姉妹坂 vol.134 「へぇ~~。中々やるじゃない、この子…。」
憲央、亜葵蘭の出て行った部屋のドアを見て、
「…ったく~~。」
…と、ほぼ同時に信一、
「うそ…。憲…、おま…???彼女…???」
その信一の声に被さるように憲央、
「いる訳ねぇだろ。勘違いしてんだよ。」
椅子から降りて、テーブルのグラスを持ってジュースを飲みながら。
キョトンとして信一。
「前に、姉貴と一緒に歩いてたとこ、彩萌たちに見られて。彩萌から電話掛かって来た事があったんだ。隣りの人、誰って…???」
信一、
「……。」
「それをそのまま、彼女だと思ってるんだよ。2番目の姉ちゃんには、違うって言ってるんだけど…。」
信一。なにやら疑心暗鬼に、
「…けど…???」
憲央の顔を見る信一。
「彩萌とは、かなり…仲…良いけど…。」
「いやいやいやいや。」
目の前で右手を振って、
「勘弁、勘弁。何か言えば、何か、必ずアクションだから、アイツ。ここ、抓られたり、足踏まれたり。冗談じゃねえぞ。下手すりゃ、ケツ、蹴飛ばされる。」
その話に信一、
「かかかか。確かに…。ぶっ。それは言える。」
そして、また、何かしら、目がトロ~ンとして信一、
「憲のお姉さん…、綺麗だ~~。」
目を閉じて天井を向きながら…。
憲央、
「は…ぁ…???」
「へぇ~~。中々やるじゃない、この子…。」
病室で左近から受け取ったカードで動画を見ながら璃子。
「あぁ。初見で黄昏の街角、途中からだけど、しっかりと弾いてくれた。どう…???」
ベッドの傍で椅子に座りながら左近。
「いいんじゃねぇ~。」
和樹。
「それにしても、ナイスタイミングだったよな。彼女とも一緒に、ダブルブッキング。」
璃子、笑いながら、
「美和ねぇ~~。見舞にきてくれた時に、ソレイユ、解散するって言われてね~。だったら…って、私の代わり、頼んだのよ。でも、まさか、航がね~~。そんなに凄かったの、定期演奏会…???」
「うん。」
左近と和樹、同時に頷いて。
「彼女、美和ちゃんも、来てたらしいけど…。その…矢島…可南子…。特に、リスト…。脱帽って…。」
和樹。
「へぇ~~。」
璃子、右手でキーボードを打ちながら、
「まさか…ねぇ~~。…ん…???…もしか…して…???…これ…か…???…かかか。おぅ、おぅ、ヒット。誰かさん、アップしてるね~~。」
和樹、
「…ん…???」
璃子、画面をふたりの方に、
「ほら。」
左近、画面を見て、
「おっと~~。や~るね~~。」
動画サイトにアップされていたのが、泉川学院高校器楽部定期演奏会の動画である。
「あっ。そうだ。……かかか。彼女たちの事、あんまりインパクトあり過ぎて、さっきまで覚えてたのに…。俺もそれ…録画してたんだ。」
そう言いながら自分のバッグの中からカードを取り出して璃子に、
「ほぃ。」
「かかかか。な~にやってんのよ~左近~。」




