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改良された石鹸とその評判

エリアスが石鹸作りに新たな試みを加えたのは、日々の研究の延長線上でのことでした。草木灰を水に溶かして濾過し、得られたアルカリ水に油脂を混ぜる方法は古くから知られていましたが、彼はその工程をさらに改良することを思い立ちます。

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改良された石鹸の製法

ある日、エリアスは工房の隅に置かれていた石灰に目を留めました。それは強いアルカリ性の水溶液を得るために昔から使われていたもので、彼も何度か別の用途で試したことがありました。

「灰汁に石灰を加えたらどうなるだろう……?」

彼は早速試してみることにしました。草木灰から作った灰汁に石灰を加えると、液体が反応し、沈殿物ができました。その沈殿物を濾過すると、いままでより強いアルカリ性の透明な溶液が得られました。これを使えば、石鹸を作る過程でどんな変化が起きるのか、彼の好奇心は膨みます。

油脂をアルカリ溶液に混ぜて加熱すると、反応が従来よりも速やかに進行しました。できあがった石鹸は、驚くほど滑らかで、水に溶けやすい特性を持っていました。さらに、冷たい水でもしっかり泡立つことを確認したエリアスは、この石鹸の有用性を確信します。

「この石鹸は特別だ。今までのものよりもずっと使いやすい……」

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クラウディアへの売り込み

エリアスは完成した石鹸を手にし、クラウディアの薬草園を訪れました。薬草園には付属の診療所があり、傷の手当てや患者の世話に石鹸が欠かせないと聞いていたからです。

クラウディアは、エリアスが手にした石鹸を興味深そうに見つめました。

「新しい石鹸を作ってみたんです。冷たい水でもしっかり泡立つし、肌に優しい。診療所で試していただけませんか?」

クラウディアは試験的に石鹸を使ってみることを快諾しました。数日後、彼女は満足そうな笑顔を浮かべながらエリアスに報告します。

「この石鹸は素晴らしいわ。患者さんの傷を洗うときにも、冷たい水で手を洗うときにもとても便利。診療所での使用を採用したいと思う。」

クラウディアの承認を得たことで、エリアスは大きな自信を手に入れました。彼の石鹸は、クラウディアの診療所を訪れる貴族たちにも評判となり、その品質の高さが広がり始めていきます。

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石鹸の評判と成功

クラウディアの診療所で使われるようになった石鹸は、他の貴族や教会からも注目を集めるようになりました。使い勝手の良さと上質な仕上がりは、貴族たちの間で「贅沢品」として評判になり、エリアスには次々と注文が舞い込んだのです。

「冷たい井戸水でも泡立つから、洗顔や手洗いにとても便利だわ。」

「この石鹸なら衣類もきれいになる。肌触りが違うよ。」

エリアスの作業場は忙しさを増し、彼は石鹸の生産を効率化するため、改良を続けました。硫黄の販売と合わせて、この石鹸の製造が彼の収入を支える大きな柱となっていきます。

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エリアスの心境

エリアスは、夜の作業場で石鹸を手に取り、ランプの明かりで眺めながら考えました。

「ただの灰汁と油脂から始まったものが、こんなに多くの人に求められるようになるなんて……」

彼の胸には、小さな達成感とともに、さらなる探究心が芽生えていました。石鹸は単なる生活必需品ではなく、人々の生活を豊かにする可能性を持ったものだったのです。


炭酸カリウムに水酸化カルシウムを加えると、水酸化カリウムが得られます。

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