姉妹坂 vol.004 「いよいよだな、龍ちゃん。」
そして、龍平の送別会。
「いよいよだな、龍ちゃん。」
部長の飯田。隣に座って日本酒を飲みながら。
龍平、
「部長には、お世話になりました。心から感謝します。」
「な~に言ってやがんでぃ。おまえさんがこっち来なかったら、こんな風にゃ、なってねぇよ。おまえさんの人望だわ。かかかか。」
興和不動産。
本社は東京新宿。本店を東京荻窪に構え、全国に凡そ20の支店を持っている。
更には海外にもロサンゼルスに営業所を構えている。
矢島龍平、本社に入社して数年後には課長就任。それと同時に結婚。
その2年後に妻の可燐が長女、可南子を出産、そして2年後に次女の可羊子誕生。
そして可南子が小学5年生の時に、業績が上がらない岡山県の倉敷支店に転勤。
人望が厚く、しかもユーモアのある性格で営業部長の飯田の片腕的存在になっていた。
そして、それと並行して、龍平の人柄は同じ部署の社員たちへの影響も強く、
今や龍平がいなくとも倉敷支店では以前のモチベーションではない力のある部署にまで立ち上がっていた。
「ねね、龍ちゃん。後で可燐にも言うけどさ、たま~には自由が丘、遊びに行っても良い…???可南子や可羊子にも逢いたいもん。」
龍平にビールを注ぎながら璃留。
「おぅおぅ。歓迎するよ。いつでもおいで~~。首長くして待ってるからさ~。」
夏川璃留、この女性社員、矢島家族が倉敷に引っ越してきて以来の可燐との初めての友達になっている。
ある意味、倉敷での矢島家の世話役でもある。
「璃留ちゃんいなかったら、倉敷での矢島家も…なかったよな~~。秀人と子供たちと、仲良くな。」
璃留には10歳年下の旦那とまだ小学生の2人の子供がいる。
璃留、
「ありがっと。」
「お父さん、あんまり無理しないで下さいよ。」
荷物を持って、2階に上がる夫に妻の可織。
「あぁ~。…んまぁ~。でも、これくらいは。あいつら来るまでは、何とかね~~。」
可織の夫、燐太郎。
倉敷から送られて来た、荷物の整理である。
「龍平さんと可燐の部屋は今まで通りで良いんだけど…。悩みは…可南子と可羊子よね~~。もう…高校生だから…。部屋…、小さいって、言われそう…。」
そんな妻の声に燐太郎、
「な~に言ってる~~。向こうの社宅に比べれば…。…とは、言いたいんだが…。ん~~。高校生…か…。難儀じゃのう~。果たして…。」
そして、その日の夕方、玄関のドアを開けて、
「ただいま~~。」
可燐。
「はいはい。おかえり~~。お疲れ様~~。」
可織、台所から駆けて来て。
「お父さん、お父さん、龍平さんたち。」
その声に燐太郎、
「おぅ、おぅ、来たか。」
玄関に、そして外に出て。車から荷物を運んでいる龍平。
そして可南子、可羊子。
「おじいちゃん、ただいま~。」
「おぅ、おぅ、おかえり、おかえり。」