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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第249話:恩讐の銀鍼、師を越える「翡翠の真理」

お昼の更新。聖域の崩壊は、もはや誰にも止められない最終段階へと突入します。


第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第十話。


「パパ」の影を打ち砕き、右腕の支配権を完全に奪い返したくるる

しかし、虚無の淵から現れたのは、枢がこの世界で最も畏れ、そして最も愛した「師」の姿でした。


かつて枢に鍼の極意を授け、そして因果の波に消えたはずの老鍼師。

だが、その瞳に宿るのは慈愛ではなく、アルキメスのシステムに汚染された、冷徹な「殺意」だけ。


「……カカカッ、……弟子の分際で……世界を治そうなど……百年早いわ!!」


師匠が放つ、因果を腐敗させる「黒い連鍼」。

対する枢は、奪い返した「翡翠の力」で、師匠という名の巨大な壁に挑みます。

師を越えなければ、世界は救えない。

聖鍼師・枢、涙を捨てた「恩返し」の無双。


どうぞ、最後までその目に焼き付けてください。

 聖域の最深部を覆っていた霧が、黒い雷鳴と共に弾け飛んだ。

 くるるの心眼が捉えたのは、崩壊する時空の狭間から、ゆっくりと這い出してくる「一つの小さな影」だった。

 

 その影が発する気配は、枢の魂に深く刻み込まれた、あの「枯れた木の枝」のような、しかし鉄の如き意志を秘めた神気。

 

「……その……声……。……まさか、……師匠……なのですか……?」

 

 枢の喉が、熱く焼ける。

 現れたのは、ボロを纏い、背中を丸めた一人の老人だった。

 だが、その手首から先は、無数の黒い触手のような鍼が蠢き、彼の存在そのものが「死の因果」の塊と化している。

 

 かつて枢に、鍼は「救い」であると説いた男。

 だが、今の老人は、アルキメスの深淵によって再記述された、聖域の最終防衛システム――『因果の解体師』へと成り果てていた。

 

「……くるるよ。……お前が……治した……この世界。……結局、……お前の名前を……忘れたではないか。……そんな……虚しい因果……私が……すべて……腐らせてやるわい!!」

 

 老人が、その黒い右手を一閃させた。

 

 ――ヒュッ、……ヒュヒュヒュヒュッ!!

 

 放たれたのは、因果を直接腐敗させる「黒い銀鍼」の豪雨。

 一本でも掠れば、肉体どころか魂の記述さえもドロドロに溶け落ちる、死の連撃。

 

 枢は、自身の左手で、自身の喉にある**『廉泉れんせん』**を、自身の震える声を殺すために強く突いた。

 

「……師匠。……私は、……名前のために……鍼を振るっているのではありません。……私は……」

 

 枢は、右腕の翡翠の力を、指先へと一点に集中させた。

 

 彼は、飛来する数千の黒い鍼に対し、一歩も引かずに「翡翠の長鍼」を一本、空へと突き出した。

 

 ――キィィィィィィンッ!!

 

 枢の鍼から放たれた翡翠の波動が、空中で幾重にも重なる「防壁バリア」となり、黒い鍼を一撃ごとに「無効化」していく。

 衝突するたびに、因果の記述が火花を散らし、聖域の床が激しく爆散する。

 

「……ほう、……受け切るか!! ……ならば、……これならば……どうじゃ!!」

 

 老人が跳躍した。

 老体とは思えぬ俊敏な動きで、枢の背後へと回り込む。

 

 枢の心眼が、老人の指先が狙っている場所を即座に看破した。

 

 ――『大椎だいつい』。

 首の付け根にある、全身の陽の気が集まる要衝。

 そこを黒い鍼で貫かれれば、枢の翡翠の力は一瞬で逆流し、自壊バーストする。

 

「……そこは、……教わった……通りですね」

 

 枢は、自身の体を捻り、紙一重で老人の一撃を回避した。

 と同時に、彼は自身の右指を、老人の右腕にある**『曲池きょくち』**へと滑り込ませた。

 

 ――チリッ……!!

 

「……ぬぅっ!? ……我が……気の巡りを……止めおったか……!!」

 

「……師匠。……あなたは、……もう……休まなければなりません」

 

 枢の瞳から、一筋の涙が溢れ、翡翠の光の中に消える。

 

 枢は、自身の左手で、自身の胸にある**『神封しんぽう』**を、自身の魂を封印するほどの覚悟を持って強く圧迫した。

 

 全身から、溢れ出すほどの翡翠の光。

 枢は、自身の右手に挟んだ七本の鍼を、北斗七星の形に構えた。

 

「……聖鍼法、……師弟清算・『翡翠・涅槃寂静ニルヴァーナ・リライト』」

 

 枢が動いた。

 

 老人の黒い鍼が、枢の肉体を何箇所も貫く。

 だが、枢は止まらない。

 痛みも、絶望も、忘却の悲しみも、すべてを翡翠の熱量に変えて。

 

 枢の七本の鍼が、老人の肉体にある七つの主要な「因果の核」――経絡の要を、同時に射抜いた。

 

 ――ドォォォォォォォォンッ!!

 

 老人の肉体から、黒い泥のような呪いが噴き出し、それを枢の翡翠の光が、純粋な「温かな記憶」へと変換していく。

 

「……あ、……あぁ……。……暖かい……な……。……枢、……お前は……やはり……ワシの……自慢の……弟子じゃ……」

 

 老人の瞳に、一瞬だけ、かつての慈愛が戻った。

 呪いが解け、老人の肉体は柔らかな光の粒子となって、枢の腕の中で崩れ去っていった。

 

 圧倒的な、そして最も悲しい、無双。

 枢は、自身の師を、自身の技術で「治療」し、永遠の眠りへと送った。

 

 枢は、自身の左手で、自身の腹部にある**『気海きかい』**を、自身の消えゆく生命力を繋ぎ止めるために突いた。

 

 聖域の崩壊は、もはや止まらない。

 

 だが、枢は立ち上がる。

 師の想いをその右腕に宿し、彼はついに、アルキメスの深淵――少年の「パパ」の本体へと、最後の一歩を踏み出した。

本日もお昼の更新を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第四章の第十話。

かつての師匠との、哀しき師弟対決。

呪いによってシステムの歯車にされた師を、枢は自身の翡翠の力で「救済(解体)」しました。

自分の師を手にかけなければならない絶望。しかし、その技術こそが師から授かったものであるという皮肉。

聖鍼師・くるるの背負う業の深さを、濃厚に描き切りました。


今回、枢が駆使したツボの攻防ですが、まさに「教え」を越えるためのものでした。

まず、師匠の黒い鍼を食らいながらも、自身の声を殺し、覚悟を固めるために突いた**『廉泉れんせん』**。ここは舌や喉の不調を整える場所ですが、枢はここを「感情の封印」として使用しました。


そして、物語のクライマックスで師匠を浄化するために、自身の魂を賭して突いた**『神封しんぽう』。胸の痛みや不安を和らげるこのツボを、枢は「自身の存在をこの世界に繋ぎ止めるための核」として定義し、全出力を解放しました。

最後に、師を看取った後に自身の消えゆく生命力を繋ぎ止めるために突いた『気海きかい』**。まさに「気の海」と呼ばれるこの場所を突くことで、枢は文字通り「死の淵」から這い上がり、次なる戦いへの活路を見出したのです。


次回の第250話は、本日夕方**【18:00】**に更新予定です。


師匠を失った枢の前に、ついに「少年のパパ」がその姿を現します。

それは、かつての王都を滅ぼし、そして枢の名前を奪った、この世界の「記述者」そのもの。

「……素晴らしい。……師を殺し、……己を消してまで……この物語に……抗うか」


18時、ついに物語は「神との決戦」へ。

翡翠の一鍼が、世界の終焉を書き換えます。どうぞ、お見逃しなく!

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