フィリップスとルキウスの意外な出会い
街角での出会い
セレナス家は農業に基盤を置く貴族ですので、教会が発見した「新しい肥料」の噂にルキウスはいち早く反応し、情報収集のためプラハに戻ってきます。ルキウスは今でも、レオナルドはもとより錬金術師全般に対して疑いの目で見ていますが、エリアスに限っては信用できると思っています。ある日、ルキウスは街で偶然エリアスに遭遇します。セレナス家の農業基盤を支える一員として、教会が発見した「新しい肥料」の噂に強い関心を抱いていた彼は、エリアスを見つけると、積極的に話しかけます。
「エリアス、噂に聞いたあの『新しい肥料』について、少し話を聞かせてもらえないか?」
エリアスは意外そうな表情を浮かべながらも、ルキウスの求めに応じ、最近の研究成果について説明を始めます。このとき、エリアスの弟子であるフィリップスが隣に立っていました。
フィリップスの合理主義的な発言
フィリップスはルキウスに興味を抱き、自分も話に加わります。彼はエリアスの研究を支える立場から、リンの化学的性質や農業への応用可能性について情熱的に語り始めます。
「リンのような発見は、神学や信仰の枠を越えて科学そのものの力を証明するものです。物質の本質を理解すれば、信仰に頼らずとも世界を改善できるのです。」
ルキウスはこの発言に驚きつつも、「若い錬金術師にはこうした合理的な考えを持つ者もいるのか」と感心します。彼はフィリップスの理路整然とした説明に耳を傾け、錬金術に対する評価を少しだけ改め始めます。
思わぬ発言
会話が進む中で、フィリップスがふと口を滑らせます。
「それにしても、リンの効能を最初に発見したのはレオナルド・アウリウスの実験だなんて、彼の洞察力には感服しますね!」
ルキウスの表情が一変します。
「レオナルド?」
彼の声には動揺が滲み、これまでの和やかな雰囲気が一瞬にして凍りつきます。ルキウスは、あえて平静を装おうと努めますが、動揺を隠しきれません。
ルキウスの内面の葛藤
ルキウスにとって、錬金術師全般への不信感の中心にいるのがレオナルドでした。レオナルドが「新しい肥料」に関わっていると知ったことで、彼の心中には複雑な感情が渦巻きます。一方で、農業にとって有益な発見であることも理解しており、完全に否定することができません。
「ふん、あの男がそんな発見をするとは。どうせ何か裏があるに違いない…」
ルキウスはぶつぶつとつぶやきながら立ち上がりますが、エリアスが穏やかな声で話しかけます。
「ルキウス様、レオナルドは今や教会の監督下で研究を続けており、彼の成果は多くの人々の役に立っています。個人的な感情はさておき、彼の功績を見直す機会にしてはいかがでしょうか?」
ルキウスは返事をせず、少しばかり荒い足取りでその場を後にします。
余韻と伏線
ルキウスが去った後、フィリップスは少し困惑した様子でエリアスに尋ねます。
「ルキウス様はなぜあれほどレオナルド様を嫌うのでしょう?」
エリアスは静かにため息をつき、「長い間積み重なったわだかまりがあるのだろう。人の心が絡む問題は、単純ではない」と答えます。
ルキウスの動揺は彼の心の闇を一層深めたかのようでしたが、この出会いが彼の価値観に微かな変化をもたらすきっかけになるかもしれません。そして、レオナルドの功績が再び彼の前に現れたことで、ルキウスがどのように行動を変えていくのかが物語の新たな焦点となります。




