姉妹坂 vol.056 「ないない。それはねぇ…。ぶん殴られる。」
玄関から出て憲央、
「マジで…。ふたりとも…、彼氏~~???…有り得ねぇだろ…。」
その時、憲央の頭に浮かんだ数人の顔。
そして、いきなり、
「ないないないないない。それはねぇ…。ぶん殴られる。」
「ほぃ、定岡。」
いきなりポンと放り投げられたトマト。
「おっと~~。ん~~。旨そう~~。」
「だろう~~。」
お互い、黄色のコンテナの底を上にして椅子代わりにして座りながら。
そしてトマトをガブリ。
「ん~~。ん~~。旨い、旨い。」
定岡正憲。憲央の父親である。
その正憲の向かいでコンテナに座ってトマトを食べているのが、
正憲の3歳年上の内藤達郎。大学時代の正憲の先輩である。
農業を営みながら、八王子でレストランを経営している。
そして、この内藤達郎が正憲と葵沙の経営している洋食店の契約農家となっている。
トマトを食べながら正憲、
「旨いね~~。さすが達さんと曜さんが作っているだけの事はあるよね~。」
曜とは、達郎の妻、内藤曜子。
達郎より3歳年上の女性である。
達郎、そんな正憲の声に、
「ははは。…まぁな。…で…???どうなの…、店の方…???」
少し照れながら正憲、
「え~~???…まぁね~~。なんとかやってますよ~~。カミさんの尻に敷かれながら…。」
「かかかか。そうか、そうか。ん。それに限る。男はカミさんの尻に敷かれて強くなるって。」
そして一呼吸置いて。
「しっかし、こんな髭面のヤツに、なんで惹かれたのか、20年以上経っても不思議だぜ、葵ちゃん。それに、子供たちなんて、葵に、亜葵蘭なんか、まるでモデルみたいに、今じゃ綺麗になって。憲央だって、高校3年。女にモテるんじゃねぇの…。なんだか、トンビが鷹を産んだ…。」
「だ~れが、トンビが鷹を産んだですって~~。もぅ~~。達っちゃ~~ん。」
その声にいきなり、
「ぶっ。」
と吹き出す達郎。
「や~~っべ。」
後ろを振り向きながら、
「かかかか。葵ちゃん、いたの…???」
「葵ちゃん、言ってやって。言ってやって。」
葵沙の後ろからビニールハウスから出てきた曜子。
「正憲~~。葵ちゃんの持っているの、持ってってね~~。あと、まだハウスの中にあるから。それもよ~~。」
コンテナから立ち上がって、
「ありがとうございま~す。すんません。」
正憲。
「ほい、パパ。凄いよ。最高~~。うん。」
にっこりと葵紗。
「正憲~~。凄いじゃん、お店の方、流行ってんじゃん。」
曜子。
そんな曜子に正憲、
「へへへへ。お蔭様で…。まぁ~。カミさんで持っているような…もんです。はい。」
そんな正憲にオウム返しのように曜子、
「だよね~~。こ~んな可愛い奥さんのお店だもん。当然よね~~。」
正憲、いきなりガクっと。
「あら…。」
そして、
「まぁ…。当たっているだけ…。キツイわ。かかかかかか。…一応…。俺…。3つ、歳…下…なんすけど…。」
自分に指を差して。
「うん。達郎も私の3つ下~~。」
と、にっこりの曜子。




