第126話:審判の開眼、翡翠と黄金の共鳴手術
おはようございます!
ついにリナが復活し、二人の魂が一つに重なりました。
しかし、天界はそれを「不純物の混入」と見なし、生命の樹に秘められた最終防衛機構を起動させます。
天空に開いた巨大な黄金の眼球。そこから放たれるのは、すべてを無に帰す「神の視線」。
「……枢さん、私と一緒に、この空を治療しましょう!」
聖鍼師の鍼と、覚醒した聖母の光。
そして、陰で支える堕天使医師団の禁忌魔術。
金曜日の朝、神の監視を打ち砕く「共同執刀」が始まります!
精神世界から帰還し、固い絆を再確認した枢とリナ。
だが、再会の余韻に浸る間もなく、生命の樹の幹が激しい地響きと共に左右に割れた。剥き出しになった樹の心臓部からせり出してきたのは、直径十メートルを超える巨大な「黄金の眼球」だった。それは、天界の神々が下界の動向を監視し、異分子を即座に消去するために設置した最終制裁装置――『審判の眼』。
「……標的、……確定。……聖鍼師枢、……ならびに始祖の種リナ。……存在の矛盾を検知。……これより、……因果律の抹消を開始する」
無機質な神の宣告と共に、眼球の瞳孔に莫大な光が集束していく。その光に触れただけで、周囲の空間がデジタルノイズのように乱れ、物質の結合が強制的に解除されていく。
「……あれに睨まれたら、……魂ごと消されるぜ。……枢、……どうする! ……あんなデカいもん、……俺の槍じゃあ目薬にもならねえ!」
カザンが必死に盾を構えるが、神の視線が放つ圧力だけでその盾にヒビが入る。
「……慌てるな、熱血漢。……あれは物理的な物体ではない。……天界の巨大な魔力回路が、……この樹を媒体に実体化しているものだ。……ならば、……その『回路の接続点』を断てばいい」
堕天使医師団のリーダー、ラファエルが、黒い翼を広げて枢の隣に降り立った。
「……ラファエル先生の言う通りです。……あの眼球は、……天界という巨大な生命体の『神経終末』に過ぎない。……リナ、……私の動きに合わせて、……あの眼球の視線を『屈折』させてください。……一瞬でいい、……私をあの瞳孔の直上へ!」
「……分かりました、枢さん! ……今の私なら、……この樹の光を……私たちの味方にできます!」
リナが黄金の杖を高く掲げると、生命の樹から溢れ出す光が、彼女の意志に従って巨大な「凹面鏡」のように歪曲し始めた。
ウリエル戦での覚醒を経て、リナは樹のエネルギーを制御する術を完全に手に入れていた。
「……いくわよ、……枢! ……あんたの往診、……特等席までエスコートしてあげるわ!」
サロメが魔法陣を展開し、枢の身体を浮遊させる。
枢は、空中へと躍り出た。
眼球から放たれた極大の消去光線が、リナの光の鏡によって大きく逸らされ、空の雲を消し飛ばす。
その隙間を縫って、枢は眼球の真正面へと肉薄した。
翡翠眼が、黄金の眼球の奥深くに隠された「気の集積点」を突き止める。
そこは、人における**『陽白』**の神域版。
ツボとしての『陽白』は、眉毛の上、瞳孔の直上に位置し、視力を高めるだけでなく、頭部の熱を下げて「眼の疾患」を退ける効果がある。また、ここは「未来を見通す力」を司る場所ともされる。枢は、神の傲慢な視線を司るこのポイントを破壊することで、天界の監視ネットワークそのものを麻痺させようとしたのだ。
「……聖鍼流、神域解体――『陽白・断絶の盲目』!」
枢の右指が、ヘイズの遺産と龍神の気を融合させた究極の術式を帯び、黄金の瞳孔へと突き刺さった。
ドォォォォォォンッ!!
衝撃波が聖域全体を揺らす。
黄金の眼球が、苦悶するように激しく痙攣し、その表面に無数の亀裂が走った。
「……有り得ん、……人間の鍼ごときが、……全知の視界を……汚すと……いう……のか……」
眼球から血のような黄金の液体が溢れ出し、周囲の風景を浸食していく。
だが、枢の往診はまだ終わらない。
「……リナ! ……仕上げです! ……この眼球に溜まった『支配の澱』を、……すべて慈悲の光で上書きしてください!」
「……はいっ! ……聖母の祈り、……全開――『黄金の福音』!」
リナから放たれた目も眩むような純白の光が、枢の鍼が穿った穴へと流れ込む。
破壊と再生。
枢が「病(支配)」を切り裂き、リナが「生(調和)」を注ぎ込む。
二人の完璧なコンビネーションにより、天界の最終兵器は内側から浄化され、巨大な「花の蕾」のような姿へと変貌し、そのまま砕け散った。
空を覆っていた赤黒い雲が晴れ、生命の樹に本当の平穏が訪れる。
だが、ラファエルの表情は晴れない。
「……見事な手際だ。……だが、……今ので天界の王たちは完全に本気になった。……彼らは、……自分たちの『眼』を潰した者を、……決して生かしてはおかないだろう」
「……望むところです。……こちらとしても、……コソコソ覗き見されるのは趣味じゃありません。……次は、……こちらから出向いて、……その腐った法典を書き換えてあげますよ」
枢が、往診バッグのベルトを締め直した。
リナが枢の隣に並び、その手をそっと重ねる。
「……枢さん。……私、……もう怖くありません。……あなたの鍼がある限り、……どんな絶望も、……治療できるって信じていますから」
「……ああ、……約束しましょう。……この世界のすべてを健康にするまで、……私たちの往診は終わりません」
生命の樹の試練を乗り越え、最強の「医療チーム」となった一行。
物語は、天界の門へと至る「空中回廊」の突破作戦へと舵を切る。
そこには、かつて枢を裏切り、天界へと寝返った「かつての同門」が待ち構えていた。
「……因縁の往診が、……始まりますね」
枢の翡翠眼が、遥か上空にそびえ立つ神の城を見据えた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
枢さんとリナさんの「合同手術」、いかがでしたでしょうか。
神の監視装置である『審判の眼』を、解剖学的なアプローチで打ち砕くという、本作ならではの爽快感を目指しました。リナさんがただ守られるだけでなく、枢さんの術式を完成させるための「光の執刀医」として成長した姿に、胸が熱くなりますね。
今回登場した**『陽白』**。
おでこにあるこのツボは、眼精疲労や頭痛に効くほか、顔のむくみを取る美容のツボとしても有名です。枢さんはここを「神の視線の要」として突きました。
次回、第127話は本日**【12:00】**に更新予定です!
天界へと続く「空中回廊」。
そこを守るのは、かつて枢と共に聖鍼術を学んだ兄弟子、ザイン。
「医術は力だ」と説く彼と、「医術は心だ」と説く枢。
同じ術を使いながら、正反対の道を歩む二人の「禁忌の鍼バトル」が勃発します!
「二人の連携、熟年夫婦みたいな安定感!(笑)」
「兄弟子ザイン……。これまた闇が深そうなキャラが出てきた!」
と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!
お昼の更新も、どうぞお見逃しなく!




