姉妹坂 vol.169 優しく語り掛けるように流れるメロディ。
演奏が始まったやいなや、またまた観客席が立ち上がり手拍子。
そしてそれぞれのパートのソロ。
その中でも可南子のピアノソロ。
弾き終った後の大歓声。そして観客席とのコラボの中で弓香、
弓香のバイオリン演奏に手拍子が鳴り止まない。
ステージ上で、優雅に躍りながらのバイオリン演奏。
そしていよいよバイオリンを弾き終えて両手を高らかに。
ステージ袖で一華、ガッツポーズ。
拍手はいよいよ盛大に…。そしてステージ上、少しほんのりと暗く…。
そしてようやく拍手が静かになったと思いきや、静かなピアノの音。
そのピアノの音に観客席が今度は一斉に静まり返る。
優しく語り掛けるように流れるメロディは、「リスト・愛の夢・第3番」
ステージの袖で一華、
「可南子~~、さすが、ナイスタイミング。いいぞぉ~~。その調子~~。」
彩萌、
「凄~~い。綺麗~~。」
史江、紗枝、そんな彩萌の顔を見て、
「うんうん。」
可羊子、
「お姉ぇ…。」
今までの雰囲気から全く異なる観客席。物音ひとつしない。
園加、
「なんだか…。涙…出て来たよ。はぁ…。」
愛寿美、そんな園加の肩を抱いて、こちらも涙交じりに、
「…うん。」
栞奈、
「望海~~。」
西園寺、
「ん~~…???」
「教師…、やってて…良かった。」
そんな栞奈に西園寺、
「うん。当然。ふふ。栞奈~~。おめでとう~~。敏也と、しあわせに~~。」
栞奈、
「うん。ありがと…。…って…、今…それ…言う…???」
西園寺、
「はは。」
憲央、
「とにかく…凄いと言う言葉しか…、出ねえよな~~。矢島~~。可南子~~。」
史江、
「かかかか。憲~~。惚れんなよ~~。」
後ろを振り向きながら。
紗枝、
「かかか。」
憲央、
「はぁ~~???なんで…俺…???」
佐智子、
「なんか…物凄い、才能って感じ。」
鈴鹿、レミ、
「高校生で、ここまで出来る~~。しっかし…凄い。」
航、
「矢島…さん…。」
可南子のピアノ演奏が終わった。数秒の沈黙の後、
パチパチと拍手がなった途端に、ホール内、割れんばかりの拍手喝采。
再びのスタンディングオベーション。
可南子、椅子から立ち上がり観客席に向かって丁寧にお辞儀。
可憐、拍手をしながら、そして涙を流しながら、掠れた声で、
「お姉ぇ…、良くやった。うんうん。龍ちゃん。」
隣で何度も頷いて拍手をしている龍平、妻の顔を見ながら、
「うんうん。」
可織の隣では燐太郎、
「しかし…、これが高校生だけで、出来るとは素晴らしい。」
ここでまた、僅かばかりのインターバル。そしてホールのスピーカーからアナウンス。
「……。それでは…これより、泉川学院高等学校器楽部、第3部、お届けして参ります。どうぞ~~。」
航、
「いよいよ…、最後か~~。」