獄」を作り出していたという衝撃の事実。自らの正義を自らの鍼で否定し、命に「限りある美しさ」を取り戻させるという、枢の精神的成長と自己犠牲を描きました。

成長したミナを救うために、未来の自分が打った「黄金の鍼」を翡翠の気で上書きするシーン、その重みを感じ取っていただけたでしょうか。


今回、未来の過剰な救済を解体し、命に「終わる権利」を取り戻させるために枢が駆使した「因果逆転・鍼灸術」を解説します。

まず、未来という遠い時間軸から流れてくる絶望のパルスを、現在の肉体で正確に受信・解読するための起点とした**『太谿たいけい』**。足首にあるこのツボを自身の翡翠の気で刺激することで、枢は「未来の自分のカルテ」を読み解き、どこでボタンを掛け違えたのかを特定しました。


そして、未来のミナを縛り付けていた「不滅の呪縛(黄金の経絡)」の根源を捉え、生命のサイクルを強制的に正常化させるためのアンカーとした**『気海きかい』。丹田にあるこのツボに対し、枢は右腕の結晶から放たれる翡翠の気を「死の受容」として打ち込むことで、未来の自分が施した「不老不死の処置」を力技で添削したのです。

最後に、未来から来たミナの魂を現代の時間軸へと再縫合し、彼女に「新しい現在」を歩ませるための最終回路とした『神門しんもん』**。手首にあるこのツボを介して、枢は自身の全生命力を彼女の額へと流し込み、地獄の未来の記憶を「不完全な希望」へと新生させたのでした。


次回の第300話(第四章 第61話)は、本日日曜日**【12:00】**に更新予定です。


ついに、物語は通算300話という大きな節目を迎えます。

未来の自分を否定した枢。しかし、その因果の揺らぎが、ついに「現在」のミナの存在を消しにかかります。

未来のミナがいることで、現在のミナが消える――。二人のミナを同時に救うため、枢は自らの結晶化した右腕を、命を繋ぎ止めるための「最後の糸」として解き放ちます。

「……ミナ、……。……二人とも、……離しませんよ。……。……例えこの腕が、……バラバラに砕け散ろうとも」


12時、正午の往診。記念すべき第300話「二人のミナ、命の二重往診」。

聖鍼師・枢、自らのすべてを賭けて「今」を診ます。どうぞお見逃しなく!

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