姉妹坂 vol.135 今までとは違う女性の姿。
庭の植木の手入れをしながら燐太郎、
リビングから聞こえてくるエレクトーンのメロディを聴きながら、
「ん~~。誰の曲…弾いてるんだ…???」
可羊子、
「結構、いい曲だよね~~。詩も良いよ。」
「ふ~~ん。凄いもんだね~~。これ、その人が作ったんだ。おばあちゃん…、可南子が弾いてくれないと、全く楽譜見ても、チンプンカンプンだわ。」
可織。
可羊子、
「かかかか。そりゃそうだよ。私だって分かんないもん。楽譜見ただけじゃ。」
洗濯物が入ったカゴを持って、廊下を歩いて庭に向かう可燐、
「カヨ。あんたもう…合宿の準備…出来てんの…???」
可織、
「合宿って…???」
「うん。来週から弓道部の合宿。来月の最初にインターハイ、あるからね~~。」
「ふ~~ん。」
「そして…、今度は…これ…か…。」
ページを捲って可南子。
「それにしても可南子、今まで弾いた事ないのに、良くもまぁ、そんなに簡単に…。」
可織。
「…ん…。まぁ…。かかか。習慣…かな~~。」
「楽譜…読めるらしい…。お姉ぇの場合…。」
可羊子。
可織、
「ひぇ~~。凄い。」
そしてまた新しい楽曲を弾きはじめて、数秒後。
「あっ。それ…いいねぇ~、お姉ぇ…。」
庭から。
可南子、弾きながら、
「ふふ…。うんうん。私も良いかも…。これ…。」
「なんて言う曲…???」
可羊子。
「…港の見える丘から…。」
可織、
「ふ~~ん。」
ドカドカと階段を下り、台所の冷蔵庫からコーラをコップに入れてグィグィと。
そしてまたドタドタと廊下を、そしてドカドカと階段を…。
台所でお昼ご飯の準備をしながら充希。そんな航を見ながら。
それから数分後、またドカドカと階段を下りて、今度はトイレ。
そしてまた階段を…。
「航~~。」
階段の途中で航、
「あ~~???」
台所から出て充希、
「何、そんなにドタドタと。おとうさん、書斎で仕事してんのに。」
その母親の声に、
「あっ。悪い。」
にっこりと、
「ごめん。」
「何か、あった…???昨日から、嬉しいそうだけど…。」
航、目をキョロキョロさせて…。
「まっ、今日から夏休みだから…。うん。そりゃ、楽しいよね~~。」
航、
「…ん…。まっ、まぁね~~。」
そのまま部屋に…。
充希、
「ふん。夏…休み…ねぇ~~。」
部屋の中で、エアコンを掛けていても、汗を掻きながらのギター演奏の航。
目を閉じながら頭の中では、いつものメンバーの風景。
…だが、キーボードを弾いている女性は…、今までとは違う女性の姿。
「みんな~~。じゃ~。出発するよ~~。」
栞奈、運転席の隣で。
生徒たち、
「は~~い。」
「じゃ、田所先生。お願いします。」
要次、アクセルを踏んで、ハンドルを回し、
「お~し。行きますか。」