表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜最強の聖鍼師・連城枢は、経絡を正して魔王を懐かせ、聖女の呪いも指一本で完治させる〜』  作者: 鍼灸師いのぴー
【第一章:王都の毒を穿つ聖鍼】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/31

第15話:訪れた『病める獣』と、深淵の指圧

お読みいただきありがとうございます!


聖鍼師としての名声が広まり、ついに「魔族の伝説」までもが患者として現れます。

呪いという名の重度のコリを、くるるはどう解きほぐすのか。

異世界の医療(?)が、新たな境地に達します!

魔王軍の一万の軍勢を「寝かしつけ」、敵将ギルガの心をも「癒やした」くるるの噂は、もはや人間社会の枠を超え、魔族の版図にまで深く浸透していた。

 王宮内に設けられた「連城治療院」は、今や昼夜を問わず、誰にも言えない不調を抱えた者たちが集う「聖域」と化していた。


「枢様、次の患者様ですが……その、少し様子が……」

 案内役のセレスティアラ王女の声が、珍しく怯えている。

 枢が顔を上げると、そこには、全身を使い古されたボロ布で覆った、異様に背の高い「影」が立っていた。


「……お入りなさい。ここでは、身分も種族も関係ありません。あるのは、患者と施術者という関係だけです」

 枢の静かな言葉に促され、その影がゆっくりと診察用の椅子に腰を下ろした。

 ボロ布の隙間から見えたのは、漆黒の毛並みと、金色に光る鋭い眼光。

 魔族の中でも、特に獰猛で知られる『銀狼族』の生き残り、バルガだった。かつては数々の戦場を血で染めたと言われる伝説の傭兵だ。


「……私の体、治せると言うか。人族の若造が」

 バルガの声は、地響きのように重く、殺気に満ちていた。

 だが、枢は眉一つ動かさず、バルガの横に立つ。


「殺気で人を威圧するのは、自分の弱さを隠すための防衛反応に過ぎません。……左肩が、不自然に下がっていますね。それに、呼吸が浅い。肺の経絡が、深い呪いのような魔力に侵食されている」

「……! 貴様、触れもせずに……」

「【翡翠眼】を舐めないでください。あなたの体の中を流れる気が、まるで腐った泥のように淀んでいるのが見えます。……服を脱ぎなさい。鍼だけでは足りない。今日は『吸いカッピング』と『深層指圧』も併用します」


 枢は慣れた手つきで、ガラス製の器具をアルコールランプの火で温める。

 バルガが服を脱ぐと、その背中には無数の刀傷と、禍々しい紫色の紋様が浮かび上がっていた。かつての戦いで受けた、強力な「魔毒」の痕だ。


「……あきらめろ。これは魔王に仇なした者が受ける呪いだ。治るはずが――」

「『呪い』とは、要するに異常な波長を持つ外部魔力が、神経系に癒着している状態です。癒着を引き剥がし、血流と共に体外へ排出すればいいだけの話。……少し、響きますよ」


 枢が、バルガの背中に吸い玉を吸着させ、同時に脊柱の両脇にある『肺兪はいゆ』に深く銀鍼を沈めた。

「――ぐっ、ぁあああ!?」

 バルガが咆哮を上げる。全身の血管が浮き上がり、背中からドス黒い魔力が煙となって噴き出していく。


「暴れないで。今、あなたの深層筋にこびりついた『絶望』という名のコリを剥がしています。……ここだ!」

 枢の親指が、バルガの肩甲骨の裏側に潜り込むようにして、一点を鋭く突いた。

 『膏肓こうこう』――かつて中国の古事において「病がここに至れば治らぬ」と言われた、難病のツボだ。


 刹那、バルガの視界が真っ白に染まった。

 激痛の後、濁流のような熱い「気」が全身を駆け巡る。冷え切っていた手足が熱を持ち、数十年ぶりに「呼吸」が肺の奥深くまで届いた。


「……はぁ、はぁ、はぁ……。なんだ、これは……。空気が、美味い……」

「長年の呪毒によって、呼吸筋が硬直していただけです。……今日打ったのは『解毒』の鍼。三日間は、水を多めに飲んで、ゆっくり寝てください。毒が尿と共に排出されますから」


 枢は平然と手を洗い、次の鍼の消毒を始める。

 伝説の傭兵バルガは、震える手で自分の胸に触れ、確かめるように何度も呼吸を繰り返した。そして、無言のまま枢に向かって膝をつき、深々と頭を下げた。


「……報酬は、我が命でいいか」

「命なんていりません。……そうですね、次回来る時に、城下町の美味しい茶葉でも持ってきてください。王女様がうるさいのでね」


 窓の外では、王女が呆れたように、そして嬉しそうに笑っていた。

 聖鍼師の診察室。そこは、呪われた英雄ですら、ただの「体調の悪いおじさん」に戻ってしまう場所なのだ。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!


膏肓こうこう』のツボは、現実でも「ここが凝ったらおしまいだ」と言われるほど深くて重要な場所です。

バルガのような頑固なコリも、枢の指先にかかればイチコロですね。


「吸い玉の描写がリアル!」

「バルガのデレも見たい!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価】**をいただけると、執筆の励みになります!


次回、第16話は明日17日(火)の更新予定!

王都に激震……? ついに「あの男」が枢を訪ねてやってくる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ