姉妹坂 vol.010 可羊子の両脇を両手指でくすぐるレミ。
「でもさ~~。ほん~とにカヨッチが帰ってきた~~。わたしゃ嬉しいよ~~。」
そう言いながら、可羊子の両脇を両手指でくすぐるレミ。
「やだやだ、くすぐったいって~はははは。レミ~~。」
そう笑いながら、つい振り向いて教室の中、
「あっ。」
ふと可羊子の目に留まったひとりの男子生徒。
もうひとりの男子生徒と笑いながら話しをしている。
一瞬チラリと可羊子を見たようだったが、そのまままた男子生徒と話し込んでいる。
可羊子、いきなりドキン。
レミ、
「カヨッチ…、何見てんの…???」
その声に反応して佐智子と鈴鹿、
「ん~~…???」
佐智子、そんな男子生徒を見ている可羊子に、
「ムフフフフフフ…。」
振り向いて、またベランダから外を見る可羊子に、
「あの男子、気~~になるんでしょう~~。」
目を細めて意地悪そうに、佐智子。
「あ~~~。」
鈴鹿、可羊子の顔を見て…。
「ライバル出現…って…、訳か。」
レミ。
「えっ…???へっ…???何…???何々…???…ライバルって…???…えっ…???」
「彼…、狙っている女子は、ひとりに非ず~。」
可羊子の目の前に人差し指を立てて、左右に揺らす鈴鹿。
可羊子、
「うそ…。」
「ほんと。」
「このクラスだけで、女子の半数は…彼…狙ってるかも…。」
佐智子。
「うそ。へぇ~~、そんなに。う~~っわ。」
目を見開いて可羊子。
「何てったって、身長1メートル80~~。それにあのマスク。それだけでも要素は十分。そんなに勉強は出来なくっても…ねぇ~~。」
レミ。
「高校1年生で、なんと、レギュラー入り~~。ねね、カヨッチ。彼…部活なんだと思う…???」
鈴鹿。
「180…って、言うんなら…、バレーか…、バスケ…???」
そんな可羊子に今度は佐智子、
「180…は…、ないかも…。彼の部活は…野球。」
「ふ~ん。」
その時、教室の中からいきなり、
「ワ~君。」
そう言いながら入ってきた女子生徒。
男子生徒に声を掛けて、
「ほぃ、これ、おばさんからの預かりもの。朝、持ってくるの忘れたでしょ。」
白いビニール袋を渡され、
「お~~っと、サンキュ~。助かった~~。」
そしてその袋を渡してその場を、
「じゃね~。」
教室を出て行く女子生徒。
ベランダで可羊子、
「だれ…???凄い大人っぽ~い。」
「3年A組の、阿刀田紗枝さん。」
鈴鹿。
「へっ…???あれで高…3…???」
「いやいやいや。制服来てるんだから、高校生でしょ。」
レミ。
「あっ、そっか…。ははは。」
「彼の家の向かいが、彼女の家…な~んだって~~。」
佐智子。
可羊子、
「わ~~お。…と、いう事は…、あの阿刀田さんも…彼の…???」
「いやいやいやいや。それは…ない。」
右手を素早く左右に揺らしながら、レミ。
「単なる幼馴染…と言う…事…らしい。」
「その証拠に、彼女には既に、素敵な彼が…いらっしゃるとか…。」
鈴鹿。