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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜最強の聖鍼師・連城枢は、経絡を正して魔王を懐かせ、聖女の呪いも指一本で完治させる〜』  作者: 鍼灸師いのぴー
【第一章:王都の毒を穿つ聖鍼】

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第17話:魔王からの招待状と、聖鍼師の決意

お読みいただきありがとうございます!


激動の新展開! ついに魔王からの「公式往診依頼」が届きます。

罠か、それとも救済か。周囲の反対を押し切り、くるるは単身、魔力の渦巻く魔王城へと向かいます。


相手が神だろうが魔王だろうが、不摂生なら叱り飛ばす。

聖鍼師の「往診編」、開幕です!

強欲なエドモンド伯爵を「彫像」に変えてから数日。王宮の静寂は、再び現れた「異形の使者」によって破られた。

 しかし、今回の使者は一万の軍勢を引き連れてはいなかった。漆黒の礼装に身を包んだ一人の魔族が、仰々しい銀のトレイに載せられた一通の書状を、王宮の正門へと届けに来たのである。


「……これは、魔王陛下からの公式な『往診依頼』である」


 その報に、王宮は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

「往診だと!? 罠に決まっている! 枢殿を魔王城へ誘い出し、亡き者にしようという魂胆だ!」

 騎士団長が声を荒らげ、会議室のテーブルを叩く。セレスティアラ王女も、蒼白な顔でくるるの袖を強く掴んでいた。


「枢様、行ってはなりませんわ! 魔王城は魔力の毒が渦巻く深淵。人間が生きて帰れる場所ではありません!」


 周囲が喧々諤々と議論を戦わせる中、枢はただ一人、届いたばかりの招待状をじっと見つめていた。

 魔力を帯びたインクで書かれた文字。それは乱暴だが、どこか切実な震えを帯びているように枢の目には映った。


「……王女様。この筆跡を見てください。文字の終端が、わずかに右に流れている。これは、深刻な『内風ないふう』……つまり、脳が極度の疲労に晒され、平衡感覚すら危うくなっている兆候です」

「そんな、筆跡だけで病状を……?」

「翡翠眼には、書かれた文字から書き手の『気』の乱れが読み取れるのです。魔王か何かは知りませんが、この書き手は今、一睡もできずに激しい頭痛と戦っている。……これは招待状ではなく、魂の悲鳴ですよ」


 枢は立ち上がり、いつもの往診バッグを手に取った。

 その中には、ザドゥから譲り受けた『月光銀草』の鍼、そして特製の消毒薬が整然と並んでいる。


「枢様……本気で行かれるのですか?」

「私は鍼灸師です。助けを求める患者がいる。それも、私の技術を理解した上での依頼だ。断る理由がどこにありますか?」

「ですが、相手は人類の敵……!」

「病に敵も味方もありません。それに、魔王が不機嫌で世界を滅ぼそうとするなら、その機嫌を直すのが一番の平和解決でしょう。……肩こり一つで滅ぼされる世界なんて、あまりに馬鹿馬鹿しい」


 枢は、呆然とする騎士たちを尻目に、悠然と出口へ向かう。

「王女様、留守中の治療院をお願いします。ああ、エドモンド伯爵がまた来たら、『百合びゃくごう』のツボに百草を据えてやってください。少しは頭が冷えるでしょう」


 王宮の門を出ると、そこには豪華な、しかし禍々しい意匠が施された魔族の馬車が待機していた。

 出迎えたのは、かつて枢が枕を贈った副隊長のヘルガだった。


「……枢殿。本当に来てくれるとは。……主は、限界なのだ。私たちが何をしても、その痛みを取り除けなかった」

「ヘルガさん、久しぶりですね。顔色が良くなって安心しました。……さあ、行きましょうか。魔王のツボを突きに」


 馬車が闇夜に向かって走り出す。

 向かうは、世界の果てにある魔王城。

 一人の鍼灸師が、世界を救うためではなく、一人の「重症患者」を救うために、史上最大の往診へと旅立った瞬間だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


本編で枢が口にした『百合びゃくごう』という言葉。

鍼灸に詳しい方なら「百会ひゃくえの間違い?」と思われたかもしれません。


実はこれ、本作オリジナルの表現です。

頭の頂点にある万能のツボ**『百会ひゃくえ』と、仏像の額にある慈悲の光を放つ『白毫びゃくごう』**を掛け合わせた、枢なりの皮肉を込めたネーミングになっています。


「強欲な伯爵に、少しは仏のような慈悲の心が宿るよう、頭のてっぺんにお灸を据えてやれ」という、枢らしいドSな処方箋ですね(笑)。


ちなみに、現実の『百会』も自律神経を整え、頭ののぼせを取る非常に重要なツボです。イライラが止まらない時は、ぜひ優しく押してみてくださいね。


次回、第18話はいよいよ魔王城での施術開始!

枢の放つ銀鍼が、魔王の「魂のコリ」を貫きます。お楽しみに!

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