姉妹坂 vol.177 ワンピース姿のひとりの女性。
マンションのエントランスで、
「おっかしいな~~。いない…はずは…ないんだけど…???誰も出ないって…。どういう事…???」
ワンピース姿のひとりの女性。
「璃子さんからのメールは…、ここで…確かに、OKなんだよね~~。」
盛り上がっている室内。曲が終わった瞬間、拍手喝采。
左近も和樹も航も。
左近、
「凄いよ、矢島さん。さっすが~~。」
和樹、
「いきなりで…、しかも…。大したもんだ。」
「すみません。なんだか…、無我夢中で…。」
ドキドキしながらも、深呼吸をして…。顔を真っ赤にさせての可南子。
「ふぅ~~。」
園加と愛寿美、そして彩萌たちの中に戻って。
「凄い、凄い、可南子~~。」
「うんうん。」
「びっくりした~~。」
そして航の方に振り向いて可南子、にっこりと。
航もにっこりと、そしてお辞儀をして。
その時、テーブルの上のスマホに着電。
一番近くにいた信一。
「すみませ~~ん。あの…。スマホ。鳴ってますけど…。」
その声に左近、
「あ~~、ごめん。ありがと。」
そんな左近に和樹、
「……。」
「あ~~っと…。先輩。」
航、ギターのベルトを首から外して。
「何もないけど…。ジュースくらいなら、向こうの部屋の冷蔵庫に…。」
そう言いながら、ギターをスタンドに、
「ちょっと待ってて。」
「あ~~。良い、良い。私たち、するから…。」
航を制止して、彩萌。
「史、紗枝。茉優。」
言われて動く3人。
左近、スマホを手に持って。
「この電話…番号…。」
そして腕時計を見て、
「おっと、そんな時間。」
慌てて電話に出る左近。
「もしもし富田です。」
スマホの向こう、電話に出た相手に、
「もしもし、筧と申します。筧美和です。…富田さんの…、電話番号…、ですよね…???」
左近、
「あ~~、はい。」
「今、さっき、インターホン鳴らしたんですけど、どなたもお出にならないので、スマホの電話番号に…。」
その声に、
「あ~~、すみません。」
「璃子さんに電話かメールでもと思ったんですけど、病院に…って、思って…。」
そんな女性の声に左近、
「すみません、すみません。どうぞ、お入りください。」
エントランスのドアが開いて、エレベーターに向かう女性。
スマホをまたテーブルの上に…。そして和樹の顔を見て頷く。
可南子たちは冷蔵庫のジュースを紙コップに注いで飲んでいる。
自然にキーボードに集まってお喋りをしている可南子たち。
そこにチャイム。
そのチャイムの音に微妙に反応する可南子たち。
同様に航も、
「えっ…???」
ドアに向かう左近。
数秒後、左近の後に部屋に入ってくる女性。
彩萌、小さな声で可南子に、
「誰…???」
そんな彩萌に頭を振る可南子。他の面々も、それぞれ顔を見合わせて。
航、椅子に座ったまま、ギターの上で腕を組んで…。
少し、口を尖らせた風に。




