姉妹坂 vol.057 可羊子に航、「矢島~。」
昼休みの1年B組。ベランダで外を見ながらの航。
その隣でベランダに背中を付けて教室の中の、
おちゃらけをしている男子を見て、指を差して笑っている敦司、
「かかかか。おぃ、航~~。」
ゆっくりと後ろを向いて、敦司の見ている方向とは違う方向を見て、
ベランダから離れる。
敦司、
「へっ…???わた…。」
そして航の背中を見て敦司、
「えっ、えっ…???」
佐智子と鈴鹿と話をしている可羊子。その席に航。
「あ…の…さ…。」
いきなり佐智子、鈴鹿、可羊子、
「えっ…!!!」
他の女子生徒も、それを見て、
「!!!!!」
可羊子に航、
「矢島~。」
佐智子、鈴鹿、顔を見合わせて、
「……。」
他の女子、
「うそ。」
「えっ…???」
可羊子、思わず目をパチクリ。
「は…、はい…。」
鈴鹿、
「海…野…君…。」
航、口を捻じ曲げて、
「あ…の…さ…。」
今度は頭を掻きながら、
「ん~~…。」
可羊子、
「な…に…か…???」
航、
「その…。あの…。」
可羊子、
「…はい…???」
「た…のみ…が…、ある…ん…だ…けど…さ。」
佐智子、鈴鹿、
「えっ…、えぇぇぇぇぇ。…たの…み…???」
可羊子、ごくりと口の中の物を飲みこんで…。
鈴鹿、
「うそうそうそうそ。やだやだやだ、海野君…???」
航、真剣な顔で。
「ちょっ、ちょっ。ちょっと待って、海野君。そんな、いきなり突然、こんなとこで…。」
思わず航に詰め寄る鈴鹿。
「何、いきなり、頼みって…???ばか。」
航、
「えっ…???」
「あんた、カヨッチの事、考えもしないで…。」
航、
「……。」
佐智子、
「海野君。」
可羊子、
「何を…???」
航、
「矢島…さ…。」
「ばか。海野君、何、考えてんのよ!!!」
声が荒くなる鈴鹿。
可羊子、
「鈴鹿…。」
「何…考えてるって…、小暮…。俺…。…ただ、矢島に…頼みが…。」
「もぅ~~。デリカシーなし!!!!」
航、
「はあ…???…なんの…事…???」
ひそひそしながらの他の生徒たち。中には航の顔を睨みながらの女子も…。
「何やってんだよ、航。」
敦司、航の腕を引っ張りながら。
「矢島さ…。おまえの姉ちゃん、ピアノ…弾くよな。」
その声に佐智子と鈴鹿、
「はっ…???」
可羊子、目をキョトンとさせて、
「へっ…???う…、うん。」
教室に戻ってきたレミ、
「へっ…???何…か…???」
「どれくらい…、ピアノ…弾ける…???」
今度は佐智子と鈴鹿がキョトンとして。
可羊子、
「へっ…???あっ…。いや…、楽譜…見れば、だい…たい…。」
その可羊子の声に航、
「矢島の姉ちゃんのピアノ…。聞かせてくんねぇか…???」
鈴鹿、
「はぃ…???」
レミ、
「何々、一体…何…???鈴鹿…???」
可羊子、
「い…い…、けど…???…でも…。」
敦司、
「わた…。おま…。」
真剣な顔の航。
佐智子、
「海野…くん。」
鈴鹿、
「海野…、あんた…、何を…???」