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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第117話:翡翠の脈動、絶望を貫く一筋の光

お読みいただき、本当にありがとうございます!


ついに「生命の樹」の深淵へと手を差し入れたくるる

そこで待ち受けていたのは、黄金の樹を内側から腐らせていた黒き怨念、絶望の化身「世界蛇の残滓ざんし」でした。


樹の記憶に呑み込まれそうになるリナを支え、枢は感覚を越えた「魂の触診」を開始します。


「……リナ、目を開けて。……君の勇気が、……この樹の最後の希望なんだ」


聖鍼師の右腕が放つ翡翠の閃光。

枯死の運命を覆す、神域の処方箋が今、書き記されます。

火曜日のラスト、魂の共鳴が起こす奇跡をどうぞ!

 黄金の巨樹「生命の樹」の内側は、外世界の美しさとは裏腹に、どす黒い粘着質な気が渦巻く「地獄の底」のような光景だった。

 くるるがリナの開いた「扉」から右手を差し入れた瞬間、その腕を数千、数万もの「黒い手」が掴みかかってくる。それは、この樹が肩代わりしてきた数え切れないほどの人々の、病への恐怖、死への未練、そして裏切られた希望の残滓だった。


「……ぐ、……あ……、……っ!!」

 枢の翡翠眼ひすいがんが激しく明滅し、鼻から一筋の血が流れる。

 精神を直撃する負の波動。だが、枢の右腕――龍神の力とサロメの劇薬が融合したその「神の手」は、その濁流を真っ向から受け止め、逆にそれらを「燃料」として翡翠色の光を強めていた。


「……くるる、……さん……。……もう、……離して……。……私が、……私がこのまま……全部持っていくから……」

 リナの意識は、すでに樹の広大な記憶ネットワークに接続され、彼女の存在そのものが希釈されようとしていた。彼女の肌からは黄金の鱗のようなものが浮き上がり、人間としての境界線が崩れ始めている。


「……馬鹿なことを言わないでください、リナ! ……君がいなければ、……誰がこの樹の『新しい息吹』を導くというんですか! ……君は、……私の大事な、……最高の助手なんですよ!」


 枢は叫び、リナの腰を強く引き寄せた。

 彼の右指が、リナの腹部、臍の下にある**『関元かんげん』**を正確に弾き出した。


 ツボとしての『関元』は、いわゆる「丹田たんでん」の中心に位置し、人が本来持つ「原気」を蓄える最も重要な貯蔵庫だ。ここは生命力の根源であり、外部からの邪気に呑まれそうな時、自らの魂を現世に繋ぎ止めるための「いかり」の役割を果たす。


「……聖鍼流、神域守護術――『関元かんげん不滅ふめつ灯火ともしび』!」


 枢の右指が、鍼を使わず、直接リナの『関元』へと「気の衝撃」を叩き込んだ。

 ボォォォォンッ!!

 リナの体内の深い場所で、小さな火が灯った。それは彼女自身の「生きたい」という意志の灯火。

 黒い霧が彼女の身体から一気に弾き飛ばされ、リナの瞳に鮮やかな光が戻った。


「……あ、……あぁ……っ! ……くるる……さん! ……ごめんなさい、……私、……弱気になっちゃって……」


「……いいえ、……よく耐えました。……さあ、……あそこの『腫瘍』を、……終わらせましょう」


 枢が指差したのは、樹の心臓部で脈動する、巨大な黒い塊。

 それは不定形の姿をしていたが、時折、巨大な「蛇」のような顔を覗かせる。世界を喰らう怪物、ヨルムンガンドの幼体――あるいは、樹の病が具現化した「呪いの心臓」だ。


「……あいつが、……この樹を殺そうとしている犯人です。……あれを消滅させるには、……外からの力では足りない。……リナ、……君の祈りを、……私の鍼に乗せてください!」


「……はい! ……私、……信じてるから! ……この樹を、……そして、……くるるさんの医術を!」


 リナが枢の右腕に両手を添える。

 彼女から溢れ出す、純粋な「再生」の魔力。それが枢の翡翠色の気と混ざり合い、一本の巨大な、実体を持たない「光の神鍼」へと姿を変えた。


 枢は、目を見開いた。

 もはや翡翠眼さえ必要ない。

 今、この瞬間、枢は生命の樹そのものと、そして隣にいるリナと、完全に「一対」の生命体となっていた。


(……見えた。……世界の気の『終着点』であり、……『出発点』。……そこを正せば、……因果は反転する!)


 枢は、黒い蛇の心臓部、まさに全エネルギーが収束する「零地点」へと突進した。

 狙うは、神域の究極穴――**『神欠しんけつ』**の虚無。


 本来、人における『神欠(神厥)』は「へそ」そのものを指し、母体から命を受け取る「生命の門」だ。枢はこの概念を逆に捉え、樹に溜まった数千年の死の気を、母なる大地へと還すための「排出口」として再定義した。


「……聖鍼流、次元超越奥義――『神欠しんけつ輪廻りんねの還流』!」


 ドォォォォォォォンッ!!

 神殿の外部にまで響き渡る、凄まじい衝撃波。

 枢の光の鍼が、黒い蛇の核を真っ向から貫いた。

 蛇は悲鳴を上げることさえ許されず、内側から翡翠色の光に焼き尽くされていく。


 溜まりに溜まっていた「病の澱」が、枢の右腕を通じて、肥沃な大地を潤す「恵みの雨」のようなエネルギーへと変換され、樹の根元へと流れ込んでいく。

 黄金の枯葉が落ち、そこから瑞々しい、透き通るようなみどりの新芽が一斉に吹き出した。


「……やった、……のか?」

 外部で魔物たちを退けていたカザンが、驚きと共に上空を見上げた。

 樹から放たれていた重苦しい黄金のプレッシャーが消え、そこにはただ、清涼な、生きる喜びを歌うような空気が流れていた。


 樹の内部。

 枢とリナは、倒れ込むように重なり合い、荒い息を吐いていた。

 枢の右腕は、もはや光ってはいない。だが、そこには確かな「温もり」が戻っていた。


「……くるるさん、……見て。……樹が、……笑ってる」

 リナが指差した先。樹の心臓部は、柔らかな翡翠色の光を放ち、規則正しく、力強く拍動していた。


 しかし、その光の中に、一つの影が降り立った。

 白銀の翼を広げ、氷のような冷徹な瞳を持つ、天界の最高指導者の一人。

「……見事だ、聖鍼師。……だが、……神の樹を『改造』した罪は、……万死に値する」


 現れたのは、ミカエルさえも跪く天界の法典守護者。

 第5部、本当の決戦は、この「再生の瞬間」にこそ牙を剥いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


生命の樹の治療、完遂……!

と思われた瞬間、更なる強敵の登場です。くるるさんとリナさんの「二人三脚」での一刺しは、本作の中でも屈指の熱いシーンになりました。

リナさんが自分の使命を受け入れつつ、枢さんに救われる姿に、筆が乗りすぎてしまいました。


今回登場した**『関元かんげん』**。

おへその下にあるこのツボは、まさに「生命力のバッテリー」です。枢さんはここに喝を入れることで、リナさんの魂を現実へと呼び戻しました。


次回、第118話は明日、3月11日(水)08:00に更新予定です!


天界の法典守護者との対峙。

消耗しきった一行に、勝ち目はあるのか?

そして、サロメが懐に隠していた「最後の手札」が、聖域のパワーバランスを根底から覆します!


「枢さんとリナちゃんの共闘、最高に尊かったです!」

「最後に出てきた天使、強キャラ感が半端ない……」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!


それでは、また明日の朝、さらに加速する物語でお会いしましょう!

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