姉妹坂 vol.182 可南子、小さな声で、「右向こう…。」
声が止まってしまった可南子。
航、
「…ん…???どしたの…???」
可南子、小さな声で、
「右向こう…。」
「右…向こう…???あっ。」
その方向を見た途端に航も…。今度は左の方に顔を向けて。
ふたり、沈黙。右向こう、年老いた背の低い老夫婦であろう、
ぴったりと寄り添いながら、しかも、可南子と航をじっと見て、笑顔のまま。
しかも、夫の方は何度も頷いている。
何故か可南子と航、一切顔を見合わせる事もなく、だんまり。
そして数分後、ホームに降りたふたり。途端に、
「お~~~~。」
可南子、
「ぷっ。」
航、
「いやいやいやいやいや。」
「凄いよね。」
「ん…まぁ~~。何かしら、凄い、圧…って言うか~~。」
「だ~~ってさ。黙って、ニッコリしながらこっちの方…じ~~っと、見てるんだよ。」
右手で右頬を仰ぎながら。
「…って、言うか、先輩、下ばっかり…。」
「いやいやいや。だって…、そう…なるでしょ。」
「さすがに…あれだけ…見つめられると、やばいよね。」
「うん。」
そしてまたふたり、だんまり。
そして、何故かふたり、また赤くなる。
可南子、チラリと右隣の航を見上げ、目をパチクリ。
航も、左隣の可南子を見て、自分の隣を離れる事のない可南子を見て、
左頬を左人差し指でポリポリ。
「わったるっくん~~。」
いきなり後ろから声を掛けられ、
「わっ!!!」
ドキン。右前に出てきた顔を見て航、
「美和さ~~ん。」
「わぁ~。びっくりした~~。美和さ~~ん。こんにちは~~。」
可南子。
「後ろ歩いてたら、見覚えのあるふたりの後ろ姿、見えたから。…しかも、男性はしっかりとギターケース右肩に。」
美和。
可南子、
「うんうん。目立つよね~~。」
「良かった~~。ひとりでスタジオまで歩くより、楽しい。」
美和。
可南子、
「うん。…美和さん、仕事帰り…???」
「うん。そうだよ。」
前を向いて美和。
「IT関係って、忙しいんでしょ。」
可南子。
美和、航、可南子の順で改札を過ぎて、また自然に、航を真ん中に…。
美和、
「うん。忙しい部署は物凄いよ。でも、ウチの部署は、滅多に残業…ないんだ。…逆に、残業すると…、怒られる。」
可南子、
「へぇ~~。ウチのお父さんなんて、毎日、遅い~~。」
「へぇ~~。可南子ちゃんのお父さん、どんな仕事…???」
航の顔の前で、ふたりの女性の声が交わされる。
「不動産会社。」
可南子。
「えっ!!!どこ、どこ…???」
美和、航の右側から。
「興和不動産。」
「興和…???あぁ~~。聞いた事、あるある。結構…大手~~。凄いじゃん。…航君…、知ってる…???興和…不動産…???」
そして航の顔を見て…、
「…訳…ないか…。はははは。」
舌をペロリと出して美和。可南子を見てにっこりと。
可南子、
「へへ…。多分…。」
航、頭の中で、
「…って…、なんで、俺…真ん中…???」




