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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第129話:死の境界、三秒間の聖域

お読みいただき、本当にありがとうございます!


魔神と化したザインの圧倒的な蹂躙。

仲間が次々と倒れ、くるるの意識もまた、神の重圧に押し潰されようとしていました。


「……3秒。リナ、それ以上は私の魂が戻ってこれなくなります」


生と死の境界線で行われる、命懸けの「自己執刀」。

絶望の淵で、枢がリナに託したのは、治療ではなく「共鳴」の奇跡でした。


兄弟子ザインの「完璧」を打ち砕く、不完全な二人の反撃。

金曜日ラストの更新、魂を震わせる「3秒間の賭け」をどうぞ!

 ザインの鋼のような指が、くるるの喉を締め上げる。

 魔神化した兄弟子の全身から放たれる漆黒の魔力は、空中回廊の酸素さえも焼き尽くし、枢の肺は限界を訴えていた。カザンとサロメは無惨に地に伏し、リナもまた、ザインの放つ絶望的なプレッシャーの前に身動きが取れずにいた。


「……終わりだ、……枢。……君の翡翠の瞳に、……永遠の安らぎ(シャットダウン)を与えてやろう」

 ザインの右手の爪――紫に輝く魔金鍼が、枢の眉間、**『印堂いんどう』**へと迫る。


 だが、その瞬間。

 枢の口角が、微かに、だが確実につり上がった。

「……リナ、……今……です……!」


「……はいっ!!」

 リナが、これまでの癒やしの光とは真逆の、鋭く、凍てつくような「拒絶の光」を放った。それは相手を傷つけるためではない。枢とザインの間に流れる「気の同調」を、一瞬だけ物理的に遮断するための障壁。


 同時に、枢は自らの左手の親指で、自身の胸の中央、**『膻中だんちゅう』**を、肋骨が軋むほどの力で突き刺した。


 ツボとしての『膻中』は、左右の乳頭を結ぶ線の中央に位置し、心の気を司る場所だ。ここは感情の集まる場所であると同時に、あまりに強く刺激すれば、一時的に心拍を停止させ、全身の気を完全に「無」へと沈めることができる「死の門」でもある。


「……な、……自ら……心臓を止めた……だと……!?」

 ザインが驚愕に目を見開く。

 枢の身体から生命反応が消え、天界の法典がターゲットとして認識するための「個の波形」が消失した。法典に依存し、相手の気を追尾して重力をかけていたザインの術式は、標的を見失い、その場で霧散した。


 三秒。

 それが、枢が自身の心臓を止めていられる限界の時間。

 その間、枢の意識は真っ白な虚無の世界へと放り出され、肉体の枷から解き放たれる。


「……オォォォォォォッ!!」

 仮死状態の中で、枢の魂が吠えた。

 彼はそのわずかな時間を利用し、ザインの魔力障壁の「継ぎ目」を翡翠眼ひすいがんで捉えた。

 ザインは全身を完璧な魔力で覆っているように見えるが、彼が背負う「六枚の翼」の付け根だけは、生身の肉体と機械を無理やり繋ぎ合わせるための、不純な「排熱孔」が露出していた。


 一秒経過。

 枢の肉体が、死の冷気に蝕まれ始める。

 二秒経過。

 リナが必死に枢の背中に手を当て、自身の生命力を送り込み、彼を「生」の世界へと引き戻そうと叫ぶ。


「……戻ってきて、……枢さん! ……まだ、……終わらせないで!!」


 三秒。

 枢の瞳に、爆発的な翡翠の閃光が戻った。

 ドクンッ!! と心臓が一度、大地を揺らすほどの力強さで鼓動を再開する。

 枢はザインの腕をすり抜け、その巨大な魔神の背後へと回り込んでいた。


「……聖鍼流、因縁診断――『魂門こんもん虚飾きょしょく崩壊ほうかい』!」


 枢の金鍼が、ザインの背中、翼の付け根にある**『魂門』**へと、深く、深く、吸い込まれた。


 ツボとしての『魂門』は、背中、第九胸椎の棘突起下の両側に位置し、東洋医学では「魂の出入りする門」とされる。肝の気が宿る場所であり、ここを突くことは、相手が隠し持っている本心や、肉体の「真の主導権」を呼び覚ますことを意味する。


「……がああああああああああっ!? ……熱い、……熱いぞ、……何だ……これは……! ……法典が……拒絶反応を……起こして……ぐわあああああ!!」

 ザインの六枚の翼が、内側からの爆発に耐えかねて四散した。

 完璧だったはずの魔導の肉体が、枢の一刺しによって「人間としての拒絶」を開始したのだ。


 翼を失い、空中回廊に無様に転がったザイン。

 彼の身体からは禍々しい黒い煙が立ち昇り、半分機械化した顔が、醜く歪んでいる。

 だが、それ以上に凄惨だったのは、彼の心から溢れ出した「孤独」という名の瘴気だった。


「……なぜ……だ……。……法典は……完璧だった……。……私は、……これさえあれば、……誰も……死なない……世界を……」

 ザインの瞳に、一瞬だけ、かつての兄弟子の面影が宿る。


「……ザイン兄弟子。……あなたは、……死を恐れるあまり、……生きることさえも……計算機マシンに……預けてしまった。……それは、……救済ではなく、……ただの……逃避です」


 枢が、息を切らしながらザインを見下ろす。

 枢の右腕もまた、先ほどの仮死術の影響で、翡翠の紋様がひび割れるように変色していた。二人とも、もはや満身創痍。


 しかし、ザインはまだ折れていなかった。

 彼は地に這いつくばりながら、折れた魔金鍼を自分の「目」へと突き刺そうとした。


「……まだだ、……まだ……終わらん……! ……私の……視神経を……法典の中枢へ……直接……リンク……させれば……!」


「……やめろ、……ザイン!!」

 枢が止めに入ろうとしたその時。

 空中回廊の遥か上空、雲を割り、巨大な「白い影」が降りてきた。


 それは、ザインでもウリエルでもない。

 天界を統べる最高議会、七大天使の一柱――『死と再生を司る、大天使アズラエル』。


「……失敗作は、……リサイクルにも……値しない」

 アズラエルの無慈悲な声と共に、ザインの身体が、足元から「消しゴムで消された」かのように、白く、静かに消滅し始めた。


「……な、……アズラエル……様……!? ……お待ち……ください、……私は……まだ……戦え……」

 ザインの叫びは、天界の光に掻き消された。

 彼は枢の手を借りることさえ許されず、神の「廃棄処分」として、この世界から消されようとしていた。


「……ザイン!!」

 枢が、必死に消えゆくザインの手を掴もうと伸ばす。

 仇敵であり、兄弟子であり、誰よりも医術を愛していたはずの男。


 ザインの最期の一言は、枢にしか聞こえないほどの、か細い囁きだった。

「……すま……ない……。……枢、……あいつらには、……鍼を……打たせる……な……」


 ザインが、完全に消滅した。

 空中回廊には、彼が持っていた一本の、ひび割れた銀鍼だけが虚しく残された。

 枢の拳が、血が滲むほどに握りしめられる。

 天界は、味方でさえも「不純物」として即座に切り捨てる。

 その神々の傲慢さに、枢の翡翠眼が、かつてない怒りの色で燃え上がった。


「……アズラエル……。……天界の神々よ。……あなた方は、……治療以前の……『猛毒』だ」


 物語は、因縁の決着から、神々への宣戦布告へと突入する。

 リナが枢の肩にそっと寄り添い、カザンとサロメも、満身創痍ながらもその眼差しは、空の上の神殿を見据えていた。


「……行きましょう、枢さん。……神様の涙が、……枯れ果てる前に」

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ザイン戦、衝撃の結末。

くるるさんの命懸けの「三秒間の仮死」による逆転撃。そして、勝利の瞬間に現れたさらなる絶望――大天使アズラエルによる、ザインの「廃棄処分」。

同じ医術を志した者として、あまりにも救いのない最期を遂げたザイン。彼の遺した「鍼を打たせるな」という言葉に、どんな真意が隠されているのか。


今回登場した**『膻中だんちゅう』**。

胸の真ん中にあるこのツボは、気の巡りを一気に変える強力なスイッチです。枢さんはこれを「自らの生を一時停止させる」という、聖鍼師として極限の賭けに使いました。


次回、第130話は明日、3月14日(土)08:00に更新予定です!


姿を現した七大天使アズラエル。

彼女が解き放つのは、生命の概念を書き換える「白いパンデミック」。

仲間たちが次々と「生ける人形」へと変えられていく中、枢はザインの銀鍼に隠された、神を穿つための「裏コード」を発動させます。


「ザイン、最後は切なすぎるよ……。神様、酷すぎる!」

「枢さんの怒りが爆発した! 翡翠眼が今までと違う……!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!


明日は土曜日。更新時間は、**【8時、10時、12時、15時、18時、21時】**の全6回を予定しています!

さらなる連打で、天界の闇を暴いていきますよ!

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