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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第三章:異界の病根と共鳴する銀鍼】

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第208話:王都外門、氷炎の死闘と守護者の誓い

3月30日、08:00。第三章・中編の開幕をお読みいただきありがとうございます。


くるるが王都の深部へと消えてから数時間。

王都外門「天の逆鉾あめのさかほこ」の前には、編纂者たちが召喚した数千の「結晶兵団」が押し寄せていました。


「……枢、……後ろは気にするな。……この門は、……俺の槍が一本も通さねえ!!」


咆哮するカザン。

その隣で、絶対零度の吹雪を纏い、冷静に扇を翻すサロメ。


「……ふふ、……暑苦しい殿方ですわね。……ですが、……わたくしの氷を砕くほど、……敵軍も甘くはありませんわよ」


聖鍼師の背中を守るために、二人の武人が見せた「限界突破」の戦い。

枢視点では語られなかった、血と汗と魔法の記録が、今明かされます。

 王都の外郭門「天の逆鉾あめのさかほこ」は、かつて建国初期の英雄たちが精霊の加護を受けて築いたとされる、難攻不落の要塞であった。

 だが今、その白亜の門は、不気味に脈動する翡翠の結晶に侵食され、異界の化け物たちを呼び込む「歪んだ入り口」と化していた。


「……ギギギギギッ……!!」

 空間の裂け目から這い出してくるのは、人でも魔獣でもない。

 編纂者たちが因果の廃液を流し込み、無理やり兵器へと変えた「結晶の亡者」――数千に及ぶ結晶兵団クリスタル・レギオンであった。


「……へっ、……ぞろぞろと湧いてきやがって。……掃除のしがいがあるぜ!!」

 カザンが、愛槍の柄をバキリと鳴らして前に出た。

 彼の全身からは、燃え盛るような紅蓮の闘気が立ち昇り、周囲の空気を歪めている。


「……カザン殿、……あまり突出してはなりませんわ。……敵の狙いは、……わたくしたちを消耗させ、……枢先生の元へ増援を送ることですもの」

 サロメが、優雅に扇子を翻しながら、カザンの数歩後ろに陣取った。

 彼女の足元からは、触れたもの全てを凍てつかせる白銀の霜が広がり、押し寄せる兵団の最前列を、一瞬にして氷像へと変えていく。


「……分かってらぁ!! ……だがな、サロメ!! ……あいつが中で命を削って鍼を打ってんだ。……外を守る俺たちが、……ちまちまと守りに入っててどうする!!」


 カザンが地面を蹴った。

 重厚な鎧を纏っているとは思えない速さで、結晶兵団の渦中へと飛び込む。

 

「……火龍かりゅう旋回破せんかいはッ!!!」


 一閃。

 紅蓮の炎を纏った槍の穂先が、十数体の結晶兵を一度に薙ぎ払った。

 砕け散る翡翠の破片が、カザンの頬を掠めて血を飛ばすが、彼は止まらない。

 

 その時、兵団の奥から巨大な「結晶の巨神ゴーレム」が姿を現した。

 高さ十メートルを超えるその巨躯は、王都の地下から吸い上げた因果のエネルギーを凝縮しており、その一足ごとに大地が悲鳴を上げて陥没していく。


「……おっと、……大物が来やがったな」

 カザンが槍を構え直すが、その額には大粒の汗が流れていた。

 枢と共に連戦を潜り抜けてきた彼の肉体も、実際には限界に近い。


「……下がって、カザン殿!! ……ここは、……わたくしの『氷の墓標』で眠らせて差し上げますわ!!」

 サロメが扇子を空へ放り投げ、両手を複雑な印に組んだ。

 彼女の翡翠色の瞳が、魔力の高まりと共に白銀へと変色していく。


「……極北の魔導、……第十二奥義――『零度れいど処刑場エグゼキューション』!!!」


 サロメの叫びと共に、王都外門の広場全体が、一瞬にして絶対零度の世界へと変貌した。

 降り注ぐのは雪ではなく、空間そのものを凍らせる「因果の氷」。

 結晶の巨神の動きが、足元から徐々に、しかし確実に停止していく。

 

 だが、巨神もまた編纂者たちの意志を宿した兵器。

 停止を拒むように、胸のコアから強烈な黄金の熱線を放ち、サロメの氷を内側から爆破し始めた。


「……くっ、……あ、……あぁッ……!!」

 魔力の逆流を受け、サロメが膝を突く。

 

「……サロメ!!」

 カザンが駆け寄り、彼女の前に盾となって立ち塞がった。

 巨神の放つ熱線がカザンの肩を焼き、革の防具が焦げる嫌な臭いが漂う。


「……カザン殿、……なぜ……。……わたくしを置いて、……逃げればよいものを……」


「……バカ言うんじゃねえ。……枢に、……『女一人守れずに戻ってきました』なんて、……恥ずかしくて言えるかよ!!」

 カザンは、焼けた肩の痛みを気合でねじ伏せ、再び槍を握り直した。


「……サロメ、……あんたの魔法で、……奴の右足を一瞬だけ固めてくれ。……そこに、……俺の全闘気を叩き込む!!」


「……無茶ですわ……。……そんなことをすれば、……あなたの腕は、……熱量に耐えきれず……」


「……あいつに比べりゃ、……腕の一本や二本、……安いもんだろ!!」

 カザンの言葉に、サロメは目を見開き、そして……美しく微笑んだ。

 

「……ふふ、……確かに。……あのお節介な鍼灸師に比べれば、……わたくしたちの苦労など、……些細なことですわね」

 サロメが、残りの魔力を全て絞り出し、最後の氷の鎖を巨神の足首へと絡めた。

 

「……今です、カザン殿!!」


「……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!! ……貫け、……俺の……魂ィッ!!!」


 カザンが、自らの命を削り取るような「紅蓮のオーラ」を槍に凝縮させ、巨神の心臓部へと跳躍した。

 槍の穂先が、黄金の熱線と真っ向から衝突し、空間が激しく明滅する。

 

 ――ズドォォォォォォォォォォォォンッ!!!

 

 巨神が内側から爆発し、数千の結晶兵団もまた、その因果の繋がりを断たれて砂へと還っていった。

 

 王都外門に、一時的な静寂が訪れる。

 

 カザンは、ボロボロになった槍を杖代わりに、荒い息を吐きながら立ち尽くしていた。

 その右腕は火傷でどす黒く変色し、サロメもまた、魔力枯渇で動くことさえままならない。


「……はは、……ざまぁ……ねえな。……一撃で、……これかよ……」


「……お見事でしたわ、カザン殿。……ですが、……見てください……」

 サロメが指差した先。

 王都の地下から、さらなる紫の煙が立ち昇り、地割れの中から「新たな影」が這い出そうとしていた。


 それは、編纂者たちが隠し持っていた「王家の影」――かつてこの国で散っていった英雄たちの死体を、因果の力で繋ぎ合わせた「亡霊騎士団」。

 

「……まだ、……終わらせてはくれないようですわね」


「……へっ、……上等だ。……枢が仕事を終えるまで、……地獄の果てまで付き合ってやるよ!!」


 第208話。

 王都外門の守護者たち。

 彼らの本当の地獄は、ここから加速していく。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


3月30日(月)、中編の第1回目更新をお届けいたしました。

枢が玉座の間で戦っている裏で、カザンとサロメがどれほどの「死闘」を繰り広げていたのか。

枢の物語が「治療」であれば、彼らの物語は「死守」。

仲間の視点を入れることで、王都奪還という出来事のスケール感を再構築しています。


次回、第209話は本日**【12:00】**に更新予定です!


疲弊したカザンとサロメの前に現れた「亡霊騎士団」。

その中に、カザンがかつて師と仰ぎ、翡翠の異変で命を落とした「先代の槍聖」の姿が……!?

守護者たちの過去と誇りが交錯する、中編第2幕。


今週も、一話一話全力で執筆してまいります。

引き続き、応援をよろしくお願いいたします!

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