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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第三章:異界の病根と共鳴する銀鍼】

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第229話:鉄槌の騎士と「異端」の共闘

本日、2回目の更新をお読みいただき、誠にありがとうございます。


世界の「自動修正機能」である銀の騎士たちに包囲されたくるる

右腕に宿る「絶望の毒」を武器に変え、辛うじて一体を退けたものの、その負荷は彼の細い肉体を内側から破壊し始めていました。


「……エラー排除、……優先度『極大』に移行。……排除を開始せよ」


無慈悲に振り下ろされる銀の剣。

絶体絶命のその瞬間、戦場を真っ二つに切り裂く「正義の鉄槌」が響き渡ります。


「――やれやれ、不自由な体で無理をするなと言ったはずだぞ、鍼灸師」


現れたのは、かつて王都で対立し、今は「新政府」の治安維持を担うあの男。

そして、彼が連れてきた「意外な協力者」とは。


奇跡なき時代に、人間の知恵と意志が結集する。

第229話、激動の共闘劇をお楽しみください。

 アザレアの村の広場は、今や現実と虚構が混ざり合う、異様な「手術室」と化していた。


 銀の騎士たちの剣が振るわれるたびに、大気の層が薄く削り取られ、そこにあったはずの風景が、色のない白紙へと書き換えられていく。

 くるるは、自身の右腕から溢れ出す「どす黒い気」を必死に抑え込みながら、次の一手を模索していた。


「……排除、……開始……」


 三体の銀の騎士が、同時に跳躍した。

 死角からの同時攻撃。

 右腕の感覚を失っている枢にとって、それを回避する術はない。


 だが、その刃が枢の肌に触れる寸前。

 頭上から、落雷のような咆哮が降り注いだ。

「――『天秤の裁き』を受けろッ!!!」


 轟音。

 銀の騎士たちの中央に、巨大な「鉄の棍棒」が突き刺さった。

 衝撃波だけで騎士たちの姿勢を崩し、その不自然な透明な体を、物理的な圧力で押し潰す。


「……この声は、……」

 枢が目を見開く。


 土煙の中から現れたのは、重厚な鎧に身を包んだ、王都守備隊の元隊長――レオナードだった。

 かつてアルキメスの「正義」に従い枢を追いつめた男は、今、自らの意志でその巨大な武器を振るっている。


「……レオナードさん。……なぜ、ここに……」


「……サロメお嬢様からの伝令だ。……『不器用な先生が、また自分を犠牲にしようとしている』とな。……やれやれ、全くその通りだ。……顔色が死人よりも酷いぞ、枢」


 レオナードが、背中で枢を庇うように立ち塞がる。

 その隣には、さらにもう一人の影があった。

 修道服を翻し、手にした経典を不気味に発光させているのは、かつてアルキメスの側近でありながら、最後には枢に手を貸した「裏切りの聖女」ベアトリスだった。


「……お久しぶりですね、枢先生。……不浄な因果を……その腕に溜め込むなど、……相変わらず……狂気じみた治療を続けておられるようで」


「……ベアトリスさんまで。……しかし、……彼らは……物理的な力では……」


「……分かっております。……だからこそ、……教団の『禁忌図書』を持ち出してきました。……設定を消去する力が『消しゴム』なら、……私たちは……その上から……『上書き』のインクを塗ればいい」


 ベアトリスが経典を開き、高らかに詠唱を開始した。

 彼女の周囲に、黄金の輝きとは異なる、鈍い、しかし強固な「人間の祈り」の気が渦巻き始める。


「……カザン! 骸! ……奴らの『核』は、胸の瞳の紋様だ! ……レオナード殿が姿勢を崩し、……私が因果の防御を剥ぐ! ……トドメはお前たちに任せたぞ!!」


「……ケッ、……王都のカタブツに指図されるのは癪だが……背に腹は代えられねえな!!」

 カザンが紅蓮槍を回転させ、地を蹴った。


 乱戦が始まる。

 レオナードの鉄槌が銀の騎士の盾を砕き、ベアトリスの術式が彼らの存在確率を「固定」する。

 実体化した騎士たちの胸元を、カザンの槍と骸の義手が、正確に撃ち抜いていく。

 枢は、その激しい戦いの中で、自身の内側を診ていた。

 

 右腕の腫れは限界に達している。

 アルキメスの絶望という「劇薬」は、今や枢の心臓へと続く経絡を侵食し始めていた。

 

「……っ、……まだ、……まだ倒れるわけには……いかない」


 枢は、左手で自身の腹部――**『天枢てんすう』**を強く突いた。

 天の軸を意味するこのツボは、消化器の調整だけでなく、体内の「淀んだ気」を強制的に排泄させるためのスイッチでもある。


 さらに、足首にある**『太谿たいけい』**。

 生命力の源である「腎」の気を呼び起こし、枯れかけた経絡に無理やり潤いをもたらす。


「……ふ、……ぅ……。……せいやッ!!!」


 枢は、自らの血を吐き出しながら、一本の銀鍼を自身の喉元――**『天突てんとつ』**に刺し込んだ。

 それは、声帯や呼吸を整えるための処置ではない。

 外部から迫り来る「世界の否定(白化)」に対する、枢なりの「反論アンサー」を形にするための荒療治だった。


「……レオナードさん、……ベアトリスさん! ……騎士たちの動きが……鈍りました。……今です、……彼らの『因果の糸』が……一箇所に集まりつつあります!!」


 枢の叫びに、共闘する三人が同時に動いた。

 騎士たちが倒れ、消える際に放つ「未練の気」が、広場の中央で巨大な渦を形成している。

 そこには、かつてアルキメスが書き損じ、捨て去った「名もなき数万の没案」たちの怨嗟が凝縮されていた。


 世界の修正機能の正体は、神に捨てられた物語たちの、成仏できぬ「嘆き」そのものだったのだ。


「……枢先生、……あれを消し去ることは……私たちにはできません! ……あまりにも……負のエネルギーが……巨大すぎます!!」

 ベアトリスが、防御壁を維持しながら悲鳴を上げる。


「……いいえ、……消し去る必要はありません」

 枢が、一歩、また一歩と、因果の渦へと近づいていく。


「……彼らもまた、……治療を待っている……『患者』に過ぎません。……私が、……引き受けます」


「……枢、……貴様ッ、……何を言っている!? ……あんなものを飲み込めば、……お前の魂ごと……白紙に……!!」

 レオナードの制止の声。


 だが、枢は止まらなかった。

 彼は、三角巾を投げ捨て、包帯にまみれた、しかし不気味に脈動する右腕を、因果の渦の中へと突き立てた。


 その指先が狙うのは、渦の中心――『神闕しんけつ』。

 世界の「へそ」とも呼べるその一点。


 第229話。

 黄金を失った右腕が、今、万人の絶望と繋がった。

 一人の鍼灸師が、世界の「痛み」を肩代わりするための、無謀なる往診が最高潮を迎える。

4月4日(土)、10:00。

本日2回目の更新をお読みいただき、本当にありがとうございました。


レオナード、そしてベアトリスの参戦。

王都で敵味方として戦った者たちが、今、一つの目的のために手を取り合う熱い展開となりました。


しかし、枢が選んだのは「敵を倒す」ことではなく、その「絶望を飲み込む」という、あまりにも過酷な医師の道でした。

万人の嘆きをその右腕に宿し、枢の肉体はどうなってしまうのか。


次回、第230話は本日**【12:00】**に更新予定です。


因果の渦を飲み込んだ枢の右腕が、異形の変貌を遂げます。

聖鍼師でもなく、ただの人間でもない、「救済の怪物」の誕生。


本日中盤戦、さらにアクセルを踏んでお届けします。

引き続き、お楽しみください!

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