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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第108話:逆転の劇薬、黒龍を穿つ毒の牙

お読みいただきありがとうございます!


突如として現れた禍々しき「黒き龍」。

それは天界の意志そのものであり、不浄を焼き払う絶対的な審判でした。

自らの命を削り、動くことすらままならないくるるの前に、冷酷な爪が迫ります。


しかし、そこで動いたのは「毒婦」と蔑まれた女医、サロメ。

「あんたを死なせたら、私のプライドが許さないのよ!」

天界の劇薬と聖鍼師の技術が交差する、反撃の狼煙が上がります。


日曜日の夕方、加速するドラマをお楽しみください!

 神殿の天井を粉砕し、姿を現した黒龍の巨躯は、存在そのものが「世界の拒絶」を具現化したかのようだった。その瞳は濁った紫に燃え、吐き出す息は周囲の白亜の壁を瞬時に腐食させていく。

 くるるは、リナの腕の中で荒い呼吸を繰り返していた。白髪が混じったその姿は、あまりに痛々しく、翡翠眼ひすいがんも光を失いかけている。


「……ククッ、終わりの時間だ、枢君。黒龍様は、天界の秩序を乱す不純物を決して許さない。君が救った大司教も、君自身も、ここで等しく無に還るのだよ」

 ミカエルが勝ち誇ったように宣告し、黒龍がその巨大なあぎとを開いた。凝縮される漆黒の魔力。それは神殿ごと全てを消し去る「終焉の咆哮ブレス」の前触れだった。


「……させない……絶対に、枢さんを連れて行かせない!」

 リナが震える手で杖を掲げ、残された魔力の全てを防御結界に注ぎ込む。カザンもまた、折れかけた槍を支えに立ち上がり、枢の前に仁王立ちとなった。

「……ケッ、トカゲの分際で偉そうに。俺の身体を食い破りたきゃ、先にその汚ねえ喉を差し出しな!」


 だが、絶望的な戦力差は明白だった。黒龍のプレッシャーだけで、二人の身体は押し潰されそうになる。

 その時、戦場の空気を切り裂くように、一人の女が悠然と歩み出た。


「……どきなさいよ、あんたたち。ここから先は、地上の『汚れた医者』の出番なのよ」

 サロメだった。彼女はいつもの不敵な笑みを消し、その瞳にはかつてないほどの冷徹な決意が宿っていた。彼女の手には、一本の不気味な紫色の液体が満たされた巨大な注射器が握られている。


「……サロメ、何を……。それは、天界から盗み出した『龍血の毒』じゃないか!?」

 ミカエルが驚愕に目を見開く。


「……そうよ。天界の住人が触れれば即座に細胞が自壊する、あんたたちが封印した『最悪の廃棄物』。……でもね、ミカエル。この毒は、強すぎる『再生』を抑制する唯一の特効薬でもあるのよ!」


 サロメは躊躇なく、その猛毒の針を、自身の腕ではなく、枢の首筋にある**『大椎だいつい』**のツボへと打ち込んだ。


「……がっ、あぁぁぁ……っ!!」

 枢の身体が激しく仰け反る。猛毒が血管を駆け巡り、彼の白くなった髪が再び翡翠の色を取り戻していく。だが、それは回復ではない。毒の力で強制的に生命活動を限界突破させる、死のドーピングだった。


 ツボとしての『大椎』は、首の付け根、第七頸椎の下に位置し、「諸陽の会」と呼ばれる陽の気が集まる最重要拠点だ。ここは熱病を払い、全身の巡りを一気に加速させる場所。サロメはあえてここに猛毒を流し込むことで、枢の体内に残っていた「龍神の拒絶反応」を毒で相殺し、眠っていた翡翠眼を強制起動させたのだ。


「……枢! 寝てる暇なんてないわよ! あんたの鍼で、そのトカゲの『詰まり』を流してきなさい!」


 サロメの叫びと共に、枢の瞳がカッと見開かれた。その輝きは、以前よりも深く、鋭い。

 毒による激痛が全身を蝕む。しかし、その痛みこそが、枢に「生」の感覚を呼び戻していた。


「……ありがとうございます、サロメさん。……この命、最後の瞬間まで、使い切らせてもらいます!」


 枢はリナの手を離れ、重力を無視したような動きで宙を舞った。

 黒龍が放ったブレス。それは神殿の半分を消失させたが、枢はすでにその上空、龍の眉間へと肉薄していた。

 彼の手に握られているのは、先代から受け継いだ「虚空鍼」にサロメの劇薬を塗布した、紫電を纏う一刺し。


「……ミカエル。あなたは、命を燃料にしました。……ですが私は、命を『加速』させる。……それが、絶望という名の病を打ち破る、唯一の手段です!」


 枢の鍼が、黒龍の硬質な鱗を透過するように突き刺さった。

 狙ったのは、龍の魔力の循環を司る、眉間の奥の「神の回路」。


「……聖鍼流、天界禁忌――『大椎だいつい万毒ばんどくの浄化』!」


 ドォォォォォンッ!!

 黒龍の体内から、紫色の雷光が噴き出した。龍の咆哮は悲鳴へと変わり、その巨躯が内側から崩壊を始める。毒をもって毒を制し、龍神の呪いそのものを「過剰摂取」させることで自滅させる。それは、聖鍼師と毒婦が手を組んで初めて成し遂げた、奇跡の往診だった。


「……ば、馬鹿な……。龍神様が、人間の毒に屈するだと……!?」

 ミカエルが腰を抜かし、崩れ落ちる。


 黒龍は光の塵となって消え去り、神殿には再び静寂が訪れた。

 枢は空中で身を翻し、着地と同時に膝を突いた。全身から立ち上る紫の煙。毒の反動が、彼の肉体を蝕み始めている。


「……終わってないわよ、枢。あんたの中の毒を抜くまでが、私の往診なんだから」

 サロメが駆け寄り、枢の背中に手を当てる。


 しかし、消えゆく黒龍の粒子が、神殿の中央に一つの「扉」を形成した。

 そこから漏れ出す気は、これまでの誰よりも、ヴィクターよりも、ミカエルよりも重く、神聖で、残酷なものだった。


「……ようこそ、不浄なる者たち。我が『心臓』へ……」


 天界の真の主、龍神。

 いよいよ、第一章「天界編」の本当の最深部、龍神の寝所への扉が開かれた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


サロメさんの劇薬による、あまりにも無茶な「蘇生」。

毒を以て毒を制す。聖鍼師としての正道を行くくるるさんと、医術の闇を熟知するサロメさんのコンビネーションが、天界の審判を打ち破りました。


今回登場した**『大椎だいつい』**。

首の付け根にあるこのツボは、風邪の引き始めに温めると良いとされる場所ですが、東洋医学では全身の陽気をコントロールする要の場所です。枢さんはここに猛毒を打ち込むことで、死にかけた肉体を強制的に再起動させました。


次回、第109話は本日ラスト**【21:00】**に更新予定です!


扉の先に待つ、天界の王・龍神。

その正体は、数千年前に枢の先祖と「ある契約」を交わした、悲しき存在でした。

そして、枢の身体に異変が……。


「サロメさん、格好良すぎて惚れた!」

「枢さん、毒でボロボロなのに強すぎる……」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!

本日最後の更新、絶対にお見逃しなく!

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