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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第三章:異界の病根と共鳴する銀鍼】

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第228話:夜明けの粛清者、因果の「自動修正」

本日も朝早くからお読みいただき、誠にありがとうございます。


ついに始まりました、怒涛の土日ブースト更新。

本日は一日に6回、この深淵なる物語の結末へと続く、濃密な時間をお届けします。


少女の墓石に鉄鍼を打ち込み、物語の「初期設定」を書き換えたくるる

右腕の痣はさらに濃く、激痛は引くことを知りませんが、村には再び「色」が戻り始めていました。


しかし、夜明けと共に現れたのは、教団でも王都軍でもない、異様な集団。

「……設定が書き換えられた。……不純物ノイズを除去し、再フォーマットを開始せよ」


黄金を失った枢の前に立ちはだかる、世界の「自動修正機能」という名の怪物。

奇跡なき右腕で、枢は再びその指先を研ぎ澄ませます。

 アザレアの村に、本当の意味での「朝」が訪れようとしていた。

 東の空が白み始め、昨夜まで村を覆っていた不気味な白い粉――「消しゴムの雪」は、跡形もなく消え去っている。


 村人たちは一人、また一人と家の外へ出始め、自分たちの肌に色が戻り、思い出が確かな感触を伴って胸に刻まれていることに涙していた。


「……枢、……顔色が最悪だぜ」

 むくろが、自身の漆黒の義手を点検しながら、隣で肩を貸しているくるるを横目で見た。

 

 枢の右腕は、昨夜の無理な「再記述リライト」の代償で、パンパンに腫れ上がっている。

 包帯の上からでも分かるほどに熱を持ち、痣は肘を越え、肩口まで這い上がろうとしていた。

 黄金の守りがない肉体にとって、因果の激流を直接肌で受けることは、文字通り命を削る行為に他ならなかった。


「……ええ。……ですが、……村の気の流れは……正常に戻りました。……あとは、……私の右腕が……この熱に耐えてくれれば……」


 枢が、震える左手で、自身の右肩にある経穴――**『肩髃けんぐう』**を強く圧迫した。

 溢れ出そうとする熱を、解熱を司るこのツボで必死に抑え込もうとする。

 しかし、その指先さえも、自身の内側から突き上げてくる「怨嗟の拍動」に弾き飛ばされそうになっていた。


「――ターゲット、……確定。……因果の矛盾点バグを……視認した」

 不意に、村の入り口から、感情の欠落した「機械的」な声が響いた。


 カザンが瞬時に紅蓮槍を構え、村の広場へと躍り出る。

 霧の向こうから現れたのは、全身を銀色の甲冑で包んだ、顔のない騎士たちだった。

 彼らの鎧には、教団の紋章も、どこの国の紋章も刻まれていない。

 ただ、胸の中央に、巨大な「瞳」のような紋様が刻まれている。


「……なんだ、……こいつら。……人間じゃねえな……?」

 カザンが低く唸る。

 騎士たちの歩みには足音がなく、その存在感は、現実というよりは「映像」に近い、不自然な透明感を帯びていた。


「……彼らは、……世界の『免疫細胞』です」

 枢が、苦しげに息を吐きながら言った。


「……アルキメスが……遺した、……自動修正システム。……彼が死ぬか……力を失った時、……物語に生じた……致命的な矛盾エラーを消去するために……起動するように……組まれていたのでしょう」


 銀の騎士たちが、一斉に無機質な剣を抜いた。

 その剣身には、文字が刻まれている。

 『Delete(消去)』、『Clear(初期化)』。


「……ふん、……小難しい理屈は……どうでもいい。……要は、……せっかく救ったこの村を……また消しに来たってわけだろ?」

 骸が、漆黒の義手の出力を最大まで上げた。

 バチバチと黒い放電が飛び、彼の周囲の地面が、死の気によって黒く変色していく。


「……枢。……お前は……下がってろ。……こいつらは……俺たちの仕事だ」


「……いいえ、……骸。……彼らは……物質的な存在ではありません。……彼らを……力で斬っても、……因果のコードが……残っている限り……無限に再生します」


 枢は、骸の手を制し、ふらつく足取りで一歩前へ出た。

 

 右腕は、もはや感覚を失いつつある。

 だが、枢はその右腕の包帯を、自らの歯で噛んで引きちぎった。

 

 現れたのは、黄金の紋章を失い、代わりに「アルキメスの絶望」が黒い網目のように広がる、無残な右腕。

 

「……診せて、……ください。……世界の……修正プログラムの……『弱点』を」

 枢の翡翠眼が、銀の騎士たちの足元へと注がれた。

 彼らの影は存在しない。代わりに、地面から空中に向かって、無数の細い「糸」が繋がっているのが見える。

 それは、この世界の根源から供給される因果のライン。

 騎士の一人が、音もなく跳躍した。

 巨大な剣が、枢の脳天を目がけて振り下ろされる。


「――枢ッ!!!」

 カザンの叫び。

 だが、枢は動かなかった。

 いや、動けなかった。

 

 剣が枢の額を割り裂く、その数ミリ前。

 枢の右腕が、自らの意志を無視して、爆発的な速さで動いた。

 

 震える右手。

 握られていたのは、一本の短い鉄鍼。

 

 枢は、迫りくる騎士の喉元――ではなく、その背後にある「空間の揺らぎ」を突いた。

 

 そこは、この自動修正システムにおける、エネルギーの分配点――『天柱てんちゅう』。

 天を支える柱を意味するそのツボを、枢は己の右腕に溜まった「毒」を込めて、一気に貫いた。

 ――バリンッ!!!!!

 空間が、硝子が割れるような音を立てて砕けた。

 

 銀の騎士の姿が、一瞬で砂のように崩れ、空中に霧散していく。

 

「……っ、……はぁ、……はぁ……!!!」

 

 枢の口から、鮮血が溢れた。

 今の自身が放ったのは、医療の鍼ではない。

 己の中に溜まった「没案」という名のウイルスを、システムの脆弱性に叩き込む、文字通りの「毒の一撃」だ。

「……因果の……逆流を……検知。……修正プロセスに……障害発生。……全リソースを……障害除去に……投入せよ」

 残りの騎士たちが、その無機質な瞳を、一斉に枢へと向けた。

 

 村全体が、不気味に震え始める。

 世界が、枢という「バグ」を排除するために、その全質量を傾けてきたのだ。

「……上等だ。……まとめて、……往診してやりますよ……!!」

 枢は、震える右手で、自身の左胸にある**『神門しんもん』**に鍼を打ち込んだ。

 自身の精神の門を強制的に開き、限界を超えた気を右腕へと注ぎ込む。

 

 第228話。

 黄金の輝きは失われた。

 しかし、暗闇の中でこそ冴え渡る、執念の「翡翠」がそこにあった。

 

 世界の理を相手に、一人の鍼灸師が、命を賭した再記述リライトの第2戦を開始する。

4月4日(土)、08:00。

本日最初の更新をお読みいただき、誠にありがとうございました。


黄金を失った枢が手に入れたのは、かつての宿敵から引き継いだ「絶望の毒」を武器にするという、あまりに危うい新境地でした。


世界の自動修正機能との戦い。

奇跡なき今、枢にできるのは、己の肉体を「触媒」にして世界の歪みを飲み込むことだけ。


次回、第229話は本日**【10:00】**に更新予定です。


次々と現れる銀の騎士たち。

窮地に陥った枢の前に、かつて王都で別れた「あの人物」が、意外な助っ人を連れて現れます。


本日は一日、この激動の物語にお付き合いいただければ幸いです。

次回も、圧倒的熱量でお届けします!

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