第10話《クレーム対応!合体したら歌いだす看板》
朝のベルナークに、突然オペラが鳴り響いた。
「オ〜〜レは看〜板〜♪ 見〜てくれ〜〜ぃ〜〜〜〜!!」
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい♪ 本日セールは悲しみの始まりィィ!!」
町の雑貨店《トキワ屋》の看板が、突如自我を持ち、歌い出したのだ。
発端は数日前――
「宣伝に元気を」と、合体師ギルド見習いがスピーカー精霊と看板を合体させたことから始まった。
しかし、スピーカー精霊は元・吟遊詩人の“魂の残滓”を宿しており、
今や看板は自律行動+自作自演+自己陶酔型オペラ看板と化してしまった。
【ユル一行とクレームの嵐】
「……うるさい……三日間ずっと歌ってる……」
「もう、うちのパイが売れません!」
「耳が……! 耳がぁぁ……!」
町の人々が泣きながら訴える中、
《依頼掲示板》にはこんな札が張られていた。
依頼:★★★
《クレーム対応!歌いすぎる看板を止めてほしい》
内容:勝手に歌い出し、深夜に演歌、昼にロックを流す暴走看板を止める。
条件:破壊禁止。合体解除も不可。“歌いたい気持ち”を満たすことが攻略の鍵。
報酬:トキワ屋商品券(100G分)/レア音楽素材《ソウルコード・Mi》
備考:「魂に訴えかけるバトルソングをぶつければ静まる可能性あり」
【現場:トキワ屋前】
「ナニヲモトメ〜〜♪ ナニヲナゲ〜〜〜ル!!」
「ここは戦場〜〜♪ 値下げは命取りィィ!!」
ボルト「もうだめだ……こいつ、セリフでラップ挟んできた……」
ポタージュ「音域広すぎて鳥が落ちてきたわよ」
ねむも:「ピィ……!(涙目)」
【ユルの解決案】
「よし……合体で、“こっちの歌”を聴かせよう。魂の合体ソングで、向こうの魂を共鳴させる!」
素材をかき集め、ユルは**「看板の孤独な魂に寄り添う」**曲を作り出す。
使用素材:
・ノワールの“静寂の笛”
・ポタージュの寝起き鼻歌メモ(※無意識)
・ボルトの“テンションだけ”を抽出(魔導理論による)
・ねむもの「うとうと振動」音源
合体スキル発動!
【合体技:ソウル・シンクロナイズ・セレナーデ】
「歌っていいんだよ。ひとりじゃなければ」
ユルが奏でる魂のセレナーデに、看板のスピーカーが震える。
看板:「……わ、わたしの、声が……調和……して……る……!?」
「ありがとう…合体師」
「これからは、朝8時〜10時だけに歌うよ…(法定音量で)」
静寂が戻るベルナーク。
町人たちは、久々に熟睡できた夜を迎えるのだった。
【クリア報酬】
《トキワ屋商品券(100G)》
《音素材:ソウルコード・Mi》
⇒ 特定の魔法楽器と合体させると、感情操作系スキルを習得可能に
称号:《調律の合体師》
⇒ 感情を扱う依頼に+ボーナスがつく(主にペット・歌・NPC関連)
【ちょっと後日談】
看板は現在、「朝の気象予報と軽いジャズ」を流す観光案内係に転職済み。
名前も「ミスター・ミ」として再デビュー。月に一度、看板ライブ開催中。
次回予告:
《高飛車貴族と、合体師のフリーマーケット大作戦!》
一日限定の町フェスで、ユルたちが「合体商品」を売る!が、隣の屋台に出てきたのは、なんと「貴族の“究極融合茶碗”屋台」!?