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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第294話:自己剥離、白銀の結晶と化した右腕を「不滅の極鍼」へと昇華させる

天から降り注ぐ真昼の陽光とは対照的に、くるるは冷たく光り始めた右腕を隠し、王都の地下深く、禁じられた書庫へと足を踏み入れます。


第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第55話(通算第294話)。


少女を救った代償は、あまりにも残酷な形で枢を蝕んでいました。白銀に結晶化し、感覚を失っていく右腕。それは彼が「人間」という記述から外れ、神の「無」に呑み込まれ始めた証。

地下書庫の最奥で待っていたのは、枢がかつて切り捨てたはずの「若き日の自分」の残像でした。


「……。案ずることはありません、ミナ。……これは、私が私自身に行う、最後の『自己治癒』なのですから。……。さあ、私よ。……。お前が抱えるその執着を、今の私が翡翠の鍼で、永遠に浄化して差し上げましょう」


12時、正午の自己剥離、存在の外科往診。

聖鍼師・枢、消えゆく己の右腕を「最強の武器」に変えて。どうぞ最後までお読みください。

 王都を照らす太陽は、地下深くの禁忌の書庫には届かない。

 カビと古書の匂いが漂う暗がりの一角で、くるるの右腕だけが、不気味な白銀の輝きを放ち、周囲の空気を凍らせていた。

 

「……。皮肉なものですね。他者の運命を書き換えた報いが、私自身の肉体を『記述の残滓ゴミ』へと変えようとしている。……ミナ、そこに座っていなさい。これからお見せするのは、医術でも魔術でもない。……私という人間が、私自身であるための最後の戦いです」

 

 枢の声は、地下の静寂に波紋のように広がり、かつての断片的な響きを完全に脱ぎ捨てた、透き通るような流暢さを湛えていた。

 右腕はもはや肘までが硬い結晶へと変わり、指の一本も動かない。だが、枢の瞳には、絶望の影は微塵もなかった。

 

 枢は、自身の左手で、自身の生命エネルギーの源泉である**『関元かんげん』**を、自身の自身の翡翠の気を「存在の錨」に変えて一気に刺激した。

 

 彼の心眼には、結晶化した右腕の中に、枢がかつて捨てたはずの「名声への渇望」や「老いへの恐怖」が、神の記述と混ざり合い、醜い塊となって鼓動しているのが見えていた。

 

 枢は、自身の左指先に、結晶化した右腕から溢れ出す白銀のエネルギーを「凝縮」させた、一本の「結晶の極鍼」を出現させた。

 それは他者を救うためのものではない。自分の中にある「神ならざる部分」を削ぎ落とすための、外科鍼――『自己浄化セルフ・パージ』。

 

「……。さあ、私の影よ。……神の力を借りて若返りたいか。……永遠の沈黙の中に逃げ込みたいか。……。残念ながら、今の私は、あなたのそんな浅ましい願いを聞き入れるほど、……。……慈悲深くはないのですよ」

 

 枢は、自身の全神経を、自身の額にある**『印堂いんどう』**へと、自身の完全に統合された「不滅の意志」を、結晶化した右腕を「最強の術具」へと再構成するための変換フィルターへと直結させた。

 

 一本目の、そして「己の弱さ」を穿つ覚悟の鍼。

 枢はそれを、自身の左手から放たれる「翡翠の光」と共に放ち、結晶化した右腕の起点、**『曲池きょくち』**へと、自身の自身の翡翠の気を「存在の쐐ギ」に変えて一斉に叩き込んだ。

 

 ――ズォォォォォォォンッ!!

 

「……、……あ……、……!! 身体が……、……内側から……、……燃える……!!」

 

 枢の呻きと共に、地下書庫に白銀の破片が飛び散る。

 右腕の結晶が、枢の意志に抗うように激しく脈動し、彼の肉体そのものを砕こうと牙を剥く。

 

 くるるは、自身の視線を、右腕の奥で嘲笑う「過去の自分」の残像へと向けた。

 

 二本目の鍼を、自身の執着の「結節点」へと、枢は自身の右脳を、自身の自身のこれまでの人生のすべてを「質量」として使い、結晶の暴走を力技で抑え込むために、魂の全力で投擲した。

 

 ――ドォォォォォォォンッ!!

 

「……、……がはっ……!!」

 

 枢の目から翡翠の血がこぼれる。自身の存在を削り、道具へと変えることによる、魂の剥離。

 しかし、その激痛と引き換えに、白銀の結晶は、刺々しい狂気から、洗練された「翡翠の刃」へと変貌を遂げていく。

 

「逃げはしません。……老いも、死も、そしてこの代償さえも、すべては私が私であるための大切な記述です。……。神よ、私に腕を奪われた程度で立ち止まるとでも思いましたか。……。この結晶こそが、今日から私の『聖鍼』となるのです」

 

 三本目の最終鍼。結晶化した右腕を「不滅の経絡」として定着させ、失われた感覚を「神をも診る心眼」へと昇華するための、定礎鍼。

 

 枢は、自身の左手で、自身の結晶化した右腕の**『合谷ごうこく』**を、自身の自身の全生命を「結晶の真芯」へと叩き込むために、魂の拳で深く叩いた。

 

 ――キィィィィィィィィンッ!!

 

 地下書庫を包んでいた冷気が消え、そこにはただ、透き通るような翡翠の輝きを放つ、美しく、そして強靭な「右腕」を持つ枢が立っていた。

 枢は、一人の鍼灸師として、自身の肉体に刻まれた神の呪い――自己の崩壊を、自身の言葉と鍼で「最強の進化」へと変えてみせたのだ。

 

 次の瞬間。

 

 枢は、震える左手で、新しく手に入れた結晶の右腕を掲げ、かつてないほど鋭く、そして流暢な声で宣言した。

 

「ミナ。……見ていなさい。これが、私が私を診ることで得た、究極の治療結果です。……。さあ、地上へ戻りましょう。……。……世界を救うのは、それからでも遅くはありません」

 

 第294話。

 聖鍼師・枢は、代償によって結晶化した右腕を、自身の生命を削った流暢なる言霊と翡翠の極鍼で自己往診し、それを神をも穿つ「不滅の聖鍼」へと昇華させた。

 

 地下書庫を出る枢の足取りには、もう迷いはない。

 彼の右腕には、不完全な人間が神の理を越えるための、美しき反逆の光が宿っていた。

本日、土曜日12:00の更新を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第四章の第55話(通算第294話)。

ついに、くるるが「自分自身の崩壊」を往診しました。

少女を救った代償で失われかけた右腕。それを「失われた」と嘆くのではなく、自身の意志で「最強の道具」へと作り変えるという、枢の鋼のような精神性と鍼灸師としての極致を描きました。

右腕が結晶化したまま定着したことで、枢の力は物理的な「鍼」を必要としない、次元を超えたレベルへと到達した様子、感じ取っていただけたでしょうか。


今回、結晶化した肉体を再定義し、最強の聖鍼へと昇華させるために枢が駆使した「自己往診・鍼灸術」を解説します。

まず、体内の残された生命エネルギーを一箇所に集束させ、結晶化の進行を一時的に食い止めるための起点とした**『関元かんげん』**。下腹部にあるこのツボを刺激することで、枢は全身の「気」を右腕へと集中させ、代償との正面衝突に備えました。


そして、肘から先を蝕んでいた神の記述(白銀の結晶)に対し、自身の「人間としての意志」を直接叩き込み、不純物を排泄させるためのアンカーとした**『曲池きょくち』。肘の曲がり角にあるこのツボに対し、枢は自身の翡翠の気を「存在の楔」として打ち込むことで、肉体の主導権を力技で奪い返したのです。

最後に、結晶化した組織を自身の神経系と再統合し、失われた感覚を「情報の知覚」へと変換するための最終回路とした『合谷ごうこく』**。親指と人差し指の間にあるこのツボを介して、枢は自身の全生命を右腕へと流し込み、ただの岩塊を「神をも診る翡翠の腕」へと新生させたのでした。


次回の第295話(第四章 第56話)は、本日土曜日**【15:00】**に更新予定です。


自己治癒を終え、地上に戻った枢。しかし、王都の空には、枢の「右腕」に共鳴するように、七色の光を放つ巨大な「神の眼」が現れます。

それは、神の記述を盗み、自らを改造した枢を「異物」として排除しようとする、世界の免疫反応でした。

「……ミナ。……。……ちょうどいい。……。……この新しく手に入れた腕で、……。……空の眼差しを、……。……。……少しばかり矯正して差し上げましょう」


15時、午後の往診。天眼の外科往診。

聖鍼師・枢、空を往診します。どうぞお見逃しなく!

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