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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第121話:熾天の業火、神の熱病を穿つ神劫

お読みいただき、本当にありがとうございます!


ヘイズ博士が遺した、あまりにも重すぎる「真実」。

立ち止まる暇もなく、天界の最高戦力である熾天使してんしが、その圧倒的な光を纏って襲来します。


聖域が紅蓮の炎に包まれる中、くるるが手に取ったのは、かつての宿敵が遺した蒼いカプセル。

医術と毒、過去と未来。全てを融合させた一刺しが、神のことわりに穴を穿ちます。


「……あなたは病んでいる。その『正義』という名の熱病を、私が今、解熱してみせましょう」


水曜日のラスト更新。聖鍼師、ついに「神」へと鍼を打ちます!

 空が割れ、そこから降り注いだのは慈悲の光ではなく、すべてを炭化させる「浄化の炎」だった。

 生命の樹が湛えていた翡翠色の泉は一瞬で蒸発し、瑞々しい新芽は巻き上がる熱風にさらされる。その中心に降り立ったのは、黄金の鎧に身を包み、四枚の紅蓮の翼を羽ばたかせる熾天使ウリエル。


「……穢れた。……生命の樹も、……この地の空気も、……そして汝らの存在そのものも。……神の法典に記されぬ『治療』など、……宇宙にとってはただの癌細胞に過ぎぬ」

 ウリエルの声は、炎が爆ぜるような熱量を伴ってくるるたちの鼓膜を焼く。


「……癌細胞、……ですか。……命を繋ごうとする意志をそう呼ぶのなら、……天界の正義こそが、……この世界を蝕む『高熱』そのものだ!」

 枢が叫び、一歩前へ出る。彼の右手には、ヘイズが遺した蒼いカプセルの中身――液体状のナノ・バイオ・フォーミュラを纏わせた、特製の金鍼が握られていた。


「……枢さん、……無理です! ……あの炎、……魔力そのものを燃料にして燃えています。……近づくだけで、……存在が消失してしまいます!」

 リナが必死に防御障壁を展開するが、ウリエルが指先を向けるだけで、その障壁は飴細工のように溶け落ちていく。


「……ケッ、……熱すぎて槍を握ってられねえぜ。……だがな、……枢! ……俺たちの全魔力を、……あんたの右腕に預けてやる! ……神様に、……特大の『お注射』をぶち込んでやれ!」

 カザンが咆哮し、背後から枢の肩に手を置く。サロメもまた、自身の命を削って精製した最後の劇薬を、枢の指先へと流し込んだ。


「……行きなさい、……ヘボ医者。……あんたの言った『一人の女性』を助けた責任、……きっちり取ってもらうわよ」


 仲間の想い、そしてヘイズの執念。

 あらゆる「気」が、枢の右腕に集束し、翡翠色と蒼色が混ざり合った、見たこともない混沌とした光を放つ。

 枢の翡翠眼ひすいがんは、燃え盛る熾天使の巨躯を「透視」していた。

 ウリエルは、あまりにも強大な「正義のエネルギー」をその身に宿しているがゆえに、自らの熱によって内部から崩壊しかけている。それは医学的に見れば、極度の亢進状態が生んだ「自己免疫疾患」に他ならなかった。


(……見えた。……熾天使の、……全エネルギーを統括する一点。……そこにあるのは、……不滅の神核――『気戸きこ』!)


 本来、人における『気戸』は、鎖骨の下、乳頭線上に位置する。「気の門」という名を持つこの場所は、呼吸器を整え、外からの邪気を防ぐ重要な関所だ。

 だが、神としてのウリエルにとって、ここは天界から供給される「神力しんりき」を取り込む唯一の通気口。この門をヘイズの「毒(変革のプログラム)」で塞げば、ウリエルという存在そのものが、一時的に「人間の脆弱さ」へと引きずり下ろされる。


「……聖鍼流、神殺かみごろしの処方箋――『気戸きこ堕天だてんの深淵』!」


 枢が跳躍した。

 ウリエルの放つ紅蓮のブレスが枢の髪を焼き、肌を焦がす。

 だが、今の枢には痛みさえも「情報の振動」に過ぎない。

 ヘイズの遺産が、枢の肉体を一瞬だけ「神の周波数」へと同調させ、炎の網目を潜り抜けさせた。


 ドシュッ!!


 枢の金鍼が、ウリエルの鎖骨の下、黄金の鎧のわずかな隙間を貫いた。

 直後、蒼い液体がウリエルの体内に注入され、神の回路がショートを起こす。


「……な、……なに……を……。……我が神核に、……不純な……情報……が……。……熱が、……熱が……奪われる……!?」

 ウリエルの四枚の翼から炎が消え、その瞳から威厳が失われていく。

 ヘイズの遺産――それは神の力を「人間と同じ物理法則」に強制再定義する、ことわりの破壊兵器だった。


「……ウリエル。……あなたは強すぎた。……強すぎる力は、……自分以外の痛みを感じる神経を麻痺させる。……それは、……立派なやまいなんです」


 枢が着地し、膝を突く。

 ウリエルの巨躯が、その場に崩れ落ちた。

 炎は消え、聖域には冷たい静寂が戻る。

 神が、人間に敗北した。その歴史的瞬間。


 だが、崩れゆくウリエルの背後から、さらなる絶望の影が差した。

 生命の樹の枝が、禍々しい紫色の光を放ち、リナをその中心へと引きずり込んでいく。


「……あ、……ぁ……くるるさん……助けて……! ……何かが、……私の中に……!」

 リナの身体が、樹と一体化するように溶け始めていた。


 ウリエルの敗北。それは、生命の樹を管理していた天界の制御システムが完全に崩壊し、樹が「暴走」を始めたことを意味していた。

 救おうとした樹が、今、リナを食らおうとしている。


「……リナ!!」

 枢が叫び、手を伸ばす。

 しかし、その指先は虚しく空を切り、リナは樹の内部へと消えていった。


 第2章**「第5部、風雲急を告げる――!」**


 宿敵を倒した代償は、あまりにも大きかった。

 くるるは、自身の右腕を血が出るほど握りしめた。

 物語は、リナを奪還し、天界のシステムそのものを解体する最終局面――「神権崩壊・聖母奪還編」へと突入する。


「……待っていてください、リナ。……次は、……神々の王を、……往診台に上げて差し上げます」


 枢の瞳に宿る翡翠の炎は、もはや神への畏怖など欠片も残っていなかった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました……!


第5部、衝撃の幕切れです!

熾天使を「病気」として扱い、ヘイズ博士の遺産で治療(撃破)するという、本作のコンセプトの真骨頂を描きました。しかし、その勝利と引き換えに、ヒロインのリナが生命の樹に取り込まれてしまうという最大のピンチに。


今回登場した**『気戸きこ』**。

鎖骨の下にあるこのツボは、まさに「気の門」です。枢さんはここを突くことで、ウリエルの神としてのエネルギー供給を絶ちました。


次回、第122話は明日、3月12日(木)08:00に更新予定です!


幕を開ける第6部。

リナを失い、自責の念に駆られる枢。

しかし、彼の前に現れたのは、かつて天界を追放されたという「堕天使」の医師団でした。

神を殺すのではなく「救う」ための、最終決戦が始まります。


「枢さん、ついに神を倒した! でもリナちゃんが……!」

「第6部のタイトルが不穏すぎるけど楽しみ!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!


それでは、また明日の朝、新たなる章の幕開けでお会いしましょう!

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