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そして原作(と原作厨)は動きだす

「ただいま」


 ハイド家の屋敷に帰った俺だが、「おかえり」の声はない。

 ただがらんとしているだけだ。


 母親はオードが幼い頃に亡くなっている。

 父親は屋敷にいないことも多いし、いても俺の扱いは……朝の道場でわかるだろう?


 部屋に戻る途中に、掃除をしているメイドとすれ違ったが、俺に一瞥もくれない。


 オードがどう扱われてたか、我が身で知ると結構「くる」な。


 ゲームでは中盤まではオードの学校での姿しかわからないので、個性的なクラスメイト達に比べて目立たず普通の言動しかしない印象に残らないクラスメイトAって感じのキャラだった。


 濃い味の中にある漬物みたいな、それがオード。

 だからこそ後半の展開で驚かされたのだが、だが家での扱いを知ると、ゲーム後半で敵対するのも納得だ。こんな環境、闇堕ち率95%だよ。


 とはいえ、誰もオードに関心がないなら自由に動きやすいってことでもある。

 そういう意味では悪いことばかりでもない。

 せっかくのヴァイオレット・フェイトの世界だ、色々行ったりやったりしたいし、何より原作どおりに世界が進むようにサポートもしなきゃならない、それが自由にできるのは悪くない。


 サポートか……そのためには、俺が強くならなきゃな。

 正面から戦うだけでも『ヴァイオレット・フェイト』のボスは強いのに、それを誰にも気付かれないように、かつ主人公や他のメインキャラクターがやられないように、という条件付きでイベントに出てくるボスモンスターを倒さなきゃいけないんだ。

 通常の倍の力が必要、通常の倍の速度で強くならなきゃいけない。


 幸いにして今の俺は冒険者学校の生徒だから、強くなれる環境は整ってる。

 あとは俺がどれだけうまくやってどれだけ根性見せるかだ。


「明日からの学校生活、冒険者生活、全身全霊で打ち込む、道はそれだけだ!」




 翌日。

 シェオル冒険者学校へ登校した俺はまず教室へと行った。

 教室はこの世界のも大差ない。違うことは、教室の後ろの壁に掲示されてる内容に、賞金首や危険なモンスターの情報があるくらいだ。


 教室には、ステラやローランは当然として、他にも入学式で見たシキやプラチナ、その他ゲームプレイ時のお馴染みのメンツが各々の席についている。

 そんな俺にとっては神クラスメイトの中で、朝礼があり、まずは座学が始まった。


 座学では教師が冒険者に必要なことをレクチャーしてくれる。

 ダンジョンの構造、武器の特徴、モンスターの生態、薬草と毒草の見分け方。

 冒険者として一人前になるには、ただ強くなるだけでなく、身に着けるべき知識も色々とあるんだな。


 もちろん一日で全てやるわけでもなく、少しずつそれらをやっていく。

 こういう話も面白いし、全然飽きない。


 二時間ほどで座学は終わり、そこからは実技の授業の時間になる。

 ここでは学科を選択し自分で受ける授業を選べる。昨日ステラが言っていたように、戦士・魔術・斥候の3つからで、それにより身につけられるスキルが決まってくる。


「今日は最初だから、レクチャー兼ねて戦士学科をやってもらうぞ。思いっきりしごいてやるからな! あっはっは!」


 指導教官のマリエーヌ=ガロが豪快に笑った。

 赤髪を頭の上で一つにまとめている屈強な女性で1-2の担任教官でもある。

 得物の大斧に手を乗せて、俺たち2組の生徒に実技授業を行っている。


「まあ、戦士系の修練なんて、難しいことはヌキだ。とにかく武器を振り回してりゃ鍛えられるんだよ。ってことで、打ち込み千回! いや万回だ!」


 ええーっと声が上がる。

 さすがに多すぎだろ、てか脳筋過ぎるだろ。


 でもまあ、この先生ってこういう感じだったなと懐かしい感覚になる。

 わかりやすくて好きだったわ。


 さてそれじゃあやりますか。

 学校に用意されている訓練用の武器を手に取り、訓練用人形に打ち込んでいく。

 この武器には戦の星石が入っていて、マリエーヌの言う通り振り回していれば戦士系の素質が伸びてアーツも身につく。


 この世界にはアストラルという神秘の根源があり、それを集める性質をもつ特殊な石が星石と呼ばれている。星石の中には特別なアストラルを蓄えているものもあり、それは人に星の記憶を再現させる。それがアーツや魔術などのスキルであり、シェオル冒険者学校はそういった特別な星石を数多く所有しているため、冒険者はもちろん、それ以外の道に進みたい人でも力を得たい者が集うのだ。


 もちろん星石があればすぐできるわけじゃなく、そこから星の記憶を引き出し自分に定着させるには努力が必要だ。星石にあった行動をとった方が、より力を身につけやすい。

 そのため戦士学科では戦士らしい訓練をする。


「はっ! はっ!」


 ひたすら剣を振っていると、どんどん無心になっていく。

 ただ己と剣だけがあり、徐々に体の内が満たされていくような感覚。


「よし、今日の所はその辺でいいだろう!」


 マリエーヌの声で我に返ると、午前に始めたのにすっかりお昼を回っていた。

 いつのまにこんな時間が、やってみると夢中になってしまうんだな。


「よし、戦士学科は少しはわかったか? 明日は魔術だ、フェリオン先生の言うことちゃんと聞けよー」




 マリエーヌ先生が言ったとおり、翌日は魔術の学科、翌々日は斥候の学科の授業をクラス皆で受けて全員が三種類を一通り経験する。

 どれも貴重な経験ができて充実した三日間だった。次からは各々が自分にあった学科を毎日選択していくことになる。


 ここが、重要なポイントだ。

 俺は原作を遂行するために最速で強くならなければいけない。

 つまり、最も効率的に強くなれるスキルを習得しなければならない。そのために最適な学科を選ぶ必要があり、その学科一本でひたすら鍛えていくつもりだ。

  

 学科を自由に選択できるようになった初日に俺が選ぶのは――。





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