第21話:海域からの使者と、奪われた歌声
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魔王の次は、海の底からのSOS!?
歌声を失った人魚の姫を救うため、枢は前代未聞の「深海往診」を決意します。
ついに王宮を飛び出す聖鍼師。
待ち受けるのは、神秘の海か、それとも古の呪いか――。
魔王を寝かしつけ、王女との穏やかな休日を過ごした枢のもとに、今度は「潮の香り」が届いた。
王宮の謁見の間に現れたのは、下半身が鮮やかな鱗に覆われた、美しい二人の人魚。彼女たちは、巨大な水槽のような魔法の天蓋付き馬車に乗って、遥か遠い『碧海領』からやってきたという。
「……どうか、我らが姫をお救いください、聖鍼師殿」
人魚の衛兵が、悲痛な面持ちで頭を下げる。
水槽の奥に座る少女――人魚族の第一王女、ミーナ。彼女は、かつてその歌声一つで荒れ狂う海を鎮めたと言われる伝説の歌い手だ。だが、今の彼女は喉元を押さえ、苦しげに喘ぐばかりで、一言も発することができない。
「……診せなさい」
枢が水槽の縁に寄り添う。翡翠眼を凝らすと、彼女の喉の奥に、不気味に脈動する「黒い棘」のようなものが視えた。
「これは……ただの炎症ではありませんね。深海の底に澱む、古の呪魔力……それが喉の経絡に直接突き刺さっている。東洋医学で言う『梅核気』の最悪な形だ。何かが喉に詰まっているような違和感、そして激痛……相当苦しいはずです」
「な、治せるのですか……?」
「地上では無理です。……この呪いの棘は、周囲の魔圧が高まれば高まるほど実体化し、引き抜きやすくなる。つまり、彼女が本来住んでいる『深海』の圧力下でなければ、鍼が届かない」
枢の言葉に、謁見の間が凍りついた。
それは、枢が地上を離れ、人族の踏み込めない深海へ行かなければならないことを意味していたからだ。
「……枢様、なりませんわ!」
セレスティアラ王女が割って入る。
「人魚の国は、水圧と魔力の渦巻く地。人間が行けば、一瞬で圧し潰されてしまいます!」
「……そうですね。ですが、このままでは彼女の喉は腐り、二度と歌えなくなる。……助手、君に一つ聞きたい。患者が目の前で苦しんでいる時、鍼灸師が考えるべきは自分の安全ですか? それとも、治療法ですか?」
「そ、それは……っ」
枢は往診バッグを肩にかけ、人魚の衛兵たちに向き直った。
「準備をしてください。深海への往診、引き受けます。……ただし、私の肺が潰れないよう、最高級の加圧魔法をかけてもらうことが条件です」
王女の静止を振り切り、枢は人魚たちの馬車へと乗り込む。
それは、隠居生活を送るはずだった聖鍼師が、初めて「未知の領域」へと自ら踏み出す、波乱の新章の幕開けだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ついにストーリーが大きく動き出しました!
喉の詰まり感を示す『梅核気』。ストレス社会の現代でも多い症状ですが、人魚の姫様の場合は「呪い」として現れてしまったようです。
今回は前後編にとどまらず、数話にわたる『深海編』としてお届けします。
「枢さん、ついに海へ!」
「王女様、置いていかれて大丈夫!?」
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ブクマが増えると、枢の「水中用鍼技」がパワーアップします(笑)。
次回、第22話は本日**【18:00】**に更新予定。
潜入、深海都市! そこで枢を待ち受けていたのは、歓迎ではなく「反逆」の刃だった!?




