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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第三章:異界の病根と共鳴する銀鍼】

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第199話:金剛石の老騎士、不滅の盾を穿つ白銀の長鍼

3月28日、15:00。休日4回目の更新をお読みいただきありがとうございます。


王都の民を救い、因果の毒に身体を焼きながらも辿り着いた、王城の正門。

そこに座していたのは、かつて王都の平和を守り抜いた伝説の老騎士・ガウェインでした。


「……枢、……奴はもう人間ではない。……金剛石の結晶に覆われた、……『不落の概念』そのものだ」


むくろの忠告。

金剛石の剣が一振りされるたび、空間そのものが結晶化して砕け散ります。


「……ガウェイン卿、……あなたの剣筋は、……今もなお、……正義を貫こうと叫んでいます」


くるるは、自身の往診鞄から、最も古く、最も鋭い『白銀の長鍼』を取り出します。

金剛石の鎧に、たった一点だけ存在する「気の継ぎ目」。

鍼灸師・枢、伝説の武人と、魂の対話に挑みます。

 王城の正門は、巨大な翡翠のつるが絡みつき、もはや生物を拒む異界の城塞と化していた。

 その門の前に、一人の老人が静かに腰を下ろしている。

 かつて王都騎士団の総長を務め、アンナの剣の師でもあった、ガウェイン・バルド。

 だが、今の彼の肉体には、人間らしい肌の色はどこにも残っていない。

 全身を覆うのは、光を暴力的なまでに乱反射させる、半透明の金剛石ダイヤモンド

 彼が持っていた大剣さえも、今や巨大な結晶の牙へと変貌し、地面に突き立てられたその周囲からは、不気味な翡翠の火花が散っていた。


「……ガウェイン、……先生……! ……なぜ、……あなたがこんな姿に……!!」

 アンナが叫び、駆け寄ろうとしたが、ガウェインがゆっくりと顔を上げた瞬間、凄まじい「静止の圧」が彼女を襲い、その場に釘付けにした。


「……侵入……者……、……削除……。……王都の……秩序……、……維持……」

 ガウェインの口から漏れたのは、声ではなく、石と石が擦れ合うような、無機質な振動。

 彼の中にある「騎士道」という高潔な因果は、編纂者たちの手によって、「排除」という冷徹なプログラムへと書き換えられていた。


「……枢。……あいつの防御、……ただの硬さじゃねえぞ」

 カザンが槍を構え、冷や汗を流しながら呟いた。

「……あの金剛石の鎧、……俺たちの『気』を、……触れた瞬間に結晶に変えちまう。……物理攻撃も魔法も、……すべてあいつの『一部』に取り込まれるぜ」


「……ええ、……分かっています」

 くるるは、自身の紫色に変色した右腕を、左手で強く抑えながら一歩前へ出た。

 彼の翡翠眼ひすいがんは、ガウェインの全身を覆う金剛石の中に、幾千もの「気の淀み」が火花のように散っているのを捉えていた。


「……彼は、……戦っているのではありません。……耐えているのです。……編纂者たちの呪縛が、……彼の誇り高き魂を塗り潰そうとするのを、……その強靭な肉体で、……必死に繋ぎ止めている」


「……枢、……まさかあいつを診るつもりか?」

 むくろが、自身の漆黒の鍼を数本、予備として掌に隠し持った。

「……言っておくが、……あいつの皮膚は、……並の銀鍼じゃあ、……一ミリも通らねえぞ。……下手をすれば、……お前の鍼の方が、……粉々に砕け散る」


「……ですから、……骸。……あなたの『死鍼』で、……彼の金剛石に、……一瞬だけ『ひび』を入れてください」


「……はぁ!? ……俺に、……あのダイヤモンドを割れってのか?」


「……いえ、……割るのではなく、……『腐らせる』のです。……不変を誇る金剛石も、……死の気を通せば、……その硬度は一時的に、……『脆い石炭』へと堕ちる。……その一瞬の隙間を、……私が穿ちます」


 骸は、枢の無茶な提案に、一瞬だけ呆れたような溜息をついた。

 だが、すぐにその不敵な笑みを戻すと、漆黒の鍼を天に掲げた。


「……いいだろう。……お前のその、……狂った『診察眼』に、……最後まで付き合ってやるよ!!」


 ガウェインが動き出した。

 大剣を一振りするだけで、空間に真空の刃が走り、石畳が次々と結晶の破片へと変貌して爆発する。

 カザンとらんが、その猛攻を必死に逸らし、枢と骸のための「十秒」を稼ぎ出した。


「……行くぞ、枢!! ……死鍼奥義、……『灰燼かいじんの口付け』!!」


 骸が放った三本の漆黒の鍼が、ガウェインの胸元、心臓を守る最も硬い金剛石の装甲へと突き刺さった。

 瞬間、眩いばかりの光を放っていた結晶が、不気味な黒褐色に変色し、細かな亀裂が走り始めた。

 

「……今です!!」


 枢は、自身の往診鞄から、全長一尺五寸、白銀の輝きを放つ最高級の長鍼を取り出した。

 

「……私は、……鍼灸師です。……不変などという言葉、……生命には似合いません!!」

 

 枢は、ガウェインの胸元、骸が作った亀裂のその中心にある**『紫宮しきゅう』へと、渾身の力で長鍼を突き入れた。

 

「……鍼灸奥義、……『砕玉さいぎょく・流転のくさび』**!!」


 ――ガギィィィィィィィンッ!!!

 

 白銀の鍼が、黒ずんだ金剛石を貫き、老騎士の肉体へと深々と沈み込んだ。

 枢の指先からは、因果の毒に抗うための「生の気」が、爆発的な波動となってガウェインの全身へ駆け巡る。

 

 金剛石の中に閉じ込められていた、ガウェインの「本当の経絡」が、枢の鍼に呼応して激しく脈動を始めた。

 

「……ぐ、……あ、……ガ、……ハァッ……!!」

 

 ガウェインの全身を覆っていた金剛石が、内側からの圧力に耐えきれず、一斉に砕け散った。

 無数の宝石の破片が、王城の門前に降り注ぐ。

 

 その光の雨の中で、ガウェインは、本来の人間の肌を取り戻し、ゆっくりとその場に跪いた。

 

「……お見事……、……若き……鍼灸師よ……」

 ガウェインの瞳に、知性と温かな光が戻っていた。

 

「……ガウェイン卿!! ……申し訳ありません、……無理やり因果を掻き回してしまって……」

 枢が、ふらつきながらも老騎士の肩を支えた。 


「……いや、……礼を言うのは……こちらだ。……私は、……この美しい宝石の牢獄の中で、……永遠に、……己の魂が磨り潰されるのを……待つしかなかった……」

 ガウェインは、自身の震える手を見つめ、静かに微笑んだ。

 

「……だが、……王城の内部には、……私以上の『絶望』が……待っている。……枢殿、……どうか、……陛下を……この王都を……」


「……ええ。……必ず、……診てみせます」


 枢は、自身の右腕に走る、さらに濃くなった紫色の痣を見つめた。

 ガウェインの治療により、彼の身体は限界を超えつつあったが、その足取りは、王城の奥深くへと向かうたびに、より確かなものへと変わっていた。


 王城の深部から響く、巨大な「鼓動」。

 都を一つの巨大な生命体に変えた、因果の編纂者たちの「執刀」が、ついにその全貌を現そうとしていた。

 

 第199話。

 王都奪還編、舞台はいよいよ、翡翠の王座へと移る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


3月28日(土)、15:00の更新をお届けいたしました。

王都最強の騎士ガウェインを、むくろとの連携で見事に「治療」したくるる

物理的には不可能な金剛石の破壊を、鍼灸師としての「経絡の流転」という視点で解決する、最高に熱いバディ回となりました。


今回登場した術理、『紫宮しきゅう』。

胸骨の上、第2肋間にある、肺の気を整え、胸のつかえを下ろす名穴です。ガウェインが結晶の中で抱えていた「苦しさ」と、魂の「滞り」を物理的に貫くことで、彼の生命活動を再起動させました。


次回、第200話は本日**【18:00】**に更新予定です!


ついに連載**【第200話】**のメモリアル更新!!

翡翠の王座に座していたのは、かつて枢が万博で命を救ったはずの、若き国王でした。

しかし、彼の肉体は、すでにこの世界の「因果」を統べるための、巨大な端末へと改造されており……。


記念すべき第200話、物語は最大の衝撃へと突入します。

引き続き、応援の評価やブックマークをよろしくお願いいたします!

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