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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第一章:王都の毒を穿つ聖鍼】

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第27話:封鎖された下町と、枢の決断

お読みいただきありがとうございます!


封鎖された下町。そこでくるるを待っていたのは、かつての自分を壊した因縁の男、ガレオスでした。

身体が覚えている恐怖、そして現代の魂が抱く誇り。


二つの知性が混ざり合う時、聖鍼師の真価が発揮されます。

1日4回更新、パンデミック編・最高潮です!

 王都の北側に位置する「旧市街・下町地区」。

 かつて魔導産業の心臓部だったその場所は、今や毒々しい紫色の霧に包まれ、死の静寂に沈んでいた。


「……枢様、お待ちになって! この先は、すでに王宮騎士団によって完全に封鎖されていますわ」

 セレスティアラ王女が、行く手を阻む巨大な鉄柵を指差す。その先からは、もはや咳の音すら聞こえない。聞こえるのは、低く、重苦しい「装置」が唸るような、不気味な地響きだけだった。


「王女様、鼻を覆っていてください。ここは……気が完全に腐敗しています」

 くるるは躊躇いなく、魔法具のメスを取り出すと、鉄柵を固定していた魔力錠を、まるでツボを突くような正確さで一瞬にして切断した。


 足を踏み入れた下町。そこは、地獄のような光景だった。

 建物の壁面には紫色の結晶がびっしりとこびりつき、空気は吸い込むだけで喉が焼けるほど熱い。枢は翡翠眼を最大出力で稼働させ、霧の奥に眠る「脈動」を探った。

 その時。


 ――ドクンッ!


 枢の右手の指先が、激しく、意志に反して痙攣した。

(……なんだ? 私の魂は冷静だ。現代日本で数えきれないほどの死線を越えてきた私の心は、揺らいでいない。……だが、この『身体』が、奥底にある細胞が、恐怖で叫んでいるのか?)


 霧の向こうから、一人の人影がゆっくりと歩み寄ってきた。

 白い清潔なコート。肩にかけた、見覚えのある形状の往診バッグ。だが、その瞳には慈愛など微塵もなく、ただ冷徹な好奇心だけが渦巻いていた。


「……久しぶりだな、枢。いや、今は『王宮の聖鍼師様』だったか?」

 その声を聞いた瞬間、枢の脳裏に生々しい光景がフラッシュバックした。

 

 ――東方の学び舎の地下室。

 ――才能を、知識を、そして名誉を。

 ――すべてをこの男に盗まれ、笑いものにされた、若き日の『連城枢』の絶望。


「ガレオス……」

 枢の口から、憎悪の混じった名前が漏れる。それは、憑依した枢の魂のものではなく、この身体が刻んでいた執念だった。


「ほう、その冷めた目。かつての君なら、私を見るなり涙を流して許しを乞うたものだが。……随分と中身が入れ替わったようだな」

 ガレオスは枢の変貌に微かな違和感を覚えながらも、不敵な笑みを浮かべて両手を広げた。

「まあいい。君の変貌が、私の『新陳代謝』に耐えられるかどうか試させてもらおう。このパンデミックは、古く腐った肺胞(市民)を焼き切り、新しい魔導回路を植え付ける……究極の治療なのだから」


「治療……だと?」

「そうさ。街そのものを一つの大きな実験台とし、魔導炉を使って『強制的な進化』を促している。弱い民は死に、強き者だけが魔導の肉体を手に入れる。これこそが、医術の到達点だと思わないか?」


 ガレオスが指を鳴らすと、周囲の霧から数体の中毒患者たちが、自我を失った「魔導傀儡ゴーレム」となって枢たちを包囲した。

「さあ、見せてくれよ枢。君のその、時代遅れな『鍼』で、この巨大な『進化』を止められるのかをね」


 枢は静かに往診バッグを開け、一本の銀鍼を抜き放った。

 身体の記憶は、ガレオスへの恐怖で震えている。足が竦みそうになる。

 だが、現代日本で「不治の病」と戦い続けてきた枢の魂が、その震えを優しく、力強く包み込んだ。


(案ずるな、連城枢。お前が盗まれたのは、ただの知識だ。……今の私には、お前が見たこともない、数千年の歴史が積み上げた『知恵』がある)


 枢の翡翠眼が、かつてないほど鋭い「絶対零度の光」を放った。

「……ガレオス。お前は昔から、診断を間違える天才だったな」

「何だと?」


「お前のやっていることは、治療でも進化でもない。ただの『掃除の手抜き』だ。……汚染物質を流せず、溜め込んだ結果の便秘を、お前は進化と呼ぶのか?」


 枢が鍼を構える。その構えは、ガレオスが知る「東方の術」ではない。現代解剖学に基づいた無駄のない動き、そして異世界の魔力を「電気信号」として捉える、枢独自の境地。


「……王女様、私の背中をお願いします。……一秒で、全員の『詰まり』を解消します」

「……はい! 枢様、お任せくださいませ!」


 セレスティアラが魔導杖を構え、枢の周囲に黄金の結界を展開する。

 宿敵との再会。身体の記憶の克服。そして現代知識による圧倒的な解決。

 聖鍼師の「本気の往診」が、今、下町の闇を切り裂こうとしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


ブックマーク、そしてPVの激増……本当に励みになります!

ついに宿敵ガレオスとの対峙です。

元の『枢』が抱いていた劣等感を、現代の知識で塗り替えるシーン、書いていて熱が入りました。


「枢さん、指先の震えを抑えるところが最高にエモい!」

「ガレオス、やってることがえげつなすぎる……!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【ブックマーク】**で応援をよろしくお願いします!


次回、第28話は明日**【08:00】**に更新予定。

王都全域を「治療」する、枢の最大の一撃をお見逃しなく!

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