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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜最強の聖鍼師・連城枢は、経絡を正して魔王を懐かせ、聖女の呪いも指一本で完治させる〜』  作者: 鍼灸師いのぴー
【第一章:王都の毒を穿つ聖鍼】

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第19話:魔王、陥落。あるいは深淵の安らぎ

お読みいただきありがとうございます!


魔王城往診編、ついにクライマックス。

魔王の頭頂に突き立てられた銀鍼。放たれる膨大な魔力と、支配者の絶叫。


激痛の先に待っていたのは、数百年ぶりの「安らぎ」でした。

最強の魔王が陥落する瞬間を、どうぞ見届けてください。

静寂が、玉座の間を支配していた。

 魔王ヴァルゼスの頭頂、天の気が集まる『百合(百会)』。そこにくるるの放った月光銀草の鍼が、吸い込まれるように沈み込んでいた。


「……っ、ぐ、あああぁぁぁ……っ!!」


 魔王の口から漏れたのは、悲鳴ではなかった。それは、数百年もの間、彼の肉体に蓄積され、出口を失っていた「熱」が噴き出す音だった。

 鍼の周囲から、禍々しい紫色の蒸気が立ち昇る。それは魔王の脳を焼き続けていた余剰魔力であり、激しい頭痛の正体そのものだ。


「……落ち着いてください。今、高ぶりすぎたあなたの『陽気』を、外へ逃がしています。……ここからが仕上げです」


 枢は流れるような手つきで、魔王のうなじから肩甲骨にかけて、さらに四本の鍼を打ち込んだ。

 『大椎だいつい』、『肩井けんせい』。

 一寸六分の銀鍼が、魔族の強靭な筋肉を割り、深層にある「魂のコリ」へと到達する。


「な、なんだ……これは……。体が、溶ける……」


 魔王ヴァルゼスの瞳から、鋭い殺気が消えていった。

 常に全身を覆っていた、針のむしろのような緊張。世界を滅ぼさんとする破壊衝動。それらすべてが、枢の指先から伝わる柔らかな「気」によって、泥のように解きほぐされていく。


「陛下。あなたは強すぎた。強すぎるがゆえに、休む方法を忘れてしまった。……筋肉が緩めば、心も緩みます。……ほら、呼吸を合わせて」


 枢が魔王の背中に手を当て、ゆっくりとリズムを刻む。

 魔王の呼吸が、次第に深く、静かなものへと変わっていく。側近たちが息を呑む中、巨躯を誇る支配者の頭が、がくりと胸元に落ちた。


「……寝たのか? あの、常に覚醒し続けていた陛下が……?」


 四天王の一人が、信じられないものを見る目で呟く。

 魔王ヴァルゼスは、玉座に深く沈み込んだまま、赤子のような穏やかな寝息を立て始めていた。


「……ふぅ。これで三日は起きないでしょう。起きた頃には、頭痛も消え、魔力の巡りも劇的に改善されているはずです」


 枢は平然と鍼を抜き、アルコールで消毒してバッグに収めた。

 その顔には、大仕事を終えた達成感よりも、「ようやく面倒な患者が片付いた」という隠居人らしい安堵感が漂っている。


「……さて。報酬ですが。金貨も領地もいりません。……魔王陛下が目覚めたら伝えてください。『次に頭が痛くなったら、戦争ではなく、往診の予約を入れなさい』と」


 枢は、呆然と立ち尽くす魔族たちを背に、玉座の間を後にする。

 案内役のヘルガが、震える声で問いかけた。


「……枢殿。貴殿は、怖くないのか。主が目覚めた時、その弱みを見せた貴殿を殺すかもしれないのだぞ」

「殺す? まさか。……目覚めた後の爽快感を知ってしまったら、もう私なしではいられなくなりますよ。……それこそ、魔王といえどもね」


 朝焼けが、魔王城の尖塔を照らし始めていた。

 世界を救うためではない。ただ一人の不眠症患者を救うために。

 聖鍼師・連城枢の往診は、こうして伝説の一ページとして、魔族の歴史に深く刻まれることとなった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


魔王城往診編、これにて完結です。

どんなに強大な魔力を持っていても、脳が疲れていては世界征服どころではありません。

枢の言った「休む方法を忘れた」というのは、現代社会の皆様にも通じるツボ(!)かもしれませんね。


「魔王の寝顔、ちょっと見てみたい(笑)」

「枢先生、魔族も手なずけちゃった!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【ブックマーク】や、下の【☆☆☆☆☆】をポチポチッと**お願いします!

皆様の応援が、枢の次の往診トラブルの糧になります!


次回、第20話は明日**【8:00】**に更新予定。

王宮へ帰還した枢を待っていたのは、セレスティアラ王女の「猛烈なデレ」だった……!?

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