姉妹坂 vol.103 軽快なドラムの音が音楽室に響き渡る。
「じゃ、矢島、頼む。」
航。
可羊子、
「うん。分かった。」
そのタイミングで女子、
「さて…。部活~~。」
レミ、
「同じく~~。」
その場から自分の席に戻ろうと…。
敦司、
「えっ…???えっ…???…何…???何…???」
女子4人を見回して…。
「おまえ、敦司、何、照れて赤くなってんだよ…???」
敦司、
「え…???え…???…いや…。だって…、4人して、俺…???えっ…???えっ…???え~~~???」
可羊子だけが、敦司を見て、申し訳なさそうに…、
「ぷっ。」
軽快なドラムの音が音楽室に響き渡る。
「菜穂子、早~~やっ。」
音楽室に入ってきた部員たちにニッコリとしながら叩き続ける菜穂子。
「かか。んじゃ、私も。」
そう言いながらエレキギターを持ってアドリブで弾き始める摩耶。
音楽室に近づいて来ている可南子と弓香。
そして芽久。
「う~~っわ。みんな早っ。」
「一週間も楽器…、本格的に触れてないからね~~。」
「ふふ…。や~~~っちゃおぅ~~っと。」
可南子と弓香より早く音楽室に入る芽久。
可南子、弓香、
「はは。」
ドラムでウォーミングアップをした次に、
小刻みにテンポ良く叩き始めたのが野呂静香のコンガ。
そのコンガと共に吹き出すサンバホイッスルの音に合わせて菜穂子のドラムがそのまま続き、
コンガとコラボしながら始まる演奏。
千秋と真紀のトロンボーンとトランペットが続く。
「エル・クンバンチェロ」ラテンである。
今までの器楽部としては異なるスタイルが2週間ほど前から出始めていた。
普段は立ったままで、そして椅子に座ったままの演奏だったのだが…、
今やその楽曲に合わせて、体を動かしながら演奏するスタイルへと変っていた。
しかも、今まで他の生徒たちとは違って内気で大人しい性格の芽久までも、
少しずつ部員たちとも話をするようになっていた。
そして何より、今までは一華が凡そ指揮を取っていたスタイルも、
弓香に変り、その弓香の指揮を菜穂子や摩耶、
そして芽久に可南子がサポートするスタイルに変っていたのである。
そして一華は、演奏する楽曲の全てのアレンジに…。
けれども、このアレンジにも、弓香たちも僅かながらに加わっていた。
少しずつ、聴かせるだけの音楽から、
パフォーマンスも加えたスタイルに変っていたのだった。
演奏数曲目、グラウンドで練習をしているサッカー部、
そして野球部の部員たちにも風に乗って耳に届く器楽部の曲。
サッカー部、パスの練習をしながら、
「へぇ~~。やるじゃん、ウチの器楽部。はは、これ、やってんだ~~。」
こちらも、外野でノック練習をしている野球部員たち、
「お~~。ルパンじゃ~ん。」