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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第297話:神への往診、無垢なる創造主を「不滅の翡翠腕」で矯正する

王都を静寂が包み、星々さえもその瞬きを止めたときくるるの庵の前に現れたのは、世界の創造主を名乗る、あまりにも無垢な瞳をした少年でした。


第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第58話(通算第297話)。


第四章もいよいよ佳境。数多の苦難、代償、そして覚醒を経て、枢はついにこの世界の「理」そのものと対峙します。

少年の姿をした神アルキメス。彼にとって、この世界は単なる「習作」であり、そこに生きる命は「書き損じの文字」に過ぎませんでした。

「ねえ、おじいちゃん。その綺麗な腕で、ボクの失敗作を全部消してくれるの?」

笑いながら手を伸ばす少年に対し、枢は流暢なる言霊と共に、翡翠の結晶腕を静かに構えます。


「……。神様。……。……あいにくですが、私は『消しゴム』ではありません。……。……消えてしまった文字を拾い上げ、……。……途切れた行間を鍼で繋ぎ止める、……。……ただのしがない鍼灸師なのです。……。……さあ、その傲慢という名の『澱み』、私が往診して差し上げましょう」


21時、本日最終。創世の再診、神域の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「神」の喉元に、翡翠の一鍼を投じる。どうぞ最後までお読みください。

 深夜の冷気が、くるるの庵をまゆのように包み込んでいた。

 庭先に佇む一人の少年。その姿はどこまでも無垢でありながら、彼が踏みしめる地面からは色彩が抜け落ち、世界の記述そのものが「未完成の状態」へと退行していく。

 

「……なるほど。あなたがこの箱庭の主、神アルキメスですか。……。想像以上に幼く、そして残酷な目だ。……。自分以外の命を『文字』としか認識できないその視界……。……それは一種の、重篤な精神の経絡閉塞ですよ」

 

 枢の声は、夜の静寂を翡翠の輝きで塗り替えるように、流暢に、そして慈悲深く響いた。

 結晶化した右腕からは、神の領域に直接干渉するための「高周波の気」が放たれ、少年の周囲に展開された無敵の防壁を、じりじりと削り取っていく。

 

 枢は、自身の左手で、神の権能を一時的に封殺するための**『風府ふうふ』**を、自身の自身の翡翠の気を「絶対静止の冷気」に変えて一気に刺激した。

 

 彼の心眼には、少年の胸の奥に、この世界を創り出した際の「原初の孤独」が、癒えることのない巨大な腫瘍となって疼いているのが見えていた。

 

 枢は、自身の結晶化した右腕を、空に浮かぶ銀河すらも一本の線へと収束させる「真理の極鍼」へと変容させた。

 それは神を殺すためのものではない。神を「一人にさせない」ための、救神鍼――『創世診ジェネシス・ケア』。

 

「……。遊ぶのはもう終わりにしましょう。……。あなたが書き殴ったこの世界の端々で、命たちがどれほど懸命に『自分の物語』を綴っているか。……。その震える筆跡を、……私がこの腕で、あなたの心に直接刻み込んで差し上げます」

 

 枢は、自身の全神経を、自身の額にある**『印堂いんどう』**へと、自身の完全に統合された「不滅の意志」を、神の絶望を「人間の愛」へと翻訳するための超次元フィルターへと直結させた。

 

 一本目の、そして「神の傲慢」を穿つ翡翠の鍼。

 枢はそれを、自身の右腕から放たれる「全生命の咆哮」と共に放ち、少年の存在の特異点、**『膻中だんちゅう』**へと、自身の自身の翡翠の気を「真実の楔」に変えて一斉に叩き込んだ。

 

 ――ズォォォォォォォンッ!!

 

「……、……あ……、……!! 痛い……!? ……。……ボクが……、……ボクの作った世界で……、……痛みを感じるなんて……!!」

 

 少年の驚愕と共に、王都の空が激しく明滅する。

 枢の放った鍼が、神という絶対的な記述に「人間の感覚」という異物を強制的に混入させたのだ。

 

 くるるは、自身の視線を、震える少年の瞳の奥へと向けた。

 

 二本目の鍼を、神の孤独の「結節点」へと、枢は自身の右脳を、自身のこれまでの往診で触れてきた「数え切れないほどの体温」を質量として使い、神の冷徹な理を愛の熱量で溶かすために、魂の全力で投擲した。

 

 ――ドォォォォォォォンッ!!

 

「……、……がはっ……!!」

 

 枢の結晶化した右腕から翡翠の亀裂が走る。神の孤独そのものを自身の肉体で受け止めることによる、存在の崩壊の予兆。

 しかし、その激痛と引き換えに、少年の放っていた白銀の威圧は、柔らかな「人間の温もり」へと、少しずつ形を変えていく。

 

「……。神様、診察はまだ終わりませんよ。……。あなたが捨てたかったこの世界は、……こんなにも……温かいのですよ。……。……ほら、私の脈動を……、……あなたのその小さな胸に、……写し取ってあげましょう」

 

 三本目の最終鍼。神という立場を剥離させ、彼を一人の「寂しがり屋の子供」へと還し、この世界と共生させるための、定神鍼。

 

 枢は、自身の結晶化した右腕の**『神門しんもん』**を、自身の自身の全生命を「共感の記述」へと叩き込むために、魂の底からの慈愛と共に、少年の細い腕へと打ち込んだ。

 

 ――キィィィィィィィィンッ!!

 

 夜を支配していた神の圧迫感が消え、そこにはただ、枢の腕の中で泣きじゃくる、一人の小さな男の子がいた。

 枢は、一人の鍼灸師として、神という名の究極の孤独を往診し、世界の創造主を「世界の隣人」へと治療し切ったのだ。

 

 次の瞬間。

 

 枢は、膝を突いて少年を抱きしめ、結晶化した右腕でその背中を優しく叩きながら、世界で一番流暢で、あたたかな声で囁いた。

 

「……。もう、大丈夫ですよ、アルキメス。……。これからは、一人で書く必要はありません。……。不完全な私たちが、あなたの続きを……、……一緒に綴っていきますから」

 

 第297話。

 聖鍼師・枢は、自らの前に現れた神アルキメスを、不滅の結晶腕と至高の言霊で往診し、神を人間へと「引きずり下ろす」のではなく、愛を持って「迎え入れる」ことで、創世の呪縛を完全に解き放った。

 

 深夜の静寂。

 枢の右腕の結晶は、眠りについた少年の寝顔を映して、どこまでも優しく、翡翠色の光を放ち続けていた。

本日、土曜日・全6回の激闘の更新を、最後まで見守っていただき、本当にありがとうございました!!


第四章の第58話(通算第297話)。

ついに、くるるが「神」そのものを往診し、和解するという歴史的瞬間を描き切りました。

神を倒すべき敵としてではなく、あまりにも力が強すぎたゆえに孤独に陥った「患者」として扱い、その心を人間に近づけることで世界を守るという、枢ならではの救済。言葉を取り戻し、右腕を結晶化させたことで到達した、この物語の「一つの頂点」です。


今回、神の孤独を治療し、彼を世界の一員へと還すために枢が駆使した「神域往診・鍼灸術」を解説します。

まず、神という絶対的上位存在の権能を一時的に抑制し、対等な対話の場(経絡)を強制的に作り出すための起点とした**『風府ふうふ』**。後頭部にあるこのツボを自身の翡翠の気で刺激することで、枢は神の脳内に「人間の理性」を介入させ、暴走する創造の衝動を沈静化させました。


そして、神の心臓部に宿る「原初の孤独」という名の腫瘍を捉え、それを数多の命の体温で中和するためのアンカーとした**『膻中だんちゅう』。胸の中央にあるこのツボに対し、枢は右腕の結晶から放たれる全生命の咆哮を「真実の楔」として打ち込むことで、神に初めて「他者の痛み」を理解させたのです。

最後に、神としての立場(記述)を剥離し、彼を一人の純粋な生命体として世界に定着させるための最終回路とした『神門しんもん』**。手首にあるこのツボを介して、枢は自身の全生命力を少年の経絡へと流し込み、神をこの世界の「愛すべき隣人」へと新生させたのでした。


次回の第298話(第四章 第59話)は、明日日曜日**【08:00】**に更新予定です。


神を救い、王都に真の夜明けが訪れます。しかし、眠りについた元・神の少年が呟いた一言が、枢を再び震撼させます。

「……おじいちゃん。……。……ボクを治してくれてありがとう。……。……でも、……。……ボクの予備の『下書き』たちが、……。……もうすぐこの街を……、……迎えに来ちゃうよ……?」

空の彼方から迫る、数百もの「未完成の世界」。


日曜日の朝、第1ラウンド。連鎖の往診、多重世界の外科往診。

聖鍼師・枢、今度は「世界そのものの群れ」を往診します。どうぞお見逃しなく!

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