表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/16

全てを乗り越えて

 オードは『ヴァイオレット・フェイト』の原作で死ぬ。

 これは分岐があるイベントではなく、確定で死ぬ。


 学内でも争いが起き、クラスメイトに死者も出るという大きなイベントなので、俺としてはめちゃくちゃ楽しみだけど……。


「だけど……死にたくねえよ」


 当たり前だ。

 俺は原作信者だが、同時に人間だ。

 人間なら死にたくないのは当たり前である。


 だが、俺が生きていては原作が改編されてしまう。

 ヴァイオレット・フェイトを愛する者として、それは許せない。


 人間として生き長らえるか、原作至上主義者の矜恃に殉じるか。

 生きるべきか死ぬべきか。


「……どっちも選べない!」


 当たり前だろ、いくら原作が大事だからって死ねるかよ。

 でも原作を裏切った十字架を背負い、ユダとして生きるのも嫌だ。


 じゃあ、どうすればいいのか。

 この矛盾を解消する方法は――――一つしかない。


「俺が取り得る唯一の選択肢は必然的に唯一に定まる。10月に始まるイベントで死につつ、しかし同時にその後誰にも知られずに生き返る」


 これしかない。

 これならば原作の展開そのままに、またその後の展開も変えずに、かつ俺は生きられる。


 ただ問題は、どうやって生き返るんだっていうことだな。

 これ意外かもしれないけど、実は人間は死んだら生き返れないんだよね。


「ただここはファンタジーの世界だ。魔法もモンスターも魔剣もあるような世界だ。だったら、生き返る方法があったっていい」


 ヴァイオレット・フェイトを周回プレイし知り尽くした俺でも、そんな物は知らない。

 だがこの世界は、ゲームでは描かれなかったところも存在している。

 たとえばオードの屋敷なんて、ゲームでは中に入ることができない場所だったが、そこにもちゃんと物があり、俺の知らないメイドや執事がいた。


 であれば、この世界に俺が知らない復活方法がある可能性も残されている。


 探すんだ、その方法を。

 10月までに、『死をなかったことにする』秘策を探し出す。

 それが俺のこの世界での新たな目標。


「原作通りにする、死なない方法も見つける。両方やらなくっちゃいけないのが転生者の辛いところだな」


 覚悟はできた。

 俺はこの世界の運命を変えずに運命を変える!




 なんとしても生存戦略を立てなければならない。

 俺が生きたいっていうのももちろんだが、もう一つ理由があるんだ。


 あのローランとガーディアンゴーレムとの戦いを思い出して欲しい。

 俺がサポートしなければローランはやられて原作は打ち切りになっていた。


 もし俺が死ねば、その後のサポートは誰がする? オードが死ぬイベントの後も物語は続くんだ。

 むしろ終盤に入ってより強力なボスが主人公達の前に立ちはだかる。そこを切り抜けさせるためにも、俺は生き続けなければならない。

 エンディングを迎えるまでは、なんとしても。


 俺が生存する方法を探すため、場合によっては危険なダンジョンなどにもいく必要があるだろう。そこでは強力なモンスターもいるだろう。それに勝てるだけの力が必要だ。


「また力か!」


 この前みたいにローランのボス戦見守りもしなきゃいけないし、ボスはどんどん強くなるし、俺の生き死に以前に10月になる前に話が終わってしまったら元も子もないし。


 つまり、とにもかくにも今の俺には力が必要ってことだな。

 原作の守護者としても、俺が生存するためにも、どっちのためにも強力な力が。

 そうと決まればより一層の修行が必要だ。


「ええと……修行して強くなる、死をなかったことにできる方法を見つける、各イベントの補助をする、はあああやること多すぎるうううう!」


 うおおああああ頭がパンクしそうだ! 

 何からどこから手をつけりゃいいんだ!

 ちゃんと整理しないとこんなタスクこなせないよ!

 ToDoリスト必須だよ!


「……ふぅ~~。取り乱してしまったぜ。デカルト曰く困難は分割せよ、だ。一つ一つ、だな。一つ一つ。というわけでまず一つ、一番大事なことからだ。それは当然、原作。絶対抑えておくべき原作メインストーリーの予定、直近の予定からはっきりさせよう」


 原作のイベントが起きる人はそれが最優先。

 つまりそこからスケジュールを構築していかないと後で破綻する。


 俺は記憶の中のイベントカレンダーをめくっていく。

 今日、明日、明後日…………。


◆4月22日 ローランが冒険者ギルドに登録し、そこに併設された鍛冶屋と契約する。


 そうだ、まずはこれだ。

 シェオル冒険者学校は、学んだ後に冒険者になる所ではない。

 実際に冒険者をやりながら、同時に学び修練するための学び舎だ。


 つまり、生徒は同時に冒険者でもある。

 そのため、セントラードにある冒険者ギルドに登録する。

 それをやる日が22日。

 これ以降、ゲームではギルドで依頼を受けたり色々なものを買い取ってもらったりということができて、本格的に冒険者活動が始まる。 


 またギルド専属の鍛冶屋に認められて、素材から色々なものを作ってもらえるようにもなる。ここは是非見たいな、学校の外のキャラクターに会えるし。

 ギルドの入団試験として鍛冶屋の依頼をこなす――その内容は不足してる火入れのための魔石炭を手に入れるというものがある。

 ここは戦闘はなかったが、埋まってる場所を見つけること自体がクエストのようなもの。危険ではなかったと思うが、しかしメインシナリオに関わるところだ、しっかり見守ろう。




 さて、その先のイベントは…………。

 23日、24日、25日……。


「……なんてこった、そうだ、あれがあるじゃないか」


◆4月30日 ルナティック


 4月30日、俺は恐ろしいことを思い出してしまった。


 入学から一ヶ月、初めての大規模イベント、そして最初の壁ボス戦。


「それがルナティックと呼ばれるモンスターが荒れ狂い町を侵略してくる現象」


 稀に起きるこの現象がこのセントラードの町で発生する。


 セントラードの町のいたるところにモンスターが襲撃をしかけてきて、衛兵達では足りず冒険者学校の生徒達も駆り出され町を守るというイベントだ。


 強力なモンスターとの戦いがあるのはもちろんだが、俺がぞっとしたのは、それが「一つじゃない」からだ。


 主人公ローランだけでなく、ステラもシキもプラチナも、メインキャラクター達みんなが普段出現しないような凶悪なモンスターと戦う。


 そしてこのルナティックイベントでは、ローラン以外のキャラクターもプレイヤーが操作してモンスターとの戦いを切り抜けなければならなかったのだ。

 そして例によって俺は初見プレイでその全てを突破できたわけではない。

 つまり、


「4月30日に俺は全てをサポートし、全ての人を護り、全てに勝利し、それら全ては俺だと知られずに行わなければならない」




 これまで応援ありがとうございました!

 オード先生の次回作にご期待ください!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ