姉妹坂 vol.003 「お姉ぇは、東京行き、賛成なのかよ。」
自分たちの部屋で可羊子、
「あ~~。高校生になったと思ったら…。ふぅ~~こっから、出て行かなくっちゃ、なんないのか~~。お姉ぇ…。」
勉強しながら可南子、
「いくら、ここは我が家じゃないって、言われてもね~~。ふん。」
「美菜ちゃん、祐子。香純、えっこ。み~んなと、ばいばいしなきゃなんないんだよ~お姉ぇ~。」
二段ベッドの下で可羊子。
「それ言っちゃったら、あんただって同じじゃん。千夏に、望、有香に、由理子。なんだか、さよならするって、言ったら、恐いわ…。」
いきなり可羊子、
「も―――――――っ。さよならするの、やだ―――――――っ。」
布団を被って、
「……。」
「…とは言っても…。お父さんも、お母さんも…、念願叶った…って…。感じてるんだよな~~。あれで…。…ふぅ~~。」
バッと、布団から顔を出して可羊子、
「お姉ぇは、東京行き、賛成なのかよ。」
膨れっ面をして…。
そんな可羊子に振り向いて可南子、
「しゃあないじゃん。お父さんの仕事の都合なんだもんよ~。」
そしてまた布団を被るように可羊子、
「…ったく~~。ふん。」
壁の方にバンと向きながら、
「寝るっ!!!」
リビングで可燐、
「ふたりとも…、友達多いから、いざさよならするとなると…。確かに、可哀想なんだけどね~~。」
お茶を飲みながら。
「まっ、仕方…ないよ。いつまでも、ここに住んでいられる…訳でもないんだから…。辞令が出れば、従うしか、ない。サラリーマンの宿命だよ。これが…。」
新聞を読みながら龍平。
そして右手でお茶茶碗を持って、
「あ~~っちっ。…ふ~~。」
「さ~~て。明日から私も大変だ。」
龍平、そんな妻の顔を見ながら…、
「ん~~???」
「馬鹿ね~。龍ちゃん以上に、母親の私だって、お姉ぇやカヨに負けないくらいに、友達、多いんですからねぇ。…男と一緒にしてもらっちゃあ~困るぅ~。」
そんな妻に頷いて、
「まっ、確かに。…へぃへぃ。」
そう言いながらお茶を啜る龍平。
そして一週間後。可南子のクラス。担任の小早川秀紀教諭、
「…そんな訳で、矢島可南子さん。今月の終わりには、東京に転校する事になります~。」
同じように、可羊子のクラスでも、担任の白幡碧教諭、
「さびしくなるけど、でも、可羊子、東京行っても、今まで通りに、頑張れ。あんたは、クラスの人気者だもん。大丈夫、大丈夫。」
可羊子、目に涙溜めて、
「はい。ありがとう…ございます。」
その瞬間、可羊子の元に、友達の生徒たち、
「可羊子~~。あ゛~~~。」
そして更に一週間後、可燐の友達のひとりのレストラン経営者の小久保沙耶、
可燐の東京への旅立ちを祝してお昼の送別女子会である。
「可燐とさよならするのはさ。辛いんだけど…、矢島家のこれからを祝して、か~~んぱ~~い。」
総勢、15名。可燐、目を潤ませながら…。
「バカ、可燐、こっちの方が泣きたいよ~~。」
一番の友達の隣の社宅の大磯静香。
「可南子と可羊子とも…ばいばいだもん。」