僕という存在
〜春休み終了直前〜
「ねえねえ!ちょっとやりたいことあるんだけどいい?」
「急にどうしたよ。」
「今せっかくみんなオフの状態で集まってるんだしさ!みんなでどっか行ってお泊まり会しようよ!」
「…え私たちみんな14歳だけど。子供だけでできるもんなの?」
「親族の許可があれば不可能ではないですね。」
「できるって!やろやろやろやろ!」
「まあ僕が絶対無理なんですけど。」
「…なんで?」
「僕今両親オランダなんで。」
「え1人で帰ってきたの!?」
「まあ大学院卒業したら帰るって決めてたので。」
「寂しくないの!?」
「いやまあ1人で研究実験するのも楽しいですし。」
「テレポート装置使えばいいじゃん!」
「いや下手に使って壊したくないですし。」
「というか何気なく受け入れてたけどテレポート装置ってどう作ったの!?」
「いやまあ僕専門原子系ですし。」
「原子単位で複製してジャンってやったら行けます。」
「…よくわからないけど難しそう!」
「あとオランダの両親に連絡とればいいじゃん!」
「まあそれはそうですけど…」
「でも費用が捻出できないですし。」
「…まあそっか。」
「あと未成年の男女の宿泊は法的に怪しいんですよ。」
「…え女子しかいないよ!?」
「…あ〜そうなりますよね。そういえば言ってなかったですね。」
『実は僕男なんですよ。』
「え!?」「…ん!?」
「「嘘でしょ!?」
「いやほら、僕一人称僕ですし。」
「…まあそうだけど…」
「楓って男の人結構いるじゃないですか。」
「女の人でもいると思うんだけど…」
「そういうことです。」
「「ごめんなんもわかんない!?」」
「…しょうがないですね。詳細を話します。」
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…僕が小学生くらいのときから遡りますか。
僕にも当然両親がいるわけで。お母さんは普通に専業主婦だったんですが、お父さんは科学者でした。この研究所を作ったのもお父さんです。
お父さんは優秀な科学者でした。様々な方面で成果を残し、陰ながら技術発展を支えました。
…そんなある日のことです。お父さんは一つの新しい機械を作りました。
人類の知能指数を飛躍的に向上させる…そんな機械です。
…夢のような機械ですよね。実現したならば、ですが。
科学は常に犠牲を伴ってきました。この機械についてもそうです。
実験をして、成果を出して、安全であり効果があること。これが証明されないのなら、世に出すことなど到底不可能。しかし、人類を対象にする機械であれば最終的に人類での実験は必要。
…さて、そんな場面で現れたのが僕。当時小学1年生の僕。まだ…まだ、男だった。身も心も男だった僕。まだ普通だった僕。
お父さんは…お父さんは僕を実験台にしようとしました。まあそうですよね。ここまで都合のいい存在はいません。
僕も納得でした。その時の僕はまだ幼く危険管理ができなかったのと、僕にとっても夢のような話でしたし。だって何もしなくても頭が良くなるのですよ?ここまで都合のいいことはありません。
ただ…僕のお母さんは大反対でした。まあ気持ちはわかりますよ。僕もそうします。
でも、お父さんは折れませんでした。この気持ちもわかります。僕も科学者ですし。
…この対決は続きました。次第に家庭間の対立を扇動していきました。
…そして。最終的に何が起こったか。思い出したくもないあの時を。いま。…語っていきますか。
ある日のことでした。お父さんは僕を装置に入れました。…お母さんがいない間に。です。
…お父さんには成功の自信がありました。そう。バレずに実験台にできる自信。もしくは実験台にしたことを理解させられるほどの成果を出す自信が。
…確かに成果は出ました。今の僕を見ればわかるでしょう。大学院すら卒業できるほどの圧倒的な頭脳。間違いなくこの実験の成果です。
…ですが。ですが。ですが。今の僕を見ればわかるでしょう。これが副作用です。なぜ僕がこんな格好をしているか。この実験のせいです。
…これが結論ですね。実験台になったからこんな格好になった。おそらく原子の構造を変える際に間違えたところまで変えてしまったのでしょう。見た目だけ女の子になってしまいました。…ついてますよ?ここもめんどくさい。どうせならなくなっていればまだ騙れたのに。
…さあ。ここからは余談になります。聞きたいですか?聞きたいですよね?まあここで終わらせてもですし。結論まで言います。
…まあこんな姿になったらバレるわけです。そりゃそうです。茶髪よりの黒髪で短髪の男の子が、いきなり茶髪の長髪の女の子になってるんです。同じ人間が。…自分の子供が。
…まあ当然怒るわけです。ただの怒りじゃないですよ。絶交ですよ絶交。…そりゃそうですよね。わかってましたよ。…はい。
…もう言わなくていいですよね?…僕の家庭は空中分解しました。…離婚ですよ。わかってましたよね。
お父さんは僕を連れて脱げるようにオランダに逃げました。だから僕去年までオランダにいたんですよ。
…なんで帰ってきたって?お母さんが別の人と結婚して別の家に行ったことがわかったからです。
…お父さんは帰ってきませんでした。帰ってくるつもりもなく。オランダで隠居してます。
お父さんは心身ともに疲弊してしまいました。もう表舞台に立って研究はできないでしょう。する気もなさそうです。
…こうして僕は今ここにいます。お父さんの後を継いで研究をしています。…案外楽しいですよ。
「わかりましたか?僕がこうなった理由。」
「そういうことだったんだね!…なんとなくわかったつもりになっておくよ!」
「…zzz…」
「あれ利音さん?」
「利音ちゃんはオランダの話らへんから寝てたよ!」
「結構直近じゃないですか!寝つき良すぎですよ!」
「まあまあ。利音ちゃんも多分ある程度理解したと思うから!」
「…どうですかね。」
「…んで、どこに泊まる?」
「あそういえばそんな話でしたね。」
「えっと…んで、外部施設の宿泊はできないんだっけ?」
「そうですね。」
「…じゃあさ…私の家来てよ!」
「…え?」
「いや私の家に来る分には法律もなんもないでしょ?」
「まあそりゃそうですが…」
「行けるでしょ!ね!」
「…まあ利音さんが起きてから本格的に話しましょう。」
「それもそうだね!」
新情報
山光楓=男の娘
ある | なし
パン | ケーキ
ミルク | ココア
道具箱 | ランドセル