姉妹坂 vol.001 「矢島龍平!!!」姿勢を正して環。
2016年6月。岡山県、興和不動産、倉敷支店、営業部。
営業部長の飯田環の部屋を訪れての営業課長の矢島龍平、
「部長…。」
「おぅ、龍平~。来たか。」
椅子に座って後ろ向きのままで、そしてクルリと前を向いて、龍平を手招き。
「チョイ、チョイ。龍ちゃん。」
そんな環に、そろり、そろりと近づき。
「はい。何…か…???」
そして自分のデスクに近づいた龍平を見て、そして外の部署を見て…。
「んんんん。」
椅子から立ち上がり、全てのブラインドをクルリと…。
部長室はブラインドで閉じられる。
そして、またクルリと…。
龍平…、
「何を…???」
それと同時に、部長室に注目する社員たち。
そんな社員たちの顔を見てニッコリと環。更には、ウィンクして。
龍平、
「あ…、あの…、部長…???」
そんな龍平に環、いきなり、龍平の両肩を両手でトントンと。そしてハグ。
いきなりの環からのハグで龍平、
「は…あ…???」
ハグしながら、龍平の背中をトントンと叩き、
「うんうん。うんうん。」
その様子を見ていた社員たちも…、
「…???」
社員のひとり、坂部雄三、
「まさか…あのふたり…。」
その隣で、同僚の室井敦、
「あり…えるか…???」
その隣で、夏川璃留、
「な~訳、ないでしょ。龍ちゃん、あれでも、しっかりと家族に愛されてるんだから~~。可燐を泣かせたら、私が許さない。」
「いや…。でも…、部長の…方が…。」
そんな璃留の隣で璃留の後輩の美津葉美穂、
美顔器で顎をなでなでしながら…。
「あんたは、いつまでそれやってる~~???」
その内、環が右袖を目に、
「僕ぁ~~嬉しい。うんうんうん。実に嬉しい。」
龍平、
「は…あ…???いや…、だから…???」
「なんで泣いてる部長…???」
社員たち。
環、今度は龍平の両二の腕をパンパンと。
「龍平~~。良~く、やってくれた~~。あ~~はっはっはっは~。ひぃ~~。」
龍平…、
「…い…た…い…。」
そして頭の中で、
「…仕事…、戻って…いいかな~~…???」
その時いきなり、
「矢島龍平!!!」
姿勢を正して環。
龍平、
「は、はい!!!」
そして、頭の中で、
「…びっくりした~~。」
「矢島龍平、貴殿を、来月7月1日より、東京本社営業部勤務とする。」
龍平、
「はい…???」
「おめでとう、龍ちゃん。」
目をパチクリさせながら龍平、
「ぶ…、部長、今…、何て…???」
「東京本社、復帰だ。戻って来いってよ。」
その環の声に、いきなり鼓動が高鳴り、龍平、
「……。や……った―――――――っ!!!!!」
両手を高々と。
外の社員たち、
「え…???えええええ…???何事…???」
そんな社員に向かって環、Vサイン。