婚約者を奪った妹がめちゃくちゃ生き生きしてる件
今回は、“妹に婚約者を奪われた姉”の王道ストーリー……かと思いきや!?
ちょっぴり違うテイストをお届け。最後まで読んでいただけたら嬉しいです(o´∀o)
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煌びやかなシャンデリアの下、今宵も華やかな舞踏会が開かれている。
楽団が奏でる優雅なワルツにあわせて、貴族たちがカラフルなドレスをまとい踊る姿は華やかそのものだ。
そんな中、男たちの笑顔と賛辞を妹のロザリーが集めていた。
淡いピンクのドレスをふわりと揺らしてダンスする姿は、とても愛らしく、男性ならずとも目をくぎ付けにする魅力がある。
(あの子は、いつも人気ね)
姉のセラフィーヌは、積極的に社交をする妹のロザリーがちょっぴり羨ましい。
(私も話ベタでなければ、楽しいでしょうけどね。……それより、ジュール様はどこに行ったのかしら?)
セラフィーヌの婚約者であるジュールは1年前に婚約を結んだばかりだった。この婚約者も妹のように社交的で友人が多い。誰かと話しているのだろう。
「あ、ジュール様!」
シャンパングラスを片手に歩いている姿を見つけて声をかけようとした。だが、彼はそれに気づかず足早にロザリーの元へと近寄って行き、グラスを彼女に渡す。
グラスを受け取ったロザリーは花のように微笑んで、すぐにジュールも笑顔になった。
それを見て、セラフィーヌはピンときてしまった。
(もしかしてあの人たちは……)
彼女の予感はすぐに当たった。
――目の前にかしこまって座るロザリーとジュールがいる。
姉妹たちの実家、ラフォン子爵家の応接室だった。
両親も彼らを囲むように座っている。父が口を開いた。
「ジュール君はロザリーと婚約し直したいと言っている。セラフィーヌ、ここはそうしてくれるか?」
いつも威圧的で姉妹の意見など聞かない人なのに、ジュールが伯爵家の長男であるため、父は珍しく丁寧な口ぶりだ。
「お姉様、ごめんね!ジュール様は今、私にとって必要な人なの。だから、私に譲って!」
「セラフィーヌ、すまない。そういうわけなんだ。僕としてもこんなに強く望まれたら応えないわけにいかないよ」
ジュールは前髪をかき上げながら言う。
普段はその仕草が都会っぽくてステキだな、なんて思っていたのに、こうなった今では単なるキザ男にしか見えない。
母の方を見ると、止める気配はなくてジュールに笑顔で応対していた。
「皆、納得しているというわけですね?」
「まあ、そういうことだ」
父が決定事項ということでまとめてしまった。
「……分かりました。私からも、2人の幸せをお祈りいたしますわ」
セラフィーヌは、精一杯の微笑みを作って立ち上がる。胸の奥が痛くて早くその場から逃げたくなる。
「よかった~! ありがとうお姉様!」
「セラフィーヌ、僕たちは幸せになるよ」
「理解のある姉で偉いわ」
「よくできた子だ」
ロザリーも、ジュールも、そして両親も皆、笑顔だった。
セラフィーヌはなんとか踵を返して部屋へと戻り、机に突っ伏す。彼らの笑い声だけが屋敷に響いていた。
――その夜、泣きつかれて月でも眺めようと窓を覗くと、外を歩くロザリーの姿が見えた。
小屋の方へと歩いて行く。
(こんな時間になぜ小屋へ?)
すると、小屋から男が出てきた。男はジュールではない。
彼らは言葉を交わすと小屋に入ってしまった。
(ジュールではない男性となぜ一緒にいるの?)
じっと小屋から出て来るのを窓から伺っていると、男性がなにやら荷物を担いで出て行った。ロザリーは屋敷へと戻る。
ロザリーに事情を聞きたい気がしたが、知らぬ間にジュールを骨抜きにしていた妹だ。ほかにもそんな人が少なくないのかも……と自信喪失中のセラフィーヌはあえて聞くことはしなかった。
――だが、数日後、おかしな話を聞いた。
母親に次の婚約者を見つけろと急かされて出席した茶会で、ある令嬢から言われたのだ。
「セラフィーヌ様の妹さんのお店、人気なんですってね。天然石の仕入れからアクセサリーショップ運営までの一括でやられているとか。当然、セラフィーヌ様も関わられているのですわよね?ほら、セラフィーヌ様は計算がお得意ですし」
曖昧にうなずきながら令嬢に聞いた話によると、ロザリーはアクセサリーショップを運営しているらしい。
(あの子、そんなことは一言も言っていなかったわ)
両親もロザリーが商売をしていることを把握している様子はない。
お茶会の帰り道、妹の知らない面を次々と知ったのもあって、馬車の窓を茫然と眺めていた。
ふと通りの向こうに、見覚えのある後ろ姿が見える。
(あれはロザリー……?)
ロザリーは、簡素な外套に身を包み、堂々とした足取りで石畳を進んでいた。手には革製の鞄を下げている。
セラフィーヌは馬車を停めて降りる。驚く従者を置き去りにしてロザリーの跡を追った。
ロザリーが入っていったのは、少し奥まった場所にある小さな店だ。
ガラスの向こうには、色鮮やかな天然石を使ったアクセサリーが並んでいて、ロザリーは職人たちにキビキビとした態度で指示を出していた。
店に入ろうかどうしようか迷っていると、店の中にいるロザリーと偶然にも目が合う。セラフィーヌが慌てていると、ロザリーが店を飛び出してきた。
「お姉様!どうしてここに!?」
「あ、あなたこそ!どうしてここでお店をしているの?」
つい問い詰める口調になってしまう。
「ロザリー、あなたは一体なにをしているというの?……ジュールと婚約して、密かに店も経営して!なんで、なにも話さないのよ!私は姉としてあなたに最大限、理解を示してあげたわ!」
言いながらセラフィーヌは涙が出てきた。
(婚約者だって譲ったし、ロザリーを責めたりなんかもしなかったわ。祝福だってしてあげた。それなのに、これはどういうことなの!)
姉の泣き声に、ロザリーがうろたえたように言う。
「お姉様、とりあえず店に入ろう。事務所があるからそこで詳しく話すよ……」
ロザリーは事務所の扉をしっかり閉じると、語りだした。
「あのね、もう少ししたら話そうと思ってたんだけど、バレちゃったね。まさかお姉様に見つかるとは思ってなくて……それに、そんなに泣くと思ってなかった」
ロザリーはすぐに頭を下げた。
「ごめんなさい。まずはちゃんと謝っておくね」
「謝っておくねってなに?私はあなたのしたいようにさせてあげたわ。なのに心配させて。そんな態度で許されると?」
セラフィーヌは声を震わせた。
「きちんと説明するね!えーとね、まず、ジュールのことから。あの男はね、金ヅルだよ。あいつ、女癖悪いんだ。でも、お金持ち。ということで、この店を出すのに協力させたってわけ。利用しない手はなかったっていうか。そもそも、お姉様には軽薄な男は合わないよ」
「ジュールが軽薄?……確かにそうね。それで、軽薄な男と婚約して満足なの?」
知らない事実を聞いて驚きつつも、ロザリーを心配してしまう。
「そこは心配ないわ。だって、私、恋人いるし。お互い様ってやつね」
「え?それでいいの?恋人って?」
セラフィーヌは呆然と問い返した。
「恋人は私の商売がらみの人。ジュールとは数年後に離婚するつもり。私さ、元々、家を早く出たくてたまらなかったの。それでもって、仕事も恋愛も自由にしたい。だから、お姉様は全然、気にしなくて大丈夫!」
あっけらかんというロザリーに気を失いそうになったセラフィーヌだった。
その後、ロザリーには両親にはなにも言わないでと懇願されたのもあって、ロザリーとジュールの結婚式は予定通り行われた。
結婚後はロザリーの想像通り、ジュールはさっそく愛人をつくって自由に遊んでいたらしい。
元々、浮気願望が高いジュールは、ロザリーが商売をやっていて自由にできると踏んでいたみたいだ。
「ジュールってさ、恋愛バカなんだよね。すぐ燃え上がって飽きるタイプ」
ロザリーはそう言うと、得意気に離縁状を見せてきた。
「あいつに山のような不貞の証拠を見せたら、すぐに離婚に応じてくれたよ♪店も手に入るし最高~!」
ロザリーはたくましかった。
「あなたの恋人の存在は知られなかったの?」
「恋人はアクセサリー職人なの。仕事場で顔を合わせるからバレなかったよ」
「もしかして……うちの小屋に出入りしてたあの人?」
「え?知ってたの?」
いつか見た男がロザリーの恋人だったみたいだ。
とりあえず、妹がものすごく生き生きしているのでホッとしたセラフィーヌだった。
――街のカフェでお茶をしていた。
「君の妹さん、すっごくポジティブだね」
「ええ、ホントに。エネルギッシュすぎて、ついていけないわ」
「でも、オレらを出会わせてくれた」
セラフィーヌの手を取ると、そっと男性がキスする。
ロザリーは、商売がらみで知り合いの子爵家の令息をセラフィーヌに紹介していた。
舞踏会で知り合ったそうで、彼の家は繊維業など幅広く手掛けているのだとか。天然石の輸入元を紹介してくれたそうだ。
『あの人、誠実な人だよ。仕事もできるし、お姉様にオススメ!話してみて』
そう言われて会ってみたのだが、ロザリーの言う通り、誠実で話すにつれて自然と心がほどけていく人だった。見た目もなかなかステキだ。
「妹に感謝するわ。最初はどうなるかと思ったけれど……今ではとても誇らしいわ」
セラフィーヌは心から笑顔になれたのだった。
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