プチわがままな甘えたい系猫耳美少年くんは、犬耳ちゃんがだーいすき!
「だいだい、だーいすき!」
「…………」
「ねぇ、どうして僕のほう見てくれないの?」
猫耳の少年が犬耳の女の子にひたすら片思いしている小説です。セリフがとても多めで地の文がほとんどありません。セリフ小説(台本形式)に少し似ています。この小説は、pixiv、小説家になろう、カクヨム、pixivFANBOXに投稿しています。
ねぇ、どうして僕のほう見てくれないの?
は? スマホ?
なにそれ。
新しいゲームでもできたの?
ねぇねぇ見せて!
(さんかくの猫耳。金色の髪の毛)
(猫耳の少年が、手を伸ばしてきた)
(焦げ茶色の髪の犬耳の少女――あなたは手を優しく振り払う)
「だめ」
(あなたは一言言うと、スマホの画面を見つめ始めた)
は?
なんでだめなの?
いいじゃん。いいじゃんー!
(長くて細いふわふわの尻尾がぶんぶん揺れている。髪の毛と同じで金色……というかクリーム色の尻尾だ。今自分がスマホで何を見ているか、すっごく見たいんだろうなとあなたは察する)
えっ、プライバシー?
プライバシー的な観点から見るのはNG?
なにそれ。まあ確かにそうかもだけど……。
ねえー!
でもひどくない?
なんで二人きりなのに、楽しく僕と喋ったりお菓子食べたり、ゲームしたりするんじゃなくて、一人でずーっとスマホとにらめっこしてんの?
僕ら友達じゃなかったっけ。
ひどいよう。ひどいー。
えっもしかして、彼氏とか彼女とかそういうやつ?
もしかして、好きな誰かとメッセージみたいな……そういうこと?
(少年が涙目になっている。うるうるした金色の瞳。金色の包み紙で包装されたお菓子みたいな華やかな目だ)
(あなたは彼の目をみてデパートの地下にあるチョコレート屋さんを思い出した。すこし、考え事をする)
うええぇええー!? まさか本当に!?
(ショックだ、という顔をしているが、なぜショックなのだろう。私が誰と付き合おうと、どこの犬耳と仲良くしようと、この猫くんとはまったく無関係な話だろ、とあなたは思う)
悲しいよう……明らかに僕ずーっと団子ちゃんのこと、好きって言ってたのに、なんで返事くれないうえに、ふつうにナチュラルに別の男の子とかと連絡して嬉しそうにしてるの……。
まさか、好きな人って、あの狂犬ってあだ名のポチ太郎先輩じゃないよね?! あんなジャラジャラ金属アクセサリーしてて、校則で禁じられてるのに髪の毛を赤色に染めてて、着てる服にドクロ描いてるし、超絶プレイボーイってウワサだよ!?
やっやめときなよ!
そんなのイヤだ!
団子ちゃんが、あんな野郎と付き合うなんてぜーったいヤダぁぁぁ!
(なんか凄い大げさだな。ていうかドクロの服も髪を染めるのも金属アクセサリーもべつにそこまで不良エピソードじゃないだろ、とあなたは内心ツッコミを入れた。話がどんどん大げさになっていっている……)
えっ。
ただSNSでいいねを押してるだけ?
……なにそれ! どこの馬の骨かもわっかんない連中のご飯投稿とか絶景スポットとか盛ってる自撮りにはいいねするのに、僕の存在にはいいねしてくれない訳!?
やーだー! 僕を愛してよ!
せめて友達でしょ僕を見てよー!
承認欲求爆発して僕スライムになっちゃう! ドロドロになっちゃうから!
「なれば?」
(あなたは言った)
(あなたの見ている画像は美味しそうなおやつの画像だ)
(…………)
(パフェにジャーキーが刺さっているようだ)
(他の種族によく味覚がおかしいとばかにされるけど、あなたは甘いものと塩辛いものが混ざっている食べ物がすきだ)
(少なくとも、ダイエット中のあなたはそのビーフジャーキー・パフェの画像から目が離せない)
(あなたにとってはごちそうだ)
(犬族の旺盛な食欲をあまく満たすような食べ物の画像が、延々とスマホの液晶画面にスクロールされていく)
(少なくとも幼馴染のプリン君とやらなんかよりは、犬族の団子にとっては食べ物の画像を見ることはとても大事なことだった)
(食べたい欲求が強まるだけのような気もするが……)
(あなたはスクロールを続ける)
(画面をタップして、いいねする)
(あなたは骨クッキーを少ししか朝食べなかった。お腹が空いている)
見せてよー!
みーせーてーよぉー!
「しょうがないな」
(あなたは言った。見せたら諦めて飽きてどこかに行くと思ったからだ)
わっ。
なにこれ。グロ……いや、オ、オイシソウダネー!?
(「パフェにビーフジャーキー刺さってんだけど、やば……」と小声で言う猫のプリン君に、あなたはイラッとした)
ははーん。
ダイエット中ってわけか。
だからイライラしてるんだ。
なんで?
別にダイエットなんてしなくて良くない?
あ、好きな人がやっぱり居るの?!
それとも、健康志向に急になっちゃった訳!?
え。夏に水着着たいから?
お腹がぽよぽよだから痩せたい?
あー。
そうなんだ。
まぁ、僕のことキライじゃないなら何でもいいけどさ……。
ねぇ、団子ちゃんって僕のことどう思ってる?
(ズイっと近寄ってきて、猫のプリン君がこちらを見ている)
(とても整った顔面だ)
(中身はちょっと年齢より若干こどもっぽいけど、とあなたは思う)
(…………)
あっ。
あかくなった。
(デリカシーないのかコイツはー?! とあなたは思う)
(でも、顔をそらす)
団子ちゃん。
そうだ、今度そのビーフジャーキー刺さってるパフェ食べに行こうよ。あ、僕は横でふつうの苺パフェ食べるけど。
ウン。それが良いよねっ。
ねっ、今度……その。
僕とデートしてくださいっ。
えー! なにその困ってる顔!
じゃ、じゃあじゃあ、デートじゃなくていいっただ美味しいものそのファミレスに食べに行くだけでいいし。
好きになって欲しいとかデート中はもう言わないからっ、あっ、いや、デートじゃなくって、えっと、エト……!
(猫耳の少年が必死になってなにか言っている)
(美少年の慌てふためきぶりが面白くて、あなたは笑った)
(猫耳のプリン君が、真顔になった)
…………。
…………。…………。
…………。…………。…………。
やっぱ、超可愛い……。
(え? なにが? とあなたは思ったが、猫耳くんはとびきりのスマイルになった)
絶対いっしょに遊びにいこーね!
約束、だよ――?
あっ、ファミレスで食べてる時は、スマホじゃなくて僕のこと見てよね! もっとちゃんと僕の話聞いてよねッ……?!
…………。
へへ。
超楽しみなんだけど!
嬉しい!
(ニャアン、とやけに生々しい嬉しそうな鳴き声をあげた猫耳くんに、犬耳のあなたは、ただ困惑した)
(――この胸の鼓動)
(どきどきする)
(そわそわする)
(こんなに心拍が早まっているのは、どうしてなのだろう……とあなたは思ったが、とりあえずスマホの電源ボタンを押して猫耳くんと話すことにした)
(猫耳くんがそれはそれは嬉しそうにするので、あなたはちょっとだけ、はにかんだ)