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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第三章:異界の病根と共鳴する銀鍼】

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第215話:因果の断筆、黄金の腕を屠る一鍼

3月31日、21:00。本日最終、第三章・後編【因果の深淵編】第4回の更新をお読みいただきありがとうございます。


「……完璧な物語だと? ……ふざけるな。……人の命は、……あんたのインクで汚されるためにあるんじゃない!!」


アルキメスが空中に描く「文字」が、世界の理を物理的に書き換えていく中、くるるは自身の黄金の右腕を見つめます。

命を救うための右腕が、世界を終わらせるための道具に変わろうとしている。


むくろの制止を振り切り、枢が放ったのは、己の肉体を「毒」に変える、聖鍼師としての禁じ手。


「……骸、……私の背中を預けます。……一瞬だけ、……神の筆を止めます!!」


黄金の輝きが、漆黒の絶望と混ざり合い、深淵に「未知の因果」が生まれます。

聖鍼師の逆襲、その第一歩。

 地下空洞の天井から降り注ぐのは、光ではなく、ドロドロとした黒い「インク」であった。

 アルキメスが持つ巨大な筆――『虚構のフィクション・ペン』が空間を薙ぐたび、そこに「死」という文字が刻まれ、触れた岩石や翡翠の結晶が、一瞬にして風化し、崩れ去っていく。


「……これが、……世界の理を書き換える力……」

 

 くるるは、自身の黄金の右腕が、アルキメスの筆の動きに呼応して激しく脈動するのを感じていた。

 右腕に刻まれた黄金の紋章が、まるで磁石のように、アルキメスの放つ黒いインクを引き寄せようとしている。

 アルキメスは、枢の右腕を「中継地点」にして、翡翠の心臓に溜まった膨大な因果を、自分の望むままに「記述」しようとしていた。


「……無駄だよ、枢。……君の右腕は、……既に私の『物語』の第一章として組み込まれている。……君がどれほど抵抗しようと、……その腕が動くたび、……世界は少しずつ、……美しく滅んでいくのさ」

 

 アルキメスが、不敵な笑みを浮かべて筆を突き出した。

 虚空に描かれたのは、**『停止』**の二文字。

 

 ――ズゥゥゥゥゥン……ッ!!!

 

 枢とむくろの心臓が、一瞬、無理やり握りつぶされたかのように停止した。

 血液の流れが止まり、肺が空気を拒絶する。

 物理法則さえも無視した、文字通りの「強制的な物語の進行」。


「……が、……あ、……は……ッ!!」

 

 膝を突く枢。

 骸もまた、漆黒の義手を自身の胸に突き立て、強引に気の流れを再起動させようとするが、アルキメスの描く「文字」の圧力に、指一本動かすことができない。


「……これが、……神を名乗る者の、……やり方か……ッ!!!」

 

 骸が、血を吐きながら叫んだ。

 

「……神じゃない。……私はただの『編纂者』だ。……乱雑に散らばった人々の人生を、……整然とした美しい悲劇へと整えてあげているだけだよ。……さあ、枢。……君の右腕をこちらへ。……この心臓の血(因果)を使い、……世界全土を染め上げる、……最終章を書き始めよう」

 

 アルキメスの筆先から、漆黒の因果が糸のように伸び、枢の黄金の腕へと絡みつこうとした、その時。


「……いいえ、……それは……させません」

 

 枢が、震える左手で、自身の往診鞄から「紅蓮の刺鍼ぐれんのししん」を取り出した。

 それは、第2章の最後で、不治の病に冒された魔獣を安楽死させるために一度だけ使った、気の流れを「逆流」させるための禁断の鍼。

 

「……枢!? ……おい、……何を……!!」

 

「……骸、……私を信じてください。……私は、……この腕を『ペン』にはさせない!!」

 

 枢は、自身の黄金の右腕の付け根にある**『極泉きょくせん』**――因果が心臓から流れ込んでくる最重要の関所に、自ら紅蓮の鍼を突き立てた。

 

 ――ドォォォォォォォォォォォォンッ!!!

 

 枢の右腕の中で、黄金の気と紅蓮の気が正面から衝突した。

 紋章の幾何学模様が激しく明滅し、アルキメスへと伸びていた因果の糸が、バチンと音を立てて弾け飛ぶ。


「……何だと……!? ……自らの経絡を爆破して、……因果の流れを遮断したのか……!?」

 

 アルキメスの余裕に満ちた表情が、初めて驚愕に染まった。

 

「……ぐ、……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

 枢の右腕から、黄金の血が噴き出す。

 痛みで意識が飛びそうになるが、彼は止まらない。

 逆流した因果のエネルギーを、そのまま黄金の腕の「指先」へと集中させる。

 

「……アルキメス!! ……あんたが、……世界を『書く』って言うなら……、……私は、……その文字を……『消す』ために鍼を打つ!!」

 

 枢が、黄金に輝く右腕を、無理やりアルキメスへと突き出した。

 右腕そのものが一本の巨大な鍼となり、アルキメスが描いた『停止』の文字を、物理的に粉砕した。

 

 呪縛が解け、自由を取り戻した骸が、影から躍り出る。

 

「……よくやった、枢ッ!! ……そのツケは、……俺がキッチリ払わせてやるぜ!!!」

 

 骸の漆黒の義手が、枢の黄金の気と共鳴し、巨大な「黒銀の刃」へと変貌した。

 

 ――シュパァァァァァァァァァァンッ!!!

 

 アルキメスの『虚構の筆』の半分が、骸の一撃によって切り落とされた。

 地下空洞に、アルキメスの怒りと困惑の叫びが響き渡る。


「……あ、……私の筆が……。……私の、……完璧な物語が……!!」


「……完璧な物語なんて、……どこにもありません!! ……人の命は、……書き直したり、……修正したりできないから……尊いんです!!」

 

 枢が、ボロボロになった右腕を抱えながら、アルキメスを鋭く指差した。

 

「……アルキメス。……あんたを、……今ここで……『歴史の病根』として……切除します!!」

 

 第215話。

 黄金の腕を犠牲にして掴んだ、反撃の糸口。

 枢と骸、二人の鍼灸師の「共鳴」が、神の筋書きを、今この瞬間、完全に破壊した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


3月31日(火)、本日の最終更新をお届けいたしました。

自らの右腕を犠牲にしてまで、アルキメスの「筆」を止めた枢の決断。

「物語を書き換える神」に対し、「文字を消す鍼」で立ち向かう……。

聖鍼師としての意地が、絶望的な状況を覆しました。


ですが、アルキメスもまた、これで終わる男ではありません。

折れた筆を捨て、彼は自身の肉体そのものを「因果のインク」へと変え、最終形態へと移行します。


平日の4回更新、明日も全力で執筆してまいります。


本日も、一日の長丁場、本当にお疲れ様でした!

明日の朝、またこの深淵の戦場でお会いしましょう!

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