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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第107話:魂の共鳴、絶望を溶かす翡翠の火

お読みいただきありがとうございます!


寿命を燃やし、止まらない暴走を続ける大司教ザカリアス。

天界の筆頭医官ミカエルが仕掛けた「命の兵器化」という最悪の術式を前に、くるるは前代未聞の治療法を選択します。


それは、自身の経絡を患者と繋ぎ、暴走する魔力を肩代わりする「命の共鳴」。

一歩間違えれば二人共に消滅する極限の往診が始まります。


日曜日の午後、聖鍼師の真髄が天界の空を焦がします!

 黄金の血を撒き散らしながら、大司教ザカリアスの肉体がさらに膨張していく。ミカエルが起動させた『生命燃焼』の術式は、ザカリアスの細胞を限界まで活性化させ、その代償として存在そのものを灰へと変えていく。もはや、彼から放たれる気は「命」の輝きではなく、死へ向かうための「最後の炎」だった。


「……ハハハ! 見たまえ枢君、この美しき崩壊を! これこそが、天界医術が到達した『究極の効率』だ。死ぬ運命にある患者を、最後の瞬間まで有用な駒として使い切る。これこそが合理的な救済ではないか!」

 ミカエルが狂気混じりの笑みを浮かべる中、くるるは自身の神鍼を強く握りしめた。


「……ミカエル。あなたは、医者の皮を被った死神だ」

 枢の声は、地を這うような静かな怒りに満ちていた。彼は往診バッグから、半透明の翡翠でできた一対の鍼「連理鍼れんりしん」を取り出した。これは、二人の人間の経絡を一時的に連結し、気を分け与えるための「禁忌の救命鍼」だ。


「……枢さん、まさか……! 自分の命を、あの怪物に流し込むつもりですか!?」

 リナの悲鳴のような叫びに、枢は振り返らずに答えた。

「……リナ、カザンさん。彼を『怪物』のまま死なせてはいけない。彼は、天界を愛し、人々を守ろうとした一人の『患者』です。……彼の代わりに、私がその『燃焼』を受け止めます!」


 枢はザカリアスの猛攻を掻い潜り、黄金の蒸気が立ち込めるその懐へと再び飛び込んだ。

 狙うは、胸骨のちょうど中心にある**『華蓋かがい』**。


 ツボとしての『華蓋』は、肺の上に位置し、心臓を守る「華やかな蓋」という意味を持つ。ここは感情の昂ぶりを鎮め、乱れた呼吸と気の流れを整えるための要衝だ。ミカエルはこの蓋を無理やりこじ開け、生命力を噴出させていた。ならば、枢自身の気を「蓋」として重ねるしかない。


「……聖鍼流、天界術奥義――『華蓋かがい比翼ひよくの共鳴』!」


 枢が自身の左胸に一本地の鍼を打ち込み、同時にもう一本をザカリアスの『華蓋』へと深々と突き立てた。

 グォォォォォンッ!!

 神殿全体が震えるほどの衝撃波。枢の身体を、ザカリアスの体内から逆流してきた灼熱の魔力が駆け抜ける。


「……ぐ、ぅあ、ぁぁぁ……っ!!」

 枢の目、鼻、口から鮮血が噴き出す。だが、彼は鍼から手を離さない。

 彼の翡翠眼ひすいがんは、ザカリアスの魂の深淵で、ミカエルの術式に縛られ、恐怖に震えている老人の意識を見つけ出していた。


「……ザカリアス様……、聞こえますか……。……一人で、……燃え尽きさせはしません。……私の命が、……あなたの痛みを半分引き受けます……。だから、……自分を取り戻してください!」


 枢から流れ込む、穏やかで力強い「医者の気」。

 それが、ザカリアスの体内で暴れ狂っていた黄金の炎を、次第に翡翠色の優しい光へと変えていく。

 不自然に膨張していた筋肉が収縮し、漆黒の鱗がボロボロと崩れ落ちていく。


「……な、……馬鹿な! 私の術式を……、『共感』ごときで上書きしたというのか!?」

 ミカエルの顔から余裕が消え、初めて焦燥の色が浮かんだ。


 だが、代償はあまりにも大きかった。

 ザカリアスの暴走を止めた瞬間、枢は全身の血管が弾けるような激痛に襲われ、その場に崩れ落ちた。彼の翡翠色の髪は、極度の生命力消費により、一房、また一房と白く染まっていく。


「……枢さん!!」

 リナが駆け寄り、枢を抱きかかえる。

 大司教ザカリアスは、本来の老人の姿に戻り、力なく横たわっていた。その瞳には、かつての威厳ではなく、救われたことへの深い困惑と涙があった。


「……ククッ、……素晴らしい。実に素晴らしいデータだ、枢君」

 ミカエルが拍手をしながら、ゆっくりと歩み寄る。

「……自らの命を削ってまで、一人の老人を救うか。……だが、見てごらん。君はもうボロボロだ。……これなら、私が直接手を下すまでもない。……おっと、忘れていたよ。……天界の王、龍神様は、……自らの駒が『不浄なる地上人』に救われることを、何よりも嫌悪されるのだということをね」


 神殿の天井が真っ二つに割れ、そこから先ほどまで枢たちが乗っていた黄金の龍とは比較にならない、禍々しい「黒き龍」の影が降りてきた。


「……さあ、枢君。……あなたの往診は、……ここからが本当の地獄だ」


 動けない枢。崩壊する神殿。

 そして現れた、天界の真の支配者の影。

 絶体絶命の聖鍼師に、残された手立てはあるのか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


自らの命を賭して、ザカリアスを救ったくるるさん。

医術とは単なる技術ではなく、患者と痛みを分かち合う「覚悟」であることを、彼はその身をもって証明しました。しかし、その代償はあまりにも大きく、枢さんは瀕死の重傷を負ってしまいます。


今回登場した**『華蓋かがい』**。

胸の上部にあるこのツボは、気管支の不調だけでなく、精神的な圧迫感を和らげる効果もあります。枢さんはここに自分と患者の「絆」を繋ぐことで、術式の暴走を食い止めました。


次回、第108話は本日**【18:00】**に更新予定です!


窮地の枢を救うべく、カザンとリナが「天界の禁忌」を破る決断をします。

そして、サロメが隠し持っていた、天界の毒を中和する「最終兵器」とは!?


「枢さん、白髪混じりになっちゃうなんて……(涙)」

「ミカエル、どこまでもゲスい! 黒龍まで呼ぶなんて!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!

夕方の更新も、どうぞお見逃しなく!

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