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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第100話:百夜の果て、断絶された血脈の再会

お読みいただき、本当にありがとうございます。


皆様に応援いただき、ついに連載第100話を迎えることができました!

聖鍼師・くるるの旅は、ここから最大の転換点を迎えます。


聖山アピスの険しい山道を往く一行の前に現れたのは、かつて旧大陸で命を落としたはずの、枢の唯一の肉親……。

偽りの命か、それとも残酷な再会か。

記念すべき100話目。物語の「核」に触れる衝撃回、どうぞお楽しみください!

 連なる峻険な岩肌。聖山アピスの登山道は、雲を突き抜け、天空へと至る巨大な階段のようだった。

 ポート・レオンを後にして三日。くるるたちの周囲は、もはや緑もなく、ただ吹き荒れる凍てつく風と、不気味なほどに白い岩石だけが広がる異界と化していた。


「……ケッ、……息が苦しいぜ。……魔力で身体を強化してなきゃ、……今頃肺が破裂してるところだ」

 カザンが肩で息をしながら、槍を杖代わりに一歩一歩踏みしめる。リナもまた、薄い酸素の中で「呼吸の加護」を維持し続けるため、その額には大粒の汗が浮かんでいた。


 だが、先頭を歩く枢の足取りは、不思議なほどに軽やかだった。

 彼の翡翠眼ひすいがんは、山頂から流れ落ちてくる「巨大な気の奔流」を捉えていた。それは、何万、何十万という人々の命の波長を強引に束ね、一つの巨大な「臓器」のように脈動している、悍ましいまでの生命エネルギーだった。


「……待ってください。……誰か、……あそこにいます」

 枢が足を止めた。

 標高四千メートル、人間が生存することすら拒絶される極限の地。霧の晴れ間に、一人の人物が岩場に腰掛けていた。


 その人物は、古びた、だが丁寧に繕われた「鍼師の法衣」を纏っていた。

 枢の呼吸が、一瞬で止まった。その法衣の意匠、背中に刻まれた一輪の蓮の紋章……。それは、枢がかつて旧大陸で師事し、そして自分の目の前で命を散らしたはずの男が愛用していたものだった。


「……まさか。……そんな、……あり得ない。……父さん……なのか?」


 枢の震える声に、その人物がゆっくりと振り返った。

 そこには、枢の記憶の中にある姿よりも少しだけ老け、だが眼光だけは鋭く、深い知性を湛えた男の顔があった。枢の父であり、先代の聖鍼師・れん

 彼は十年前に起きた「大疫病」の際、村人を救うために自身の全生命力を鍼に込め、枢に見守られながら静かに息を引き取ったはずだった。


「……大きくなったな、枢。……その翡翠眼の輝きを見るに、……私の遺した神鍼を、……正しく使いこなしているようだな」


「……父さん! ……本当に、……本当に父さんなんですか!? ……でも、……あの日、……私は確かにあなたの最期を……!」

 枢が駆け寄ろうとするが、サロメがその腕を強く掴んで引き止めた。


「……待って、枢! ……騙されないで! ……彼の身体からは、……人間らしい気が一つも感じられないわ! ……これは、……ヴィクターが作った『最高級の死体』よ!」


「……死体、だと……?」

 枢は絶句し、再び翡翠眼を凝らした。

 確かに、連の肉体は温かく、呼吸もしている。だが、その経絡を流れているのは「自分の気」ではなかった。山頂の増幅炉から供給される、無機質な魔力によって強制的に動かされている、精密な「肉体人形」……。


「……フフ、……死体、か。……サロメ、……君の相変わらずな短絡的な見方には辟易するよ」

 連の唇が、滑らかに動き、言葉を紡ぐ。

「……私はヴィクターの手によって、……『死の限界』を超越したのだ。……枢よ。……人間は脆い。……一刺しのミス、……一粒の毒で、……簡単にその尊い医術が失われてしまう。……だが、……この不朽の肉体があれば、……我々は永遠に人を救い続けることができる。……これこそが、……我ら一族が求めた『医の完成形』ではないか?」


「……違う。……そんなのは、……父さんの言葉じゃない!」

 枢は神鍼を抜き、目の前の「最愛の幻」へと向けた。

「……私の知る父さんは、……枯れていく命の尊さを教えてくれた! ……失われるからこそ、……今この瞬間の鼓動に、……全力で向き合えと教えてくれたんだ! ……それを、……死なない操り人形になって肯定するなんて……、私は絶対に認めない!」


「……悲しいな、枢。……ならば、……私の教えがどれほど正しかったか、……その身に直接刻んでやろう。……聖鍼流・秘伝――『白虎びゃっこの連刺』!」


 連の指先から、数千本の極細の「魔導鍼」が、まるで光の矢のように放たれた。

 それはかつて枢が幼い頃、一度だけ見せてもらった、先代聖鍼師の究極の技。

 受ければ一瞬で全身の経絡を破壊され、一生動けなくなる「医者の刃」。


「……ぐっ、……カザンさん! リナ! 下がっていてください! ……これは、……私と、……私の中に残る『あの日』との決着です!」


 枢は自身の全身にある**『百会ひゃくえ』**のツボを一気に開放した。

 ツボとしての『百会』は、頭頂部に位置し、たくさんの経絡が交わる「万能のツボ」だ。ここを極限まで活性化させることで、枢は全神経を研ぎ澄ませ、父が放つ光の矢の「軌道」を読み切ろうとした。


「……聖鍼流、真伝――『百会ひゃくえ万華ばんかの盾』!」


 激突する、二つの聖鍼流。

 山肌を削り、霧を裂く、極限の医術対決。

 自分を育て、自分を導いてくれた父を、その手で「再び眠らせる」ことができるのか。


 連載第100話。

 聖鍼師・くるるの、最も過酷で、最も悲しい「往診」が幕を開けた。

ついに、連載100話を達成しました!


ここまで読み進めてくださった皆様、本当に、本当にありがとうございます!

この記念すべき回で、くるるさんの「父」を登場させるのは、連載開始当初からの構想でした。

最も尊敬し、愛した人との、最悪の形での再会。枢さんがどう乗り越えるのか、私も筆が震えました。


今回登場した**『百会ひゃくえ』**。

「百の経絡が会う(集まる)」と言われるこのツボは、まさに全身の司令塔です。枢さんはここに意識を集中させることで、本来なら見切れないはずの神業に対抗しました。


次回、第101話は本日**【15:00】**に更新予定です!


父・連が放つ、慈悲なき一撃。

追い詰められた枢の脳裏に、あの日、父が最後に遺した「未完成の技」の記憶が閃きます。


「100話目にして最大級の衝撃!」

「枢さん、お父さんを救ってあげて……!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマーク、そしてお祝いのコメントをいただけると嬉しいです!

15時の更新も、どうぞお見逃しなく!

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