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毒草と花の美しさ

1680年夏の午後、薬草園で忙しく働くレオナルドのもとに、近くの村に住む農夫が訪れました。農夫は腰に手を当て、薬草園の一角に植えられたジャガイモの葉を見て、訝しげに眉をひそめます。


「この葉っぱ、何に効く薬草なんですかね?」と尋ねる農夫。


レオナルドはその質問に少し驚きつつ、苦笑いを浮かべながら答えました。「いや、これは薬用ではなく、毒草だよ。食べれば病になる可能性がある。だが、ほら、花を見てごらん。美しいだろう? 飾るために植えているんだよ。貴族の間では人気がある花なんだ。」


農夫はその答えにさらに首をかしげます。「薬にもならない毒草を育てるなんて、変わったことをするもんだ。花を見るだけでお金を払うのか?」と呟きます。


「一つだけ言えるのは、この世には美しさに価値を見出す人々がいるということだ。そして、その価値が現実の役立つものよりも高く評価されることがある。とても興味深いことだとは思わないか?」


農夫は腕を組み、じっとジャガイモを見つめました。「それでも、毒草に大金を出すなんて、どうにも理解できん。俺なら、腹を満たせる大根や小麦を育てたほうがいいと思うがな。」


レオナルドは苦笑いを浮かべ、「確かに、腹を満たす作物こそ本物の価値かもしれない。だが、時々、人間は心を満たすものを求めるんだ。例えば、この毒草や花のようにね。」


農夫は最後にもう一度ジャガイモを見やり、首を振りながらつぶやきました。「不思議な薬草園だな。俺にはよくわからんが、あんたは何かを信じてやってるようだ。」


レオナルドはその言葉に静かに微笑み、農夫を見送った後、薬草園に戻りました。もしかしたら、この毒草が人を救うことになるかも知れないと思いながら。


ヨーロッパにもたらされたジャガイモが食用に供されるのは、もっと後のことです。

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