姉妹坂 vol.034 「だ~いじょうぶ、だ~いじょうぶ、四天王先生だから、うん。」
「いいん…ですか…、先生…???」
可南子。
「だ~いじょうぶ、だ~いじょうぶ、四天王先生だから、うん。気にしない、気にしない。」
弓香。
可南子、
「へっ…四天王…先生…???」
「こ~~ら、弓香~~。余計な事は言わない~~。四天王なんて、とんでもない。」
コツンと弓香の頭を…。
弓香、舌を出して…、
「へへ。」
芽久、
「一華先生。この学校の美人教師四天王のひとりなんです。」
また低い声で…。
可南子、
「あ~~。道理で、綺麗~~。」
最後の方は小さな声で。
弓香、
「矢島さん…」
両手を合わせて。
一華、やれやれ…と言うように、
「大丈夫~???」
可南子、
「あっ、はい。それじゃ。」
一華と入れ替わりでピアノの椅子に納まって。弾き始める曲。
楽器の整理を始めている部員たち。そのメロディが耳に入って、
「あっ。」
「凄い。」
「わぁ~~。この曲~~~。」
「えっ???えっ???誰々、弾いてるの…???」
そしてピアノの方に振り向いて。
ピアノに部員たちが集まってくる。
「すげぇ~~。上手~~。」
「凄~~い。」
楽器を片付けている部員たちも…。
「えっ…???先生があそこにいると言う事は…、弾いているの…。わっ。行こ行こ。」
可南子が弾く、再びのショパンの幻想即興曲である。
今度は部員全員のために。
数秒後、ピアノの周りは…部員だらけ…。
栞奈、笑顔で部員たちを見つめて。
綺麗に流れるメロディに部員たち、一言の声もなく…。
「何々…。じゃ可南子、部活の最後にまた、その、ショパンの…、なんだっけ…???」
右手に箸を持ったまま可織。
「幻想即興曲。」
可羊子。
「どういう曲だ…???」
今度は燐太郎。
「ん~~。口で言うには無理。後でおじいちゃんにも弾いてあげるよ。」
可南子。
そんな可南子にビールを飲みながら、
「お~~。お~~。」
ニッコリと微笑んで燐太郎。
「それにしても、可南子、いろんなのが弾けるようになったんだね~~。隣の留美ちゃんなんかびっくりしてたよ。えっ!!!可南子ちゃんってピアノ弾けたんだっ…て。」
「岡山に行って、最初に挨拶に行ったお宅から聞こえてくるピアノの曲に夢中になっちゃってね~~。あれからず~~っとだもんね~~。」
可憐。
「泰子姉ちゃん。今も海外なんだろうなぁ~~。」
茜泰子。7歳より本格的にピアノを習い始め、
岡山にある音楽専攻の大学に入学。
在学中から様々なコンクールで入賞を果たし、
大学卒業後は海外のオーケストラに参加、又は音楽家からの誘いも多く、
1年の殆どは海外での生活である。
そんな泰子、大学1年の時に可南子と出会っている。
それが切っ掛けで可南子は泰子からマンツーマンでのピアノレッスンとなったのである。
ただ、当初は気軽なお遊び程度だったのだが、
時を重ねると同時に可南子のピアノの腕も上達。